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流されて帝国  作者: ギョラニスト
102/205

101話


「ナディア様、マリアンナさん。行きます」


 グレタの掛け声で踏み出した一歩目は、行きますわ!と言う気持ちだったのに、歩みを進める内に足が震えてきた。


 20メルトン程進んだ所で魔法使いの1人が私達を見つけ


「無事皇太子の婚約者を捕まえてきた様だな。良くやった。もう横の女もガキも殺っていい」


 うそ⁉︎私の確認はしないの⁉︎


 アイラさんは多分ナディアの確認をしたら人質となっている人達とマリアンナさんと赤ん坊を殺そうとするだろうから、その時にアタシとウィンディア殿、そして従魔達が出ますと言っていたのに


「確認をして下さい。護衛や侍女もいたのたで」


風魔法で声を変えたグレタが言う


「何だ?珍しいな。いつも自信満々なのに。よっぽど皇太子の婚約者は、らしくない女なのか⁉︎悪評高いからな。入れ替わってるなんて事もあるかもな」


「ハハハッ。虚弱体質な癖に魔力は殿下に引けを取らない程多いから、いい気になっているんじゃないかって噂だもんな。だから軍服着て張り合っているんだろ?」


何ですって⁈

噂の一人歩きが酷すぎる。


 文句を言いたい所だけど、私は一応人質だからそこはグッと堪えて…⁉︎


「グレタ⁈」


 後僅か100メルトンと言う所で、グレタが私を置きざりにして魔法使い達に駆け出した。


ギョっとした魔法使い達は


「お前誰だ⁉︎人質がどうなってもいいのか⁈」


「本物はどうした⁈まさかやられたのか⁈」


 言いながら1人はグレタに、もう1人は人質に手のひらを向けたその時


ヒィーン 

 空から何かが飛来する音に振り返ると、人質に魔法を放とうとした魔法使いにぶつかった


ドスッ!

何?鳥?

激突したの?


「うわぁ!や、やめろ!」


グレタに手のひらを向けていた魔法使いの方は、グレタより先に走って来た犬に足に噛みつかれ尚且つグレタに


「ナディア様をバカになさらないで下さい!」


 とアイラさん直伝の必殺技をお見舞いされ、その場に崩れ落ちた。


とりあえず人質救出に駆け寄るも


「と、取れない…」


 人質の手足を拘束している、縄ではない何かが全然取れない。


 そう言えば魔法で拘束されていると言っていたかしら。


 それにしても…人質の側にいた魔法使いに激突したのは従魔の鳥だった。


 魔法使いも鳥もピクリとも動かない。


 何故激突したのかしら?ぷっぷちゃんと初めて会った時、火を吹きながら飛んでいたわよね?


「ナディア!大丈夫か?」


 駆けつけてきたアイラさんは私の顔を見て安心するなり


「グレタ!ふざけんな!!お前自分が何したかわかっているのか⁈」


物凄い勢いでグレタに怒鳴りつけた


「ス、スミマセン!!ナディア様の悪口につい頭がカッとなって…」


 それまで自分を狙っていた魔法使いをガンガン踏みつけていたグレタは、どこかの国の正式な座り方の正座と言うものをしていた。


ぺこぺこ頭を下げ泣きながら謝りながら…


 …2人共そんな事していないで人質の拘束を取って欲しいのだけれど。


 とりあえず一番小さい子の拘束を取ろうと四苦八苦していたら、ふと人質全員の拘束がパラリと取れた。


「何をしてるんじゃ…」


「ヒッ」


 這いつくばった白髪の老婆が近寄ってきた。

まさか…


「ウィンディア…さん?」


「チッ…どいつもこいつも使えない。お前らももっと早く助けに行かんかい」


 ピクリとも動かない従魔達に文句を言いながら、ヨロヨロ立ち上がり手を翳し魔力を分けていた


「ウィンディアさん魔力全然戻っていないのではないですか?」


 だから従魔達も魔力が足りなくて激突したり、一度噛み付いて離さないと言う方法しか取れなかったのね


「フン。お陰でこんな容姿に…」


「ウィンディアさん!!」


 ウィンディアさんはそのまま倒れてしまった。

マリアンナさんも駆けつけ声をかけていると


「マリアンナこっちにくるんだ」


ご主人らしき人に声をかけられた


「あなた…でもこの方私達を助けてくれて、それでこんなに…」


「元々その人達が一晩泊めてくれなんて言われなければ、こんな事にはならなかった」


 …ご主人の言う通りだわ。


 始めから人を頼らず、どこかで身を潜めて一晩明かせばこんな事にはならなかった。


 泣きながら身を寄せ合っている子供達を見て申し訳ない事をしてしまったと思っていると


「そんな事はない。ナディア様達が始めからいながったら、間違いなぐその場でワシら全員皆殺しじゃったはずだべ」


 長老のお婆さんが後ろから突然口を開いた


「ばぁちゃんは黙っててくれ!昔とは違うんだよ」


「なぁんも違ぐねぇ。昔から戦争っち、そおゆうモンじゃが。余計な命は残したりせん。子供達は連れて行かれ、ワシらはその場で殺るのが手取り早いべ」


 マリアンナさんのご主人が言葉に詰まった。


 実際長老のお婆さんは、そんな目に合ったみたいな事言っていたし。


 無言で魔法使い達をグルグル巻きにしていたアイラさんが


「何かおかしい…なぁグレタ、あのハリーってヤツ信用できるのか?」


「え?それって…」


「だっておかしいだろ?ナディアが温泉に行くと知っているのは、上層部のごく一部だ。今日の今日でここん家に魔法使いが来るなんてありえない」


 確かに…この村に入るための競り合いを今正にしている時に、魔法使いだけ入れるものなのかしら?


 むしろ始めから入っていたと考える方がしっくりくるわ。


いつから?

そして私達の居場所を知らせたのは…


「ハリーさんは…良い人です」


「グレタ、それは答えになってない。良い人に見せかけるなんて事は良くある。むしろ戦の最中スパイだったら尚更だ」


「でもセラさんは凄く信頼している風でした。ずっと一緒にいた訳ではないですけど…」


唇を尖らせグレタは言う。


 アイラさんの言っている事はわからないでもない。私もハリーさんの事を良く知っている訳でもないし、だからと言ってハリーさんが敵に通じているとも思えない



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