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3章11


集落に入る前にエールから集落内での俺の態度についてお願いがあった


・予言者であり魔族のことも予見することができること

・エールと一緒であれば魔族を倒すことができること

・予言により命の危機が回避できること


この3つは自信をもって”できる”と言い張って欲しいとのことだった。

頭の固い一族から確実に脱出するには、偉大な人物だと思い込ませるのが最適らしい。


少しばかり不安を感じながらも俺は了承した。

自信たっぷりかはさておき、今まで予言と偽りながらもやってきたことなので、なんとか頑張ってみよう。



集落に入るとすぐダニエルがやってきて、集落の中で比較的大きくて立派な建物に案内してくれた。


「ただいまかえりました。父さん」


中に入ると広間のような部屋の奥に男性が座っている。エールは部屋の真ん中あたりに座りながら挨拶をする。


「おかえり、エール。そしてお客人、はじめまして。私はエールの父のアーサーと申します」


アーサーは40代くらいで筋骨隆々のダンディなおじさまだった。鍛え抜かれた身体は彫刻のようで、それだけでも目を引くのに、頭髪は燃えるように真っ赤に輝いている。ルビーを繊維にしたかのような力強い髪の毛がライオンの鬣のように逆立っている。


「は、はじめまして。リューヤンです」


俺はエールの隣に座りながらも、髪の毛に目を奪われながらうわの空で挨拶をする。


「父さんは先代族長なんだ。戦闘ではまだまだ学ぶことが多いし、いつも僕の力になってくれるんだ」


俺がぼーっとしてると感じたのか、エールは肘で俺を小突いてから父親紹介をしてくれた。


「積もる話もあるだろうけど、ダニエルから事情は聞いているよエール。旅の道具を用意してあるから、倉庫で確認しておいで」


「わかりました。じゃあリューヤン一緒に・・」


「あー、リューヤン君はその間、私の話し相手になってもらうよ。不思議な少年らしいからね」


エールに声をかけられて立ち上がりかけていた俺は慌てて腰を下ろす。


エールが若干不安そうな面持ちで俺を見たが、「大丈夫」とナイスガイなポーズで見送ろうとすると、エールは疑いの目を俺に向けながらも建物を去っていった。集落に入る前の打ち合わせのことならきちんと覚えてるから心配する必要はないんだけどね。


「さて、リューヤン君。魔族を倒せるなどとうそぶいているらしいが、それほどの実力があるか試させてもらおうか」


アーサーが立ち上がるとまるで本物のライオンに睨まれたかのような圧倒的なプレッシャーが襲い掛かり、肌がぴりぴりと痛い。


(あ、これはしぬな俺)

俺は無言のまま立ち上がりながら半ば命を諦めた。

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