2章11
「魔物の倒し方なんて、どうして俺に聞くんだよ」
「ダニエルでも勝てない聞いたこともないような魔物とまともに戦うなんて危ないじゃないか。予言でなんとかしてくれないかい?」
困ったときの猫型ロボットのような使い方は安易すぎないかい?
「んーやってみるけどしばらくこの町に滞在しないと難しいぞ」
そもそも予言なんてできないので、情報収集と装備を整えた上で、それっぽいことを言ってなんとかやっつけよう。死なずに滞在の最長記録を更新中だし、そもそも死にたくないんだ俺は
「じゃあ宿をとらなくちゃね」
そう言ってエールは歩き出す
「おい、宿ってここじゃないのか?」
宿屋からは今出てきたところだ。エールはまたも真剣な顔で俺の方を見る
「リューヤン、君は馬鹿か?ダニエルと同じ宿に泊まったら何のために旅に出たかわからないじゃないか」
「も、もしかしてお前?」
エールはふふんと笑いながらうきうきと歩き出した。ただのご機嫌なイケメンのはずが下衆な顔に見えるのは気のせいじゃないだろう。
町を横断するようにしばらく歩いて、反対側の門の近くの宿屋に着いた。
歩きながらエールに簡単な町の説明を受けることができた。
・店について
商売をしている建物はある程度色で見分けることができる。宿屋は黄色、食べ物は緑、武器防具は赤、道具は青といった感じだ。必ずその色じゃなければいけない訳ではないが、そういう社会ルールというか習慣なんだそうだ。
・町全体について
店は町の中心部に多く、門と通りの近く以外は農耕用の土地になっている。住居は今歩いてきた大通りから外れるとほとんどなく、人口は数百人程度。
・暮らしについて
基本的に町の中で自給自足の生活ができるようになっているが、ときどき町の外に狩りをしに行くこともある。狩った魔物は食用、装飾用、通貨代わりの素材となる。紙幣や貨幣は存在せず、決められた魔物の素材を通貨としている。
エールがお金を持っているように見えなかったが、どうやら町に向かいながら通貨となる素材は集めていたらしい。
エールは3日分の宿代をまとめて払っていた。なんと1泊夕食付きでたったの2ホーンだ。
ホーンとは子豚のような魔物の牙のことで1000円程度の価値があるようだ。牙といっても先は丸く勾玉みたいな形で安いガチャガチャのカプセルより少し小さいくらいだ。
1泊2000円は格安すぎるが、宿といっても部屋を綺麗にして出ないといけないらしく、場所を貸して食事を提供しているだけらしい。
そもそも旅人なんてほぼゼロの世界で宿泊する必要がわからなかったが、普段は落ち着いて夜を楽しみたい人が使う施設とのことだ。落ち着いて夜を?うん、そういうことですか、そうですか。
そんな宿で男2人密室3日間、何も起きないはずはなく・・・と心配したが、普通に別室だったし、町では別行動をしたいとエールが言い出した。夕食のときは戻ってきてお互いの状況を確認するが、それ以外は別行動だそうだ。
絶対に女関係だと確信して邪魔してやろうとも思ったが、俺が町で困らないようにお小遣いをくれた上に「リューヤンも予言の息抜きに楽しむといいよ」(キラン)と颯爽と去っていったので、今回のところは見逃すことにした。というか俺もエールの邪魔がなければ村でワンチャンあったんだ。この町では足を引っ張らずWin-Winを目指そうじゃないか
そろそろお昼ごろということもあり、昼食を探しがてら町の散策をすることにした。




