2章2
リューヤン
・鉄の槍
・布の服
・皮のくつ
皮の袋(キノコの粉)
布のマント
エール
・鉄の槍
・キーフ族族装
・皮のくつ
布のマント
俺たちは最初の村で買える最強装備みたいな持ち物で旅立つことになった。
皮のくつや道具はモンスターの素材からできているそうで、丈夫で軽くて肌触りもいい。キーフ族が着ている衣装はさらに頑丈で燃えにくい素材だが、集落に戻らないと作れないそうで、俺は元々着ていたTシャツ(防御力2)を着ていくことになった。
布のマントは寝具用で、保温性が高く身を守るのにも使えるが、普段は邪魔なので畳んで腰に引っかけている。こちらの世界は春のような気候なので、寒さ対策はこのマントだけで十分だった
歩き始めて半日ほど経った。時々俺を気遣う言葉をかけてくれるが、基本的に黙々と歩く。途中で出てきた魔物はエールがほぼ一撃で倒してくれる。強い。
「ふー、そろそろいいかな?」
エールがきょろきょろしている
「何が?」
「追手がいないかと思ってね、でも大丈夫そうだ。リューヤン、君にはホントに感謝してるよ。正直、人生プラン失敗したと思ってたんだよね」
あれ?エールってデフォで丁寧口調の好青年じゃなかった?急にくだけすぎじゃね?
俺が呆気にとられているとエールが続ける
「僕が一族でも抜群に優秀なのはわかってたから、族長になるってプランは間違ってなかったんだよ。でも、族長が制約だらけなんて誰も教えてくれなかったからさ。あっ、相談役のとこの末っ子は僕も有望株だと思ってたよ。リューヤン見る目あるね」
「は?どういうこと?」
「だからさ、僕はモテたかったんだよ。3歳くらいのときからだったかな」
「早熟すぎるだろ!」
「ハハハハ、それは個人の自由だろ。で、幼い僕は考えた訳だよ。どうすれば気に入った子と好きなように遊べるかを。幸いにも僕は同世代でも抜きに出て才能があったから、一番偉くなればいいと思ったのさ」
「才能の無駄遣いすぎる」
「でも真剣に努力したんだぜ?優秀で模範的な一族の象徴を意識してさ。その結果、なんと僕は15歳という若さで族長就任さ」
エールは俺と同い年の17歳だ。すでに族長3年目というわけだ
「それで、パートナー選びの村に参加するまでは良かったんだけどさ、族長は監督役としての自覚を持てとか、族長の誘いは断れないから慎重にとか、相談役がうるさくってさ」
「あーなんとなく目に浮かぶ」
おじさまAは堅物というか真面目というか、心配しすぎな所もある
「せっかく族長になったのに誰にも手出しできないんだよ?もうやってられないと思ってさ。でも理由もなく族長を辞めるとモテないだろうし、完全に手詰まりで困ってたんだよね」
「そこで俺を口実に村を出ることにしたのか」
俺があきれながら尋ねる
「あーごめんごめん。リューヤンと一緒なら魔族の1人くらい倒せるかもって思ったのもホントだよ?魔族殲滅が一族の悲願っていうものホントだし。ただ、目標は1つだけって決まりもないから僕は自分の夢の実現を同時進行しようと思ったのさ」
「つまりエールは、女の子との出会いを求めるついでに魔族を倒そうってことか?」
「アハハハハ、魔族なんて数百年討伐されてないんだから努力目標さ。もしも倒せたら一族の中だけと言わず女の子には困らないような英雄になれると思うけどね」
「最低なこと言ってそうだけど、そこまで一貫してると逆に清々しい」
「リューヤン話がわかるじゃないか」
エールはやたらテンションが高く俺の方をバンバン叩く。ちょっとキャラが変わりすぎてびっくりしたが、一般男子としてエールの気持ちもわかるので、多少動機が不純でも腹は立たない。
「あ、そういえば、リューヤンだけ楽しむのも悔しかったから意地悪しちゃってすまなかったな。これからは仲良く青春の旅を楽しもう」
「は?意地悪なんてされたっけ?」
「村の女の子でリューヤンをパートナーとして興味があるって子もいたけど、族長命令で一族以外を誘うのは禁止にしておいた」
「オ前命ノ覚悟ハデキテイルカ」
俺が般若の顔で槍を振り回すが、エールは涼しい顔で避ける。俺の怒りが収まるまでしばらくギクシャクしつつも2人で旅を続けた




