1話9
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それは俺がテントの中で、水浴びの光景を思い出している時だった。
ちなみに俺のお気に入りは、見た目が同い年位の細見で目がパッチリした子だ。ボリュームは少し控えめなCくらいだが、俺はそのくらいがいい。とてもいい。水浴びの最中もはしゃいで飛び跳ねている元気娘。飛ぶたびに揺れ動く小山から目が離せない。
そんなバカなことを考えているときであった。地面が揺れたように感じた。
エールは早かった。俺におそらく「ここにいろ」と指示を出したかと思うと槍を持ってテントの外に駆け出して行った。
このとき、俺は重大なことを思い出した。
村に来て1週間。そうだ、あいつが来たのはちょうど1週間後の夕方だった。
俺は意を決してテントを飛び出す。村を見渡すと広場に一番近いテントから火が上がっていた。
村人たちはすでに武器を手に広場へ向かっている。
「やっぱりそうか」
俺は急いで倉庫に向かい、相棒のスコップを手に取って広場に向かう。
広場ではすでに激しい戦いが繰り広げられていた。中央にはオレンジ髪の魔族が悠然と突っ立っている。
男性たちは槍を携え突進し、女性達は木の陰から氷の礫を魔法で飛ばしている。それに対して魔族は向かってくる相手を大雑把に吹き飛ばすように火炎を放ってけん制している。
俺はあまりの戦いの激しさにその場で立ち止まってしまった。
はじめのうちは村人が優勢のように見えた。村人の中でも抜群に素早いエールと歴戦たるおじさま2人が、魔族の放つ攻撃を掻い潜り、何度か鋭い突きをお見舞いしていた。魔族は見た目どおり頑丈なのか、致命傷とはならなかったものの、浅い傷だが確かに出血するだけのダメージを与えていた。
もしかしてこのまま行けるのでは?と思ってしまうほどの猛攻だった。
しかし、ダメージを喰らった魔族が戦闘の方針を変えてからは一気に形勢が変わった。
魔族はエールとおじさま達の動きに注意を払いながら、村人を1人ずつ狙いうちにしていった。
動き回る男性は徹底的に追撃し、女性には魔法を放つ瞬間にカウンターで炎を放っていた。魔族の放つ魔法はスピードも威力も桁が違うのか、魔族が後出しで放った攻撃を避けきれずに女性達も倒れていく。
それでも村人たちは奮闘した。誰も逃げ出さず、臆さず、攻め続けた。その結果、魔族には幾度かの攻撃を加えることができた。
だが、そこまでだった。
若者を庇ったおじさまの1人が攻撃をモロに浴びて倒れてからは一方的だった。魔族は誰も寄せ付けず、1人また1人と焼き尽くしていく。
やがてエール以外のすべての村人が倒れてしまった。
エールは諦める様子もなく魔族と睨み合っている
俺はそうなるまで動けなかった。確かに恐怖はあったが、理由は別だった。死ぬことは今はどうでもいい。
俺が足を引っ張るのが怖かった。
たった1週間の共同生活だったが、村人達はみんないい奴だとわかった。やられそうな仲間がいれば庇ってしまう。きっとそんな奴らだ。
あの俊敏な村人達でもやられるような場所にスコップを振り回すだけのガキが入っていけば、当然、俺を庇って村人の誰かが死ぬ。そんな無駄死にをさせるのは絶対に嫌だった。
だが、もはやそんな心配をする必要はない。今回も村人達の負けは決まった。
でも、でもだ
魔族を倒せないと決まったわけじゃない
俺はわずかな可能性に賭けて、歩み出した。もはやスコップは必要ない。この作戦はエールが俺をどれだけ信用しているかが鍵となる