2章13
食後に水を一杯いただいて俺は店を出た。一杯といっても店の隅に浴槽みたいな水がためてあり、その横に大量に置いてある湯呑型の植物で水をすくって、植物の底についている細い茎のようなところを吸うと水が飲めた。たしかウツボカズラとかいう食虫植物の形に似ている。他人が手を突っ込んだ水を飲むのは少し抵抗があったが、焼肉で喉が渇いていたのと、この植物が浄水してくれているだろうと祈りながら飲むことにした。水は冷たくておいしかった。
店を出てから俺は食事用のナイフを探すことにした。マイナイフなんて厨二心をくすぶるものはぜひ手に入れたい。青い看板の道具屋か、赤い看板の武器屋に売っていると思う。
店を探しながら改めて町を見渡すと<聖地オラクル>の人々はキーフ族と変わらず、顔が良い人ばかりな気がする。キーフ族もイケメンとかわいい子が多かった。女の子がかわいいのは大歓迎だが、まわりがイケメンばかりだと劣等感がおつらい。服装に関してはエールが来ている民族衣装とは違い、厚手の白い布で作られたTシャツとハーフパンツのようなものを着ている。
それと<聖地オラクル>の人たちは髪色が緑とか水色、たまに青っぽい人もいるが茶髪の人はほとんどいなさそうだ。あと男性は標準的な体形だったが、女性は小柄で華奢な人が多い。後ろ姿は小中学生くらいに見えても、顔立ちから大人のお姉さん感が伝わってくる人がたくさんいる。おぼろげながら合法という言葉が思い浮かんできたが、気にしたら負けだろう。
そんなことを考えながら何となくキョロキョロしていたら、路地裏に向かって走っていく女性がいる。誰かに追われているのだろうか?
俺はその女性を追いかけることにした。相変わらず背格好は中学生と間違えそうな体形だが、ちらっと見えた顔がめちゃくちゃ美人だったからだ。ショートヘアの髪もエメラルドグリーンで美しく、光に照らされて輝いて見えるのがとても幻想的だ。美人とのフラグは大事に回収して近くでじっくり顔を確認したいところだ。
俺は急いで路地裏へと追いかける。路地裏といっても家と家の間の隙間道的なもので、子供が鬼ごっことかするのに使いそうな狭い道だった。ところどころ建物の裏口らしき扉があったり、資材が置いてあったりするが、基本的には薄暗いだけの道だった。
女性はすでに何軒か先の家の横を走っているが、こんな裏道で大声を出すのも憚られるので、俺は少し近づいてから声をかけようと距離をつめることにした。
女性は全力で走っていないのか、急げばすぐに追いつけそうな速度だった。俺が駆け出して少し距離が縮まったところで女性が振り返ってきた。女性がキョトンとした顔で首をかしげるので、俺はなるべく自然なスマイルで微笑みかえそうと・・・
ゴツン
「痛ってぇ」
建物の陰から飛び出してきた何かにぶつかったようだ。俺はぶつかった衝撃でふらふらと座り込む。
「ちょっと!!痛いじゃない!!」
そこにはすごい剣幕で怒る女の子がいた。