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3章5


ノックの音を聞いて俺のテンションはだだ下がりだ。

あーそうですか、またですか。今晩もお楽しみでしょうね。


そう思いながらふて寝しようと布団をかぶると、再度ノックの音が聞こえる。


「ん?」


待て待て。ノックの音がしてるのは俺の部屋ではないか?そう思って恐る恐る布団から顔を出すと


ドンッドンッドンッ


今度のはノックではなく、どちらかというと扉を殴っている感じだ。


「は、入ってます!」


焦った俺は訳の分からないことをドアに向かって呼びかける。


「ねぇそれ入っていいってことよね!入るわよ!」


なんとククルが俺の部屋に現れた。


「ククルか、何しに来たの?」


突然の事態に混乱した俺はベッドに座ったまま乙女のように布団をぎゅっとつかんでしまう。


「リューヤンに言いたいことがあって、えーっと、座らせてもらうわね」


ククルは俺の横までトコトコ歩いてきてベッドにちょこんと座る。これでベッドの上に乙女が2人。ではなくて、この状況はもしかしてもしかするのか?俺は乙女モードを解除して正座に座り直す。


「ちょっと!そんなに真っ直ぐ見られたら恥ずかしいじゃない!」


「あ、すまん」


顔をほんのり赤らめたククルに怒られた。俺は足を崩してぼーっと虚空を見つめる。

よく考えると話をするのに顔を見るなというのもおかしな話だがとりあえず従っておこう。


「えっとね、リューヤンにはお礼を言いたくって来たの!」


ククルは若干もごもごしながらどこか偉そうにそう言った。


「お礼?」


俺は頭からクエスチョンをまき散らしながら首をかしげる。


「なんでわからないのよ!あなたバカなの!」


お礼を言われるはずが罵られた。そういうプレーだろうか

俺が困った顔をしていると、ククルがため息を吐いた。


「もういいわよ、リューヤンが私に魔法を教えてくれたから、そのお礼を言いにきたのに」


ククルがちょっと泣きそうになりながら肩をがっくり下げる。

あーそういえば俺のおかげで魔法が使えるようになってる感じなのか。結果的にはそうかもしれないが、どうして魔法が使えるのか全くわかってない俺としてはお礼を言われても自覚がなかった。


「そのことか。あれはククルが自分の力で使った魔法だからお礼を言う必要なんかないんだよ」


俺は優しく諭すように話す。


「ん、まあ、そうね。私は偉大な魔法使いになるものね!でも、一応お礼は言っておくわ!ありがとねリューヤン!」


ククルは調子を取り戻したのか、下がっていた方もぐっとあがり、背筋が伸びたせいか大きな胸が前に突き出され、俺はついつい目を奪われてしまう。


「あっ」


俺の視線に気づいたククルが顔を赤らめて少し背を丸める


「き、今日はもう遅いし、ここに泊まっていくことにするわ!」


若干うわずった声でククルはそう宣言した。


俺の長い長い夜が幕を開けようとしている。

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