1章3
初のまとも(?)な戦闘回です
俺は3度目となる異世界の森に降り立った。
さて、当面の目標を立てなくては。
1.村人と仲良くなる
2.魔族の倒し方を調べる
最終的に魔族は倒したいが、今は情報が少なすぎる。少なくとも怪しまれずに村に入って話を聞かなければ。俺はとりあえず村に向かって歩くことにした。
3度目ともなるとほとんど迷わずに村が見える街道までたどり着いた。最初のときと同じならここらであいつが・・・ほらね
槍を構えながら厳しい口調で俺に何かを話しかける金髪が現れた。だが、前回までの俺と同じと思うなよ?
「おい」
俺が話しかけると金髪が槍を握る力を強くしたのがわかる。
ココだ!
「腹が減ったから飯を持ってきてくれ」
俺は唯一話せる異世界語で金髪に話しかけたのであった。
てか、調停神が何も言ってなかったしそうだろうと思ったけど、やっぱり言葉通じないままかよ!クソッ!
俺は若干テンションが下がりつつも金髪の様子を見る。
完全にキョトンとしている。目が点とはこのことか。そりゃあ警戒してる相手から飯をせびられたら混乱するよな。さぁどうなる?
金髪は少し考えると、何やらつぶやいてから村に向かって走り出した。
「ここで待て」って言ったのかな?「付いてこい」だった場合はヤバいかもしれないが、風のように駆ける金髪に付いていくのは無理そうなので、待ての方に賭けることにした。
木陰で待つこと10分程。金髪が村から戻ってきて俺にいつものアレを手渡した。そう、芋もちだ。
お願いどおりに飯を持ってきてくれたあたり結構好感触なんじゃないかな
芋もちをかじろうとしつつ金髪を見ると、アレ?なんか、怒ってる?
またも槍を向けて睨んでくる金髪。村と逆側に続く街道を槍で指して俺に何かを話す。雰囲気的に「向こうへ行け」って感じかな。
ここで下手なことをすれば、また喉を切り裂かれるかもしれない。とりあえず言う事を聞いて村と逆方向に歩き出す俺。しばらく歩いて後ろを振り返るとまだ金髪がこちらを見ている。
うわっ俺の好感度低すぎ!
村人と仲良くなるという目標があっという間に頓挫することになったが、とりあえず食糧は確保したのでまだ行ったことがない街道の先を目指してみる。
案外近くに文明的な町とかがあって、金髪達が自然派部族の可能性もあるしな。そこのところも含めて調停神に聞ければよかったがあの適当女神の奴め
歩き始めて30分ほど経った。今のところ町らしきものは見えない
街道が続いているのが救いだが、見知らぬ土地を歩き続けるのは精神的に疲れる。ちなみに芋もちは持ち運ぶには邪魔すぎたので歩きながら食べてしまった。
やはり頼み込んで村に入れてもらった方がよかったかと悩み始めたころ、目の端を何かが横切った。
目を凝らして何かが向かった先を見ると、そこには動く巨大なキノコがいた。巨大といっても体長は1mほど、傘は紫で手足の生えたエリンギみたいなやつだ
今まで目にすることがなさすぎて、すっかり忘れていたが魔物がいるんだったなこの世界。
俺は近くに落ちていた木の棒を拾い上げると、キノコの魔物に向かって竹刀のように構えた。体育の授業で習った剣道では、素人にしてはまあまあ上手いと褒められたことがあるからキノコの化け物くらい何とかなるだろう
魔物もこちらに気づいたのか、体をゆっさゆっさしながら近づいて来る。目と鼻らしき穴もあいていてちょっと怖いが
「おりゃあああ」
先手必勝とばかりにキノコの頭に向かって木の棒を振り下ろす。俺が勝利を確信して棒の先端を叩きつけたそのときだった
ボフゥゥゥン
キノコの頭から大量の白い粉が吹き上がった。
「なんだ?毒?ゴホッゴホッ」
突然のことで大量に吸い込んでしまった。これがキノコの戦い方だったのか。安易に攻撃したことを後悔しつつ、薄目でキノコの方を見ると一目散に逃げ出すところだった。
俺が毒で弱るのを待ってから攻撃してくるのかもしれない。と絶望的な予測を立てたが事態はさらに悪い方向へ向かう
俺がむせこんでいる間にある程度距離を取ったキノコがこちらに手を向けたのであった
「まさか!?」
手のひらを向けることの意味を俺は知っている。
キノコの手のひらから小さな火球が生まれるとそのまま俺の元へ飛んでくる。そして火球が俺に当たる直前に突然
「がっ、ぐはっ」
目の前で大爆発が起きて俺は吹っ飛ばされて何かにぶつかる。衝撃と痛みで息ができない。そして体中が燃えている。おそらくさっき飛ばされた粉に引火したのだろう。粉塵爆発というやつか?いや、粉自体が今も燃えていることから初めから燃やすための何かだったのだろう
そう分析している間に俺は3度目の死を迎えたのであった