2章10
宿屋に入ると、エールが主人と話してダニエルの部屋に向かう。宿屋といっても1階は酒場のようなオープンスペースになっており2階に客室があるようだ。そのうち一番手前の扉を開くと見知ったおじさまBことダニエルがベッドに横たわっていた。
「ダニエル、大丈夫でしたか?」
良い子モードのエールが声をかける
「族長!ご無事でしたか!すみません一族の元に向かう途中で魔物にやられてしまいまして」
ダニエルは申し訳なさそうに謝りながら体を起こす。元々40代くらいの見た目だったが顔色が悪くげっそりしているため、10年くらい老けこんだような印象で、起きているのも辛そうだ。
「魔族はリューヤンの活躍で誰一人欠けることなく撃退できましたので、気にしないでください。それよりもダニエルに何があったか教えてください。」
「なんと本当に魔族が!しかも魔族相手に圧勝ですか!リューヤンは只者ではありませんな。」
ダニエルが嬉しそうにほほ笑む。なんか俺が倒した感じになっているが、戦闘ではマジで何もしていない
「そうそう、魔物についてでしたな。集落とここへの分岐にさしかかる少し手前あたりでしょうか、キラービーを引き連れた見たこともない熊の魔物が現れまして。そいつにやられたんですよ」
熊って蜂の天敵じゃなかった?魔物の生態系どうなってんだ
「怪我だけなら何とでもなったんですが、キラービーの毒をもらってしまいまして。集落への道をふさぐように魔物がおりましたので、仕方なく<聖地オラクル>で解毒しようと向かったわけですが、思いの外傷が深く途中で魔力も切れて体力も戻らず死にかけまして、このあり様です。」
4歩あるくと1ダメージみたいなやつを数日間か、地獄だな
「ダニエルの命があってよかったです。どうか安静にしていてください。魔物の特長を伺ってもいいですか?」
「3mほどの大きさで体毛はくすんだ紫の熊の魔物でした。動きはさほど素早くないですが、体毛が厚く槍が通りませんでした。攻撃はキラービーをけしかけてきて、こちらの注意が逸れたところを狙って爪で攻撃してくるのでお気を付けください。私でも一撃で大けがを負いました」
「ありがとうございますダニエル。なんとか対策を考えることにします。傷が癒えるまでゆっくり休んでいてください、それでは」
そう言ってエールは部屋を出る。俺もお大事にと一言伝えて部屋を後にした。
熊の魔物がいるのはキーフ族の若者たちが集落に帰るときに使う道なので、エールは何かしらの対応を考えているのだろう。エールは真剣な顔つきをしながら宿屋を出て俺の方を向いた
「さあリューヤン、あの魔物の倒し方教えてよ」