2章21
鬱だ。もうダメだ。
俺は昨日の夜枕を濡らして悔し泣きをし、朝には布団を暴発で濡らしてひっそりと後処理する羽目になった。最悪だ
昨日ピクシーがご機嫌で俺と宿まで来たのも、エールに早く会いたかったからだろう
エールがピクシーとの打ち合わせの話を聞いてキョドってたのも、夜のことを予測して俺をごまかすためだったのだろう
「もう、元の世界に帰っちゃおっかな」
ぼーっと過ごしていると忘れがちだが、俺には送還という選択肢がある。こんなみじめな思いをするならこちらの世界なんてどうでもいいわ
ちょっと好きになりかけていたピクシーに失恋した上に、他の男との情事を一晩聞かせられるなんて拷問としか言いようがない。
よくよく考えたらエールのやつは村でも控えめ女子を狙ってた気がする。あいつなんてただのヤリ○ンロリコンクソヤローだ。
俺は悲しみで満ち溢れた心で何も考えられなかった。朝食に何を食べたかも思い出せないし、エールが俺に声をかけて出かけて行った気がするがまったく耳に入ってこなかった。
朝支度を終えると自然と教会に足が向かっていた。自分でも何を考えていたのか覚えていないが、帰るにしてもククルには一言伝えてあげないと可哀そうな気がしたのかもしれない。
教会に着くと入口のところで掃除をしている人影があった。
「リューヤンさん、おはようございます」
肌がツヤツヤの合法JC系美人ことピクシーが俺に挨拶してくる。知らない間に宿から教会に戻っていたようだ。俺は思わず身を隠したくなったが、すでに見つかってしまったので、しぶしぶ挨拶する。
「お、おはよ。ゆ、ゆうべはおたのしみでしたね」
なんとなくバツが悪いというか恥ずかしくて苦しまぎれに嫌味を言ってしまった。
「ひさしぶりでしたので、つい。おつかれでしたのに騒がしくてしまいすみませんでした」
照れるでもなく、軽蔑するでもなく、肯定した上で謝罪だと!?もう負けだ、完敗だ。
「イヤ、仲ガヨイノハ良イ事ダト思イマス」
俺は奥歯をかみしめながら、何とか言葉を絞り出した。いっそ蔑んで踏んでくれれば何かに目覚められたかもしれないが、もはや俺の精神力ではピクシーと相対するのは限界だった。
「ふふっ、ククル様に御用でしたか?」
相変わらず察しがよくて助かる。このまま話続けていたら自分で舌を噛み切りかねない。俺は黙って首肯する。
ピクシーに連れられて、前回とは違う少し奥まった場所にある部屋を案内された。扉の前までつくとピクシーが「こちらでございます。それでは、ごゆっくり」と言ってスタスタと去っていってしまった。
昨日案内してくれたときより淡泊というか、不親切というか、ククルに話も通さずに戻ってしまった。あまり態度に現れないだけで、ピクシーにも気恥ずかしさとか気まずさがあったのかもしれない。今日のところは痛み分けということで許してやろうと思う。
俺は軽くノックをしてから扉を開ける。中は寝室というか、ビジネスホテルのような部屋にベッドがドーンと置いてあるだけだった。俺が知っているビジネスホテルと違うところと言えば、ベッドの真ん中にネグリジェを着て眠る女の子がいることだ。
おいっ、さっきピクシーがごゆっくりって言ってなかったか?あん?いいのかこれ?




