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1章5

物語の展開がゆっくり目で申し訳ない。でも縛りプレイの序盤ってこんなもんだと思うのでご容赦ください。


「1回キノコの前まで戻ってみるか」


決め台詞が気に入らなかったことはさて置き、至近距離でキノコを滅多刺しにしたので、返り血で体液を大量に浴びてしまった。

毒があるかはわからないが、べたべたした紫の液体は普通に気持ち悪い。当然、着替えなど持っていない


俺はセーブ&ロードの感覚を思い出しながら、目を閉じて戦闘前に戻るように念じてみる


そして目を開けるとそこには、キノコの死体が転がっていた


「あれ?戻ってないぞ?」


もう一度念じてみるがやはり戻らない


「調停神は何て言ってたっけ?うーん、ダメだセーブ&ロードで納得しちゃって全然覚えてないな」


小説の中の主人公って1回聞いたことほとんど覚えてるのおかしいよな。すでにセーブ&ロード以外の情報が全く思い出せない。わからないことで悩んでいてもしょうがないので、気持ちを切り替えることにする


「川か何かあるといいんだけど。あと、そろそろ他の村とか見えてこないかな」


淡い期待を持ちつつ再び歩き出す。


歩きだしてまた30分程が経った。その間に何回かキノコがゆっさゆっさ近づいてきたことがあったが、倒しても何も得しないので無視して逃げた


距離にしてみたら大して進んでいないと思うが、変わり映えのしない景色ばかりでうんざりしてきた。


「いつになったら人里にたどり着くんだよ」


道なりに進んでいるのでどこかにつながっているのは確かだが、ひとりぼっちでキノコに追われながらの移動なのでかなりまいってしまった


そう思いながらもダラダラ歩いていると、近くの草むらがカサカサと音を立てたかと思うと


「ぐはっ、なん」


俺は急に右脇腹に衝撃を受けて横向きに倒れこむ。痛む箇所を手で押さえると、ナイフで突きさされたような傷があり大量に出血していた


「ぐわぁああ、いっ、クソっ」


痛みで訳もわからずうめき声を出しながら体を丸くして脇腹を抑えていると、今度は右足に激痛が走り太ももから血が流れる。


「ぐぁっこの」


そこには通り魔の犯人らしい大きな鶏がいた。キノコの魔物より少し大きいくらいの鶏は、鶏冠が青く、鶏とは思えないほど丸々太っている。そして足元の趾は俺の血で真っ赤に染まっている。趾の先には果物ナイフのような爪が付いているように見える。あれで刺されたのだろう


俺は最初に刺されたときに落としてしまった木の棒を拾って振り回すが、鶏は予想以上に素早くて掠ることすらない。


「おらっ!近寄るな!」


俺は必死に木の棒を振り回す。鶏は俺の攻撃が届かない距離を保ったまま、首を横にひねる。こいつ何ムダな抵抗してるの?とバカにされてるようで非常に不快だ。だが、今の膠着状態のまま鶏が立ち去ってくれれば、まだ助かる可能性はある。俺は一縷の望みをかけつつ鶏をにらみつける。


「刺し違えてでもお前を殺すからな」


すでに出血多量で満身創痍だが、なんとか気迫で鶏を威嚇してみる。鶏は俺の威嚇に応えるが如く大きく口を開き突然大声で鳴いた


「クックルー!」


「鳴き声は鳩じゃねーか!」


思わずツッコんでしまったが何かがおかしい。鶏が鳴くときに口の周りが怪しく光ったような気がする。


そしてもう一度鶏をよく確認しようとすると


「いない?」


目の前にいたはずの鶏がいなくなった。俺がきょろきょろと周りを確認しているとまたしても激痛が走った。今度は右腕が刺された。どうして右ばっか狙いやがるんだクソ。


しかし刺された瞬間も鶏は見えなかった。どこに行ったのかと慎重に気配を探ろうとしたら、何のことはない。目の前で鶏がそっぽを向いている。もしかして俺を倒したと思ったのか?だとしたら千載一遇のチャンスだ!


俺は静かに木の棒を握り直し、思い切り鶏の首あたりをめがけて付いた。


「は?」


確実に当たると思った瞬間鶏がボヤンと煙のようにいなくなった。


「もしかしなくてもさっきの光は幻覚かなんかの魔法だな」


気づいたときには時すでに遅く、俺はじわじわと鶏に滅多刺しにされて息絶えたのであった。

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