3章18(終)
大丈夫。俺はできる。俺は天下無双、最強生物、天上天下唯我独尊。俺こそが世界の勇者だ。
「さて、リューヤン君。君と旅立てば我が息子は魔族を討伐できるというのは本当かね?」
「煩わしい駆け引きはナシにしましょう。先に1撃入れたほうが勝ち。敗者は勝者に従うってことでどうですか?」
俺は挑発的な態度でアーサーに向けてそう宣言し、荷物を後ろに放り投げて槍を顔前に構える。
「ムッ?・・はっはっはっは!よかろう!受けて立つ!」
アーサーは俺の挑発に一瞬気色ばんだものの、自分が負けるわけがないと思っているのか、笑いながら大槍を構える。
「では、参る!!」
(右足が地面から離れる瞬間に槍をアーサーの顔に向かって投擲。頭を下げて屈みながらアーサーに向かってダッシュ)
俺の頭を貫くつもりで大槍を突き出そうとしていたアーサーは、思わぬ行動に虚をつかれて中途半端になった突きを中断して、大槍を無理やり振るい飛んでくる槍を弾き飛ばす。
突き出した大槍で顔に向かってくる槍を弾くには、上向きに槍を振るうしかない。がら空きとなった胴体に俺は突進をかける。
しかし、さすがの最強生物(当社比)パパ。完全に崩れた体制からも無理やり大槍を叩きつけようと振り下ろす。
防ごうにも俺の槍は弾き飛ばされて手元にない。いや、持っていたとしても、大人と子供ほどに腕力に差がある相手が重力と共に大槍を振り下ろしているのだ。何を使って受けても無事で済むわけがない。
だが、受けに回ってもらうのはお前の方だアーサー!
俺はアーサーに向かって含み針を全力で吐き出す。
「なっ!」
いくら最強生物だろうが、生物である以上は絶対にできない動きというものが存在する。
思いがけない槍を弾くために、前のめりになった体を無理やり持ち上げ、
向かってくる小童を叩き潰すためにさらに無理して武器を振り下ろす。
その上、更なる不意打ちで発射された針を避けるために全力で身体をひねる
ここまで重心を揺さぶられてまともな動きができる人間など存在しない。いや、これだけの予想外に対して無理やりにでも反応できたアーサーはやはり人外じみた性能である
だがしかし
「俺の勝ちだ」
俺は全力でアーサーを押し倒し、腰から引き抜いた黒刀龍滅の切っ先をつきつける
リューヤンはアーサーに勝利した。
●0の経験値を手に入れた。0ゴールド手に入れた。
●心の称号:盤狂を手に入れた。
●リューヤンは戦闘にちょっぴり自信がついた。
・・・
・・・・・
「小僧ぉ!!徒では済まさんぞ!!!」
勝利の余韻に数秒浸ったところで、負けたはずのアーサーが即座に起き上がり激昂する。
逆切れぶっころ攻撃をする気満々の怒髪天である。
だがだがしかし
「父さん!そこまでです!」
タイミングよくエールが現れる。
いや、語弊があるな。
エールが”予定どおり”のタイミングで戻ってきた。