プロローグ
ゆるい設定です
細かい事は気になさらない方だけお読みください
何が聖女よ。
何が豊かな国へ嫁げて良かったよ。
何が幸せになってよ。
そもそも幸せって何?
聖女が誕生したから婚約解消って、、、
私って何だったんだろう。
何がいけなかったのだろう。
どうすれば良かったのだろう。
私は由緒あるマイヤーズ公爵家に生まれたナディア・ド・マイヤーズ。
5才の時にシャナル王国皇太子マーシャル・ド・シャナルの婚約者になり王妃教育も頑張って学び社交界でもなるべく波風立てずそつなくこなし、今年17才になり後半年で結婚式の予定だった
2才年上のマーシャルは気弱な部分もあったけど、とても優しい人だ。
一緒にこの国を良くしたいと語りどうすれば貧富の差を無くすことができるか、孤児達にどの様な教育を施せるのかよく話し合った。
理想は明るく活気ある国。
国民が心から誇りに思う国を作りたい。いつもそんな事を語り合った。
勿論王妃でなければできない事もある。
けれど、マーシャル殿下と一緒ならどんな苦労でも乗り越えていけると信じていた。
あの日この国に滅多に現れる事の無い聖女アイリスが市井にいた事が発覚した日まさかとは思った。
聖女はどこの国でも稀に生まれてくる。
その聖なる力は聖女によって違い、我が国の聖女は人の病気を癒す力を持っていた。
他国では一晩にして植物を実らせるとか、枯れた井戸を復活させるとか様々な力があるらしい。
聖女アイリスは自分の父親が流行病にかかりグッタリしていた時、熱を測ろうと額に手を当てた所みるみると熱が下がり翌朝には全快していた。
偶々かもしれないと村人で流行病のお宅へ行き同じように額に手を当て2日で村の流行病を全て治してしまったとか。
どこの国でも聖女は王宮やそれに準ずる家などで大切に大切に保護される。
うっかり事故に遭ってとか他国に渡ってなんて事がない様に。
もちろん本人の同意を得てからだけど。
シャナル王国でも最初現国王の弟ディセル公爵の次男ブラッドは16才になるまで婚約者もいなかった為白羽の矢が立ちお見合いの様な晩餐会が催された。
王宮に来た聖女アイリスはその日マーシャル殿下を見て
「王子様カッコいい…ステキ」
とポロリと零し、それを聞いて慌てた周囲の大臣達がマーシャル殿下の方が良いのではないかとその場で話し合いの場が設けられた。
マーシャル殿下も少し考えて分かりましたと答えたためあっさり私との婚約は解消された。
そうね。ディセル公爵のブラッドと言えば軍に入っていて体格も大きいから初対面では大抵の婦女子は恐怖を覚えるかもしれない。
性格は至って真面目な好青年だけど。
王家からは婚約解消を言い渡された日、代わりにこのブラッドと結婚するのはどうかと打診があったらしい。
父が断っていた。
父は父なりに怒り狂っていたらしい。家の娘をどうしてくれるんだ!と陛下の胸ぐらを掴んで。
一応又従兄弟に当たるので不敬罪にはならなかったらしいが、父はブラッドに負けず劣らずの体格に加え厳つい顔立ちだったりする。
知らない人が見たら一方的に国王を襲う賊にしか見えなかっただろう。
家族に見放されなかったのは救いだった。
婚約解消され腑抜けて引きこもっていた私にナディアは何も悪くないから気にするなと言い続けてくれた。
けれど社交界は違う。
美しい聖女に乗り換えられたかわいそうな娘だの、皇太子の婚約者だっただけの特に秀でたモノもない娘だの、顔で負けたのねぇだの散々だった。
私が知らないだけで元々評判は良くなかったのかもしれない。
それまで頻繁に来ていたお茶会や夜会等の招待状もパタリと止んだ。
仲が良いと思っていた友人達からの連絡も途絶えた。仲が良いと思っていたのは私だけだった様だ。
ある意味傷物の公爵令嬢に良い縁談など望めないし、大抵の適齢期の貴族にはもう婚約者がいる。
ずっとこの家に居ていいと父も母も兄2人も言ってくれたが、そんな訳にもいかない。
1人密かに修道院にでも行こうかと思っていた頃父上が縁談を持ってきた。
そして私はこの馬車に乗っている。