2章4
ちなみにリューヤンの言語力は相変わらずなので「勇者」なんて単語はいきなり理解できていません。
話しの流れ的に日本語なら「勇者」だろうとなんとなく当てはめているだけで、エールが実際に話している内容と齟齬がある場面がありますが、ストーリー上で思い違いが重要になる場面(今のところ予定していませんが)以外は単語の誤解はほとんどないものとして進めていきます。
むかしむかし、これは本当にあった物語
魔族が蔓延る暗黒の時代に希望の光として3人の勇者が生まれたそうだ。
<炭鉱都市ガボル>剛腕のブレイブ
<王国都市メルブ>双撃のグラント
<魔法都市アイル>魔帝ホリィ
剛腕のブレイブは怪力堅牢の大男。身の丈を超える巨大な大剣を携えて戦場を一刀両断する。人外の強さを誇る魔族を相手に対等に渡り合える肉体を持っていた。
双撃のグラントは唯一無二の魔法剣士。一流の兵士は剣技も一流、一流の魔法使いは魔法も一流、でもどちらも一流なのは彼だけ。オールマイティに突き抜けた天才はあらゆる場面で躍動した。
魔帝ホリィは魔法の王。彼にできない魔法はなく、彼の魔法を真似できる者もいない。魔法を愛し、魔法に愛された男。
若き勇者たちは少しずつ成長し、希望の光は日に日に大きくなっていた。
だが、悲劇は起こった。魔族に襲われた魔法都市アイルが陥落してしまう。奇跡的に生き延びたホリィは魔族討伐を決意し、仲間を集める旅に出る。
数々の出会いと別れを経て3人の勇者は揃い、おぼろげながら力を貸すものも現れた。人類最強の3勇者が揃い、パーティーは順風満帆に旅を続けた。
3勇者は各地を周り、魔の森にて魔族と会敵する。
戦いは激闘を極めた。ブレイブが立ちふさがり、グラントが助け、ホリィが攻めた。他の仲間も傷つきながらも果敢に挑み、遂に魔族を討伐することができた。
これが人類で初めての魔族討伐である。
3勇者は凱旋し世界に活気が戻った。各国からのお祝いで十分に英気を養った勇者たちは再び魔族討伐の旅に出た。
勇者たちがこのまま世界を平和に導くと誰もが信じて送り出した。
しかし・・・
勇者たちが旅に出てからしばらくして、傷だらけでぼろぼろの男が王国都市メルブにたどり着いた。なんとそれはグラントであった。今にも命が尽きそうなグラントは、目を覆いたくなるような事実を報告した。
勇者のパーティーは全滅した、と。世界は悲しみと絶望に打ちひしがれた
もはや魔族に抗う力は人類には残されていないように思えた。不幸中の幸いだが、グラントは命を取り留めることができた。
生き残ったグラントは魔族に対抗するために世界の結束を訴えた。しかし、希望を失った各国は自国の防衛のことしか考えられず、世界は混乱した。
しかしグラントは諦めなかった。再び世界を周り各国と話をし、永き時をかけて世界連合国を立ち上げることに成功した。これが現代まで続く連合国家グランディアの始まりであった。
グラントは世界を周る際に不思議な魔法を施していた。その魔法を受けた町には魔物が近寄らなくなり、魔族が襲いかかってくることもなくなった。この嘘のような魔法は「グラントの守り」として世界の奇跡として語り継がれている。グラントの守りは、グラント死した後も消えることなく世界を守りつづけている。
グラントの功績により平和な箱庭を手に入れた人類の多くは魔族討伐よりも安全な日常を大切にし、平穏に暮らすこととなった。
そして今年は連合国家グランディア建国450年の年となる。