3章4
エールが眠った後は、まだ夕方前ではあったが解散することとなった。
ククルは何やら話したいことがありそうにこちらをちらちら見ていたが、戦闘の疲れもあって各自療養に努めることとなった。俺は自室のベッドに横たわるとすぐに深い眠りについた。
翌日
俺は朝から宿の主人に宿泊延長の交渉をしたり、まだ少し怒っている様子のエールに食事を運んだり世話焼きをした後、町を何の気なしに散策することにした。
朝食は宿で食べたばかりだが、昨日の夕食を食べていないし、決死の戦闘があったせいか、どうも腹が減ってきた。
そう思いながらぶらぶら歩いていると広場に人だかりができていた。
近づいてみると炊き出しのような形で何かを配っている。近くにいた人に事情を聞くと、ピクシーが昨日熊の魔物を回収するよう手配し、教会からのイベントとして熊肉で炊き出しを行っているそうだ。
昨日あれだけの戦闘をした後に、教会や町のために奔走していたとは、できる女に頭が下がるばかりだ。
熊の肉と聞いて少し躊躇したが、ピクシーの頑張りに感謝して俺もいただくことにする。
列に並び俺の順番になった。ククルとピクシーは見当たらなかったが、炊き出しではテールスープのようなものをもらうことができた。
透明のスープにごろごろした肉と野菜切れのようなものが入っている。まずはスープを一口。野菜ベースの塩スープに肉のうまみが溶け出しておりとても味わい深い。しっかりした味付けかつしょっぱすぎず、飲んでいると力が沸いてきそうなスープだ。
次はメインの熊肉だ。初めての熊肉にドキドキしながら一番大きなカケラを口にほおりこむ。
「ん!えっ?うまっ!!えっ?うまっ!!」
語彙力が馬だけになってしまうが、これは熊肉だ。そして、この熊肉とにかく美味い。
高級牛肉を圧力鍋でじっくり煮込んだようなほろほろとした柔らかさを持ちつつ、肉の繊維ひとつひとつは噛みしめるのに十分な弾力を保持しており、噛めば噛むほど肉汁が溢れてくるようだ。また、細かな繊維にスープが絡み濃厚な味をさらに引き立てる。
控えめに言わねば俺の語彙力では表現できかねますが大変おいしゅうございました。
語調がおかしくなってしまったが、スープの温かみでほっこりしつつも肉のうまみでガツンと引き込む最高の料理だった。
そのあとはぶらぶら歩いたり、好きなものを食べたり、疲れたら宿でだらけたりと、完全なるリフレッシュデーとなった。
日が暮れる頃、明日には今後の方針をエールと話し合わなければなぁとベッドの上でぼんやり考えていると、ドアをノックする音が聞こえた。