5章1(邂逅)
結論から言うと、マッシュは無事だった。
あの後、エールと二人で急いでマッシュの元へ向かったが、置いて行ったときと何ら変わりない様子でマッシュは待っていた。
エールがマッシュに近寄って労いの言葉をかけている。マッシュは満足げにうなずいている。
さて、マッシュが大丈夫だと分かったけど、この間にオラクルで事件が起こってないか一応確認しとくか。
俺は集毒草の実を口の中へ放り込んだ。
気づくと俺は真っ白な空間にいた。
が、目の前が真っ暗だ。なぜなら・・・
"リューヤンさんと~っても心配しました~"
間の抜けた話し方で、俺の顔を抱きしめる適当女神。
俺を労りつつも、身体をくねくねさせるため、柔らかい弾力を存分に堪能できる。
大きな山に囲まれて、視界も悪く、息もできない俺。だが、これで死ぬならば本望か・・・
『すぐに立ち直ったのであれば、よかろう』
調停神が横で偉そうにしゃべっている。
「なんか優しいですね」
俺は谷の奥底でくぐもった声で話す。谷から抜ける気はない。
『元の世界に返す契約故、壊れたお主を戻すのは約束を違えることとなる』
「俺の心が折れて、鬱とかになったら問題になるってことですか」
『問題、とはニュアンスが異なるが、我々の沽券にかかわる』
なんか、ルールというより調停神の優しさなのかな?なんとなく俺はそう感じた。
「まあ、無理しない範囲で頑張りますよ」
今回ピクシーを死なせたことを後悔している。
だが、廃人になる程、自分を追い込むかと言えば、そこまでの責任も感じていない。無責任に聞こえるかもしれないが、なんというか、どうしようもない。開き直ってるわけではなく、心底どうしようもないと諦めがついてしまったという感想だ。あのとき、もっと冷静に動けたらとも思うが、かといって、時間が戻せるから仲間を見殺しにしていいとも思っていない。最善ではないものの、善意の行動の結果だったのだ。
・・・こうやって、あれこれ考えてしまうのも、まだ自分の気持ちを整理できていないからかもしれないな。
俺は、そう自己分析しながらも、少し立ち直れたことを感じる。そして、今を楽しむことも必要だと思い、山頂を指先で弄んでみる。
"あ、ちょっ、そこはッ、ん~~"
『フンッ』
調停神が侮蔑のように一息鼻から息を吐くと、意識がぼやけてきた。なお、視界は山に囲まれてすでに悪かった。




