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2章27


ピクシーの投げナイフが途切れたことにより、エールは再び蜂と熊の両方を相手どらなくてはいけなくなった。


俺はエールを助けに走り出そうとするが


「まだだ!」


エールは大声で俺に叫ぶ。俺は駆け出したい衝動を抑えて歯を食いしばる。


エールは俺を睨みつけて制止しているものの、どう見ても限界であった。そこらじゅうから襲い掛かる蜂に何度も刺され、動きは鈍り、熊の攻撃が今にも当たりそうになっている。


チャンスが訪れることなくこのまま負けてしまうのではないだろうか?それならば万が一の可能性を信じて俺も戦った方が・・・俺が葛藤していると突然気温が一気に上昇するのを感じた。それと同時に叫び声が響く。


「いいかげんにしなさい!!!!」


ククルが大声で叫んだと思ったら、その両手からは髪色と混ざり合うような鮮やかな赤い炎が立ち上っていた


「おいククル、それ!」


「リューヤンの言う通りだったわ!いくわよ!予言師が灯す希望(オラクルフレイム)


ククルがそう叫ぶと両手から噴き出していた炎が掌に収束した後、無数の火炎球となりはじけて魔物たちに襲い掛かる。


予言師が灯す希望(オラクルフレイム)は蜂の大半を一瞬で焼き焦がし、熊の魔物も厚い毛皮ごと燃やし尽くし極大のダメージを与えたようだ。ククルの完璧な魔法により一気に戦場をひっくり返した。


「エール!」

「リューヤン!」


俺とエールは同時に叫んだ。今が絶好の好機。阿吽の呼吸で俺たちは熊に襲い掛かる。

エールの方を向いている熊の背中のキズをめがけて槍を突きさす。手応えは・・・十分!


「ブォォオオオオオオ」


熊の魔物がまたしても咆哮を上げるが、これは蜂を呼んでいるのではないと理解った。断末魔に近い苦しみと絶望を表現した声だ。


熊は弱弱しく暴れまわり背中に刺さった槍を抜こうとしている。もうひと押しでこいつを倒せる。


「エール!とどめを!」


俺はそう叫んだ時にやっと異変に気づいた。エールがひざをついて動けなくなっている。


「エール!?」


おそらくエールはとっくに限界だったのだ。猛毒を持つ蜂に何度も刺され、その上、致死の攻撃を掻い潜るために動き回り、無事で済むわけがない。俺に合図を送り走り出したその一歩目で限界に達したのだろう。


俺がエールの状況に驚いて立ち止まった隙をついて、熊は瀕死の状態でククルたちの方に走り出した。

ククルも先ほどの魔法で魔力を使い切ったのかピクシーと同じようにへたりこんでいる。殺りやすい奴を道連れにするつもりか?


「くっそがぁぁああああ!!」


俺は足をひきずりながらも全力で追いかけ、そして熊の背中から飛び掛かり


「とどめだぁあああああ」


熊の背中に刺さったままの槍を勢いに任せてさらに差し込んだ。


勝った


心の中で俺は安堵した。しかし、その瞬間


「ブォォオオオオオオ」


熊の叫びと共に俺は吹き飛ばされた。

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