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流されて帝国  作者: ギョラニスト
101/205

100話


「ウィンディア殿、少々お尋ねしたい。魔を吸い取るとは一体…」


 マリアンナさんが少し離れると、アイラさんは見計らったかの様に口を開いた


「そのまんまなんだが…多分神聖国辺りでは聖なる泉とか言われてるハズじゃ。泉に浸かれば魔も取り除かれる」


「だからか…」


「何じゃ?」


「いえ、少し前にテオドール村で、兵士も村人も屋外に出ると顔色が悪くなると言う事があったのです」


あったわね。

 あの時私達の中で、アイラさんが一番屋外に出ていて一番顔色が悪くなったわ


「顔色?」


「ええ。原因も理由も分からなくて、特に症状がある訳でもなく、魔力を計る為ではないかと言う結論にはなったのです」


「気色悪いな」


「ええ。しかもテオドール村を出ると顔色は治ってしまったので、アタシも忘れていたんですが。ずっと鼻の奥と言うか喉の奥と言うか、とにかく何かが詰まっていると言うか、挟まっていると言うか…でもそれがなくなっているのです」


「あの泉で?」


「ええ。ちなみに浸かってはいなくて側を通っただけなのですが」


「あの泉の側を通ったのか?魔法使いでなくとも嫌な感じしかしなかったろう」


「はい。ただそれ以上に鼻奥の違和感が徐々に薄れていって」


「ふむ…」


 そう言ってウィンディアさんは考え込んでしまった。


「ちなみにぷっぷちゃんはあの泉で泳がれていました」


 グレタってば余計な事を言わないで!この話の流れでそんな事言ったら、ぷっぷちゃん何モノだと言う話になってしまうじゃない!


「あの泉で?」


 途端に嫌な物を見る目でぷっぷちゃんを見だしたウィンディアさん。


「それは…」


 ウィンディアさんが言いかけた所でマリアンナさんが戻ってきた


「…とりあえず人質を先に助けよう。アタシの魔力もまぁまぁ戻ってきたし」


 そう言ってウィンディアさんはまず自分の容姿に魔法をかけた。


「ウィンディア殿、魔力の優先順位が…」


 アイラさんが遠慮がちに言うと


「うるさい。この姿でなければ人前には出ん!先ずはアタシを何とかしてからじゃ」


 ウィンディアさんは凄いポリシーをお持ちの様だ


 みるみる内に髪の毛の艶は増し、光り輝く黒髪になった。同時に肌ツヤも良くなり小皺も消えていく


「さて、こんなモンか。じゃああの子達を起こしに行こうかね」


 そう言いフラつきながら歩くウィンディアさん。魔力足りるのかしら?従魔達に魔力をあげた後、人質奪還の為に戦わなければいけないのに。


 仕方なく肩を貸すためウィンディアさんに近寄ると


「ナディア、ぷっぷの事は覚悟しておいた方がいいかもしれんな」


「どうゆう事ですか?」


 あの泉で泳げるぷっぷちゃんは、魔物ではないと言ってもらえるとか、もしくはただのトカゲっぽく見えるコウモリの一種だったよねと言ってもらえるかと思っていたのに


「憶測で話すことはできん。まぁ、何にしてもここを何とかしてからじゃな」


 だったら最初から言わないで欲しかった。気になって仕方ないではないの。


 横たわった鳥と犬の近くまでくると


「肩はここまででいい」


「え?まだ少し距離もありますし…」


「ナディアが来たらぷっぷもついてくるじゃろ。家の子たちが目を覚ました瞬間暴れてしまう」


 振り返るとご機嫌ぷっぷちゃんはピタリと私の後ろを歩いていた


「わかりました」


 ぷっぷちゃんを抱えその場にいると、ウィンディアさんは従魔のいる所まで行き、に手を翳しそのまま倒れてしまった


「ウィンディアさん⁉︎」


 駆け寄ろうとした瞬間、バサリと鳥は羽ばたき、犬は立ち上がりアイラさん達の所に一直線に向かった。


 大きい…今までも大きいとは思っていたけれど、ぷっぷちゃんのせいで遠目でしか見る事が出来なかったから気がつかなかったわ。


 鳥は鷹や鷲の倍以上、犬だってポニー並みの大きさなのに、ウィンディアさん片手で引きずって連れてたわよね?魔法も使えないはずなのに…力持ち?


「ウィンディアさん大丈夫ですか?」


駆け寄り抱き起こすも、ウィンディアさんは


「はよう行け。ナディアがいなければ人質を助け出せない」


そうだけど…


 私は敵に成り変わったグレタに人質にされるという予定ではある。


 でもウィンディアさんこんなでマリアンナさんの家族を助けられるのかしら?


 私は立ち上がりアイラさん達の所に駆け出す事にした


「…ウィンディアさん、ではまた後で」


 何の策もなくウィンディアさんが早く行けなんて言う筈ない。きっと何かしら考えがあるのよ。


きっと。

多分。


 不安な気持ちに蓋をして、アイラさん達の元へ駆けた。


 後、20メルトンと言う所で


「ぷっぷちゃん。ここで待ってて。あなたが来るとウィンディアさんの従魔が暴れちゃうから。わかった?」


「ぷ〜ぷぷ」


 本当にわかっているか分からないけれど、とりあえず私は走ってアイラさん達の所に行った。




「ナディア様、準備はいいですか?」


 辺りを見回す。雑木林を背に左前方に魔法使い2人とその後ろに人質となっているマリアンナさんの家族。


 従魔達は私達から少し離れた左手後方の雑木林の入り口、右手側後方にアイラさん、ぷっぷちゃんは更にその後ろ。


 マリアンナさんは赤ん坊を抱いてすぐ横にいる。


「ええ、グレタ。大丈夫よ」


 向こうからは気づかれない所で私達は陣形を組んだ。


 幸い私達を隠してくれる木や茂みがこちら側にあり、対してあちら側は多少の木や岩があるけれど、断然私達の方が有利だ。


 アイラさん曰く『私達を舐めきってるとしか思えん!』との事だけれど、舐めていただいて結構。


 誰も怪我なく人質奪還が最優先なのだから。


 このまま前に出れば多分魔法使いとのやり取りが始まる。


ゴクリ…



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