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流されて帝国  作者: ギョラニスト
106/205

105話


 道なき道をザクザク歩くコンラッドさん。

しかも大股で私はほとんど小走り状態。


 あぁ雑木林に逆戻り


「…お前、もしかして兵士じゃないな?」


ヒィ…バレた!!


「あ、う、そのっ」


「見習いだろ?」


!?


「そう、なんです!見習いです!」


「歩き方がなってねぇもんな」


 適当に話を合わせて、さっさと離れよう。

怪しい人について行ってはダメよ!


「あ、ぼ、僕トイレに行ってから戻るから先に行ってて」


「アホか。そんな腕で1人にしたら俺の名が泣くわ」


 腕?見ると私の右手首が物凄く腫れている。


 さっきクキッとした時だわ。

途端にズキズキと痛くなってきた


「そ、そうか。ありがとう」


「ここで待っててやるからさっさと済ませてこい」


「あ、はい」


 どうしましょう!本当にどうしましょう。


 着いて行ったら良くないのは分かっているのに、離れる理由が思いつかない。


カサカサ


「ぷっぷっ」


「ぷっぷちゃん!一緒に流されたの!?」


コソコソした声で話しかけたら


「ぷぅ〜〜」


 ぷっぷちゃんは嬉しそうに返事をした。


 流石にペットですとか従魔です、と連れて行く訳にもいかない。隊服の中に入れお腹の辺りにいてもらう事にした。


 胸元だと折角小僧だと思われていたのに女性だとばれてしまう。


「お待たせしました〜」


 なるべく普通にして戻ったら、ニヤニヤしたコンラッドさんがいた


「お前…」


 何⁉︎この一瞬で私が女性だとバレたのかしら?もしかして皇太子の婚約者だとも…


「フッ…ククッ」


 俯き肩を震わせるコンラッドさん。何かしら?この短時間で変なキノコでも口にしていたとか?


「ブハハハッ…お、お前の屁…面白すぎる!ぷぅ〜〜って!ウハハハハっ」


 はぁ!?屁って…まさかぷっぷちゃんの鳴き声の事⁈


 失敬な!公爵令嬢はオナラなんて致しません!と言いたい所だけど、そんな事を言える訳もなく、ぷっぷちゃんの事をバラしてしまう事もできない。


 もし万が一私の身分がバレてしまったら、皇太子の婚約者は人前でオナラをしていたとかも加わるのかしら?


死んでも阻止しなければ。


 コンラッドさんは涙を流し笑い転げて息も絶え絶えになった頃ようやく落ち着いた様で


「陽が暮れちまう。行くぞ…ブフッ」


 全くいつまで笑っているつもりなのか。でも悪い人では無さそうよね。


 歩く事数十分、いきなり目の前が開けた。

え?こんなに短時間で雑木林を抜けるの?


 そして見渡す限りテントしか目に入らない。


 これは…ハイドン村の中ではない?もしかして後から来たと言う大隊…敵地…

気が遠くなってきた


 一体私はどこまで流されたの?どうやってここから離れられるの⁉︎


 落ち着いて。今この人から逃げ出すのは不可能だわ


 ひとまずついて行って、適当な所でここです。と言ってコンラッドさんから離れよう。


 この先必ず隙が生まれるハズ


 陣に足を踏み入れるとあちこちから声がかかった


「おい!コンラッド!またサボりか?」


「コンラッドさん。今夜また賭場が開かれるらしいっすよ」


「コンラッド!小隊長が早く書類提出しろって言ってるぞ」


 適当に返事をしながら歩くコンラッドさん。中々皆んなに慕われているらしいけれど、掛け声を聞く限りロクでもない人の様だわ


「さて、どうする?」


「へ?どう…する?」


 何を?


「まだ頭ボケてんのか?救護所へ行くのか、それともこの先の正規のドレナバル兵の方へいくのか」


 正規?コンラッドさんが足を止めた場所は、僅かだけど場所が開けてある。


「今通ってきたのは傭兵達の陣だ」


「と、とりあえずドレナバル兵の方へ行きます」


 救護所なんかに行った所で魔術による治療しかされない。魔力が無い事がバレてしまう。


「あ、コンラッドさん。ありがとうございます。ここからは1人で…」


「遠慮するな。お前と一緒なら正々堂々とサボれるからな。行くぞ。何部隊だか思い出せ」


そんな…ここに目的地なんてないのに


「コンラッドさん、さっき中将が探してましたよ〜」


通りすがりの兵士が声をかけてきた


「か〜面倒くせぇ。中将のおっさん見かけたら後で顔出すって言っとけ」


中将って偉い人ではないの?


「コンラッドさん、本当にここで大丈夫…」


「お前と一緒にいたら、またあの屁の音…ブフフッ…聞けるかもしれないしな?ククッ」


 出せる訳ありませんわ!オナラもぷっぷちゃんも。

言いたい事が言えないジレンマを抱え、コンラッドさんについて宛もないのに歩く。

 

 ふと見覚えのある馬車が目に入った


 !!あれは!あの黒光りした釜!焼き釜馬車!!私はコンラッドさんを追い越し足早に向かう


「お?自分の隊分かったのか?」


 後ろで何か喋っているけれど、それどころじゃない。

お願い!そこにいて!


「たっ…ただいま。遅くなってスミマセン!」


 そこにはお目当ての、目も口も限界まで開いたフレデリックさんともう1人見覚えのない人がいた。


「お、おかえり…なさい?」


 辛うじてフレデリックさんが返事をくれた


「コンラッドさん。ありがとうございます!無事仲間に会えました」


 コンラッドさんに深々と頭を下げお礼を言う。


 命を助けてもらい、ここまで連れてきてくれてどうもありがとう!



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