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流されて帝国  作者: ギョラニスト
104/205

103話


「ドラン!一体どうゆう事じゃ!!」


 お婆さんは泣きながらこちらに来ようとしているのを、エスラーさんに止められている。


「ナディアを離せ」


 静かに怒るアイラさんはものすごく怖い。


 誰かドランさんを止めてくれないかしら?

マリアンナさんを見るとパッと目を逸らされた


…皆さん始めから?


「悪いがこのまま引き渡す。俺達にも事情があるんだ」


ドランさんが呟くと


「ドラン!バカな真似はよすんじゃ。ナディア様を引き渡してもコーデリアが戻ってくる保証なんてどこにもない!」


お婆さんが叫んだ。

コーデリア?誰の事?


「あぁ、そうだろうな。でもこの人達はナディア様を引き渡したら、今までと同じ暮らしと安全を約束してくれた。


 税も安くしてくれるとも言った!対して今のドレナバルはどうだ⁉︎何の説明もなく、大勢の兵士を引き連れバカみたいな城壁ばかり作りやがって!」


 確かに殿下達は村人に説明している時間を設けていなかった。


 多分そこまで気が回らなかったのだろうし、時間もなかったのは確かだ


 でも、この人達はある日突然村を襲われ、命からがらテオドールに逃げ、行った先は井戸に毒が撒かれたと聞き、やっとの思いで帰って来たのに家は焼けて無くなり、兵士達はそれを手伝う事もなく、城壁ばかり作っていたら全く信用できないのも分かる気がする。


 挙句に殿下の婚約者である私に、温泉への案内までさせられて…


「城壁はアタシらを守る為じゃろ?もう二度とコーデリアの様な事にならない為にも!」


まただわ。どうゆう事?


「…コーデリアさんとは一体…」


 喉元にナイフを突きつけられ怖くて大きな声ではなかったけれど、ドランさんの耳には届いた様だ


「俺の末娘だ。セダンと12離れているから生きていれば今年30になる。13年程前に攫われんだ。フォリッチの奴らに」


「えっ!?」


「ドレナバルが制圧し、暫く経って皆油断していた。ドレナバル人はほぼ魔法が使えるからな。他所の国では重宝されるさ。火を起こしたり水を出したり…大抵、北のマッサーラに売られると聞く…まだ17だぞっ!」


 私と同じ年で…誘拐され売られていく…どれ程恐ろしかっただろう


「アンタはそのフォリッチやマッサーラに手を貸すのか⁉︎」


アイラさんの怒りが爆発した。


「俺はコーデリアが生きているのか、元気でいるのか知りたい!幸せなら諦めるが、奴隷の様に暮らしているなら助けたいんだ!この人達は探してくれると約束してくれたんだっ!」


「敵国の約束程アテにならないもんは無いだろ!目を覚ませ!ナディア引き渡した後、コイツらがアンタら生かしていると思ってるのか⁉︎次はアンタの孫が連れて行かれるだけだろ!?」


「グゥ…」


「あなた…私もコーデリアには帰ってきてもらいたい。でも…この子達も大事なの…」


 エスラーさんが泣きながら、お孫さん達を抱きしめ言った瞬間だった。


 魔法使いの1人がいつの間にか縄を解いていてアイラさんに飛びかかった


「アイラさん!!」


 アイラさんは咄嗟に避けたものの、死角からの攻撃とこの場所での具合の悪さに避けきれず左肩を斬りつけられた


「アイラさん!?アイラさん!!」


 左肩お押さえ片膝を落としたアイラさんは


「ナディア!逃げろっ!」


 言うと同時に手のひらの火球を魔法使いに放った。


 威力は弱く小さいものだったけれど、咄嗟の行動に魔法使いが一瞬怯んだ。


 ドランさんの事情は分かるけど!

私はここで捕まる訳にはいかないの!


「うわっ!」


 ありったけの力でドランさんの足を踵で踏みつけ、怯んだ所に後頭部で頭突きをした。


 綿帽子を被っているから威力は半減だけど、とにかくこの腕から逃げる!


 グルリと身体を反転させ、無我夢中で走った。


「待て!早く追うぞ!」


 体力の無い私と、泉の力で弱っている魔法使い。


 体力は辛うじて私の方が上だった様で、道なき道を暫く走ると声は聞こえなくなった。


 ゼイゼイゼイ…苦しい…

大きめの木の根元で腰を下ろし息を整える


「ぷっぷ」


!!ぷっぷちゃん!着いてきたのね。偉いわ!


 と褒めてあげたいけれど、今は全く喋れる気がしない。


 休む事10分程、今の所他に人の気配はしない。


 アイラさんはあれからどうしたかしら?


 傷は深かった?あの傷で魔法使い達と戦っているのだろうか?下手したらマリアンナさんの家族とも戦うの?アイラさん1人で?


 グレタ、グレタは?


 セダンさんも同じ考えだとしたら、2人きりは危険すぎる。


 アイラさんに弟子入りしたと言っていたけれど、彼女は侍女だわ。


 どうか危ない事しないで!


 考えれば考える程嫌な考えが浮かんでくる。


 パァン!

両手で頬を叩いた。ダメよ!弱気になっちゃ。


アイラさんは強い兵士だわ。大丈夫!

グレタだって必殺技があるじゃない!


 言葉とは裏腹に、溢れてきた涙を拭い立ち上がる。


 私は捕まる訳にはいかない。


 とりあえずウィンディアさんの所へ行かなくちゃ。きっと従魔と一緒に待っていてくれている。


 息も整った所で立ち上がり歩き始めた


 周りを観察しながら、耳を澄ませ何かの気配がないか、気を配りながら歩き始めて気がついた。


ここはどこ?


ウィンディアさんがいた場所は…ドコ?



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