2章7
「おい、エール!なんだ今のは!」
「あ?キラービーか?確かにこの辺りじゃ見かけたことない魔物だったけど」
「違う違う、そうじゃない。いや、蜂にもビビったけど、そこじゃない。フラッシュファイア!ピカッってなんだよ。今まで呪文なんて唱えずに魔法使ってたじゃないか!」
エールよ、解説キャラならきちんと説明していただきたい
「魔法を使うときは普通呪文を唱えるものだよ。というか呪文なしに魔法使うのなんて魔物と魔族を除いたら僕の一族くらいじゃないかな?」
「キーフ族がなんで無詠唱なのかも気になるが、エールはどうして呪文を唱えたんだよ?」
エールの説明は毎回新情報を上乗せしてくるので、油断するとドンドン話が脱線していってしまう。まずは最初に気になったことの解決を優先しよう。
情報は少しずつ小出しにして説明していかないと読者が混乱するんだぞ
「呪文唱えた方が楽だから」
「おーい!過程より結果が大事という姿勢を否定はしないが、どうして楽なのかちゃんと説明しろ」
「リューヤン今日は元気だね。呪文唱えれば、何となくイメージして魔力を込めれば魔法が使えるんだけど、呪文なしだと明確に魔法の姿を思い浮かべないといけないんだ。めんどくさくって」
「ちなみに、なんでエールの一族はめんどくさい無詠唱を使ってるのかな?」
「ご先祖様が呪文なしの魔法で活躍したらしいんだよ。不意打ちで魔族にダメージを与えたとかで。だから普段から呪文なしで戦うことになってる」
「確かに声がした方から魔法が飛んでくると思ってたら、無詠唱は避けれないな」
「まあ僕個人の体感では、1発屋みたいな攻撃にすがっていないで、呪文唱えてどんどん魔法を放った方が戦力になると思うんだよね」
エールがあっけらかんと自分の一族の伝統をディスる
「族長が伝統無視してて、問題にならなかったのか?」
「バレたらめちゃくちゃ怒られると思うよ。だけど、バレなければどうということもない。」
どこぞの公国軍みたいなことを言い出した
「だから1人で見回りして、周りに人がいないときは呪文唱えまくってたね。すごいストレス発散になったよ」
「ストレス発散で生物を焼き払いながら駆け回るのは人ととしてどうなんだ」
村にいたときエールが1人で見回りしていたのは、これが理由だったのか。エールに族長としての責任感とかは皆無なようだ
「魔物を狩るついでにやってたから、村は安全で僕はすっきりして一石二鳥さ。そんなことよりちょっと周りの様子を見てきたいから、リューヤンは少しここで待っててくれないか?」
「ん?うんこか?」
「よし、リューヤン、ここに置いていくから強く生きてくれ」
「あーうそうそごめんごめん。で、気になることって何?」
エールがあきれ顔で去ろうとするので慌てて謝る。
「やっぱりこんなところにキラービーがいるのは不自然だよ。それに他にも少し気になることがあるんだ」
そう言ってエールは森の中へ飛び込んでいった




