3章12
「さて、リューヤン君。君と旅立てば我が息子は魔族を討伐できるというのは本当かね?」
アーサーは目を見開きながら俺に尋ねる。
「もちろん、僕の予言があれば、ら、楽勝です」
蛇に睨まれたカエル。鷹の前の雀。不良と目が合ったモブ。走馬灯のように恐怖を連想する言葉が脳内を駆け巡る。漫画の世界なら漏らしていても許されるほどの恐怖心を押し殺して楽勝と答えた俺を全人類は褒めてほしい。
「はっはっは!楽勝とは大きく出たものだ」
アーサーは高笑いしながら褒めたたえるように叫ぶ。でも目が全然笑ってないんですけども
「あ、エールの力があってこそですよ。僕は戦うのとか苦手なんで、エール君と力をあわせてってことで」
俺が早口で言い訳がましく戦争反対を訴えるが、アーサーはふんふんと適当な返事をしながら壁に掛けられた大きな槍?矛?をはずして素振りをはじめる
「確かにエールの才能は我が息子ながらすさまじい。同年代でエールに勝る者はそんなに出てこないだろう」
そう言いながら大槍をぶんぶん振り回す。
「だが、今のエールでは3人がかりでも私に勝つことは難しいだろうね」
そう言うとアーサーは手をとめて俺の方を向きにっこり微笑む。全然心が笑ってない笑顔って超怖い。
「そんな私でも魔族と相対すればゴミくずのように命を毟られるだろう」
アーサーは真剣な顔つきで仁王立ちになり、大槍でドンッと床を叩いて俺を真っ直ぐ見据える
「さて、リューヤン君。旅に出れば数々の困難が君に襲い掛かる。戦闘が苦手な君がどうやって切り抜けていくのかその片鱗を見せてもらおうか」
俺はとっさに槍をかまえようとしたが、その瞬間意識を失った。
・・・・・・
何度目かわからないこの感覚。1週間ちょっとぶりだろうか。
俺は死んだ。あまりにもあっけなく。
死んでしまったのは仕方ないと割り切るとして、エールパパやばすぎないか?
客人のはずの息子の友達をいきなり殺すとかどうかしてるとしか思えない。
もしかして自信満々に魔族を倒せるとか言ったのが死亡フラグだったのか?
いや、でもエールがそうしろって言ったのに従っただけなんだよな。
くっそ、いくら考えても殺されるほどおかしなことしたとはさっぱり思えない。
仕方がないから少し前まで戻ってやり直すか。
そうだ、ククルとの夜をやり直して差し上げようかな。寂しい思いをさせてしまったみたいだからな。ぐへへへ
と、下衆なことを考えながらも俺は死に戻りの感覚に身をゆだねた。




