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流されて帝国  作者: ギョラニスト
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99話


「アンタ一体誰だ?」


 アイラさんはお婆さんに切先を向けながらに言った


「ククク…遅いな。やっと気付いたか」


 お婆さんはフードを取ると、小柄で中年の男性が顔を出した。だからさっき声が変だと思ったのね。


 アイラさんが剣を構え直した


「や、やめて下さい!!お願いです!!!赤ん坊が!」


 マリアンナさんが叫ぶと男は


「僕を殺さない方が良い。あっちで人質になっている者達が皆殺しだ。僕達はそこのディラン皇太子の婚約者に用があるんだ。連れて行けば誰も死なないんだよ」


 なんて事を…

誰も動けずにいると


「おぬし魔法使いではないな」


ウィンディアさんが声を発する


「答える義理もない。おい、女!婚約者を連れてこっちへ来るんだ」


 少しイラついた男がマリアンナさんに言った。


 マリアンナさんが私の首筋にナイフを当てながら少しずつ歩きだすと


「普通の魔法使いはここにいる事はできん。おぬしは魔法使いの小間使いか何かか?」


ウィンディアさんが挑発する様に言った。

どうゆう事?


「黙れババア!おい!女!早くこっち来い!」


 マリアンナさんは小さな声でごめんなさい、ごめんなさいと謝りながら歩みを早めた


「誰がババアだって?」


ヒヤリとする声に思わず足を止めてしまう


「ババアをババアと言って何が悪い!女!早くしろ」


ウギャー 

赤ん坊が目を覚まし泣き出した


「うるさい!泣くな!」


「止めて!その子に何もしないで!」


「やかましい!早く…っ、グゥ」


 突然男が赤ん坊を抱えたまま動かなくなった。


 ヨロヨロとウィンディアさんは男に近づき赤ん坊を男の手から奪い


「だ・れ・が・ババアだい?大体こんな近くで怒鳴られて、泣かない赤ん坊なんていないよ」


 その瞬間マリアンナさんは、私に突きつけついたナイフをポトリと落としヘナヘナと座り込んでしまった


「グッ…」


 男は声も発せない様で、その間ウィンディアさんはアイラさんに赤ん坊を渡した。


「ここの雑木林は…正確には中央にある泉、魔を吸い取ってっちまうんだよ。ただの魔力持ちだってあんまりいい感じはしないはずだよ?」


 言いながらウィンディアさんの髪は、先程より艶が無くなり白い物が混ざりだした。


 赤ん坊は無事マリアンナさんの手に戻され


「ありがとうございます。ありがとうございます」


言いながらポロポロ涙をこぼした


 ちなみに男はアイラさんに縄で縛られている。


 ウィンディアさんは男を動けなくする魔法をこの場で使ってしまった為、当分動けないと言ってその場で座り込んでしまった


「さて、マリアンナ殿。人質に取られている家族はこの雑木林の外側で私達が来るのを待っているのか?」


アイラさんが尋ねる


「はい。雑木林の入り口に入る手前に、少し大き目な岩があってそこに。あのっ、申し訳ございませんでした。私、どうしたら良いのかわからなくて…」


再び泣き出したマリアンナさんに


「あ、いや、責めているのではない。ウィンディア殿の体調が整い次第、助けに行きますからそんなに泣かないで」


 肩をポンポンしながら言ってるアイラさん!

流石!ステキ!カッコいい!!


「あ、ありがとうございます!」


 その後ウィンディアさんの体調はあまり良くならなかったけれど、このエリアを抜ければ良くなるだろうと言うので、私達は人質を奪還するべく戻る事となった。


 まず男のフードを奪い取り、縛ったままこの場に置いて行く事に。


 フードはグレタが被り、雑木林を抜ける手前で私を捕まえた風にして敵に近寄る。


 その間アイラさんとウィンディアさんは雑木林の入り口の影から敵を捕らえる。


 と言う作戦らしいけど、アイラさんはともかくウィンディアさん、戦えるのかしら?


 かなり辛そうに見える。


 ちなみにウィンディアさんの従魔は気を失ったままなので、アイラさんとグレタが引きずって歩いている。


 ぷっぷちゃんは珍しく私の後ろをついて歩いていた。

ぷっぷちゃんは気を失わないのね…

やっぱり魔物ではないじゃないの


私はウィンディアさんに肩を貸し歩き始めた。


 入り口には魔法使いが2人いて、人質を魔法で拘束しているらしい。


 長老のお婆さんを筆頭に、全員捕まっているとマリアンナさんは言った。


何て卑怯な…


 マリアンナさん達はただでさえ、一度このハイドン村を焼き払われた後、テオドール村に避難している。


 それでもハイドン村復興の第一陣に名乗り上げたと、昨日アイラさんから道すがら教えてもらった。


 そんな村を愛する人達や、まだ小さな子供達を人質にして…


 沸々と怒りが湧いてくる


 泉を避け雑木林のなるべく端っこを歩いていると、雑木林から少し離れた所にチラチラと灯りが見えた。


「アレだな。ウィンディア殿体調は?」


「先程よりマシ。けれどこの子達にも力を借りたい。もう少し離れてから魔力を喰わさなければ復活しない。その魔力が足りない」


 気絶したままの従魔達を見て、ウィンディアさんは言った。


なんて心細い言葉…


 この場に殿下がいれば、溢れまくりの魔力の有効活用できるのに。


 私達は魔法使いの目に入らない様、少しズレた所から雑木林を抜けウィンディアさんの魔力が回復するのを待つ事にしたのだけれど、そこで赤ん坊がグズリだした。


ここで泣かれたらバレてしまう


「ス、スミマセン。ちょっと歩いてあやしてきます」


「あまり遠くへは行かないで下さい」


 アイラさんにそう言われ、マリアンナさんは小さな声で子守唄を歌いだす。


 少し離れた所で、赤ん坊の背中をトントンしながら聞こえる子守唄。


初めて聞くメロディだけれど、とても優しく耳に心地良い


こんな状況でこんな場所でなかったら微笑ましいのに



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