序章1(邂逅1)
俺は紫 竜矢高校生。幼馴染の女の子もいなければ、探偵でもないけど毎日まぁまぁの人生を送っている
休みの日も特にやることもなく、ベットでゴロゴロしながら惰性で続けているゲームのデイリークエストをこなす
「はぁ退屈なんだよなぁ」
最近のゲームは収益を狙い過ぎて、刺激と変化ばかりを求めているのがよくないよね
誰も得しない機能を開発者の趣味で搭載してるような古き良きレトロゲーは出ないものか
ゲームにも飽きて話題の異世界モノのアニメを見てみたが、こちらも気に食わない
「異世界に行ったからってどいつもこいつもチート能力じゃつまんないだろ」
と意味もなくぶつぶつ文句をいっていると・・
"そんなあなたにピッタリのお願いがあるんですよ~"
突然、目の前に女性が現れて、少し前屈みになりながら話しかけてきた
髪はウェーブのかかった茶髪で服はふわふわの白衣を着た少し華奢な20歳くらいの女性だ。天使か何かだろうか。少し幼さを感じる小動物系のかわいらしい顔で、とてもいい匂いがする。
そしてなにより、なによりも目を引くのは、華奢な体からは想像できない圧倒的存在感の山が2つ。前屈みになているせいで山頂近くまで露わになっている。Eか、Fか、いやもしやそれ以上の
一般的高校生である俺にはサイズ感など理解できていないが、そこには夢と希望が詰まっていることは間違いない
"どうしました~?"
「あ、いや、あの、はい、大丈夫です」
あまりに突然のことにパニックになっている上に、見惚れていたところに話しかけられたせいで、めちゃくちゃな返事をしてしまった
"あ、ご快諾いただけますか~ それではお願いしま~す"
女性がそう言うと、部屋の風景がぼんやりとしていき真っ白な空間に切り替わった
「精神と時の部屋?」
意外と冷静な質問が口をついて出る
"それ、なんですか~?"
女性がクスクス笑ながら答える。可愛い。
"ここはいわゆる ちゅーとりあるるーむですよ~"
"今からあなたが向かう世界でのみっしょんをおつたえします~"
"あ、自己紹介がまだでしたね。私は、神の半身です~"
「俺は紫 竜矢です。神の半身?半分ってことですか?」
あの素晴らしい双子山が倍の高さになるということか?いや、双子山が双子に?
胸のことで胸いっぱいで、目の前の自称神の女神について質問してしまった
"そうそう、それがみっしょんに関係してるので説明しますね~"
「助かります」
とりあえず話を聞くことにする
"私は元々ひとりで世界を見守ってたんですけど~ どうしたらいいかな~って悩んじゃう問題もたくさん起きちゃってですね~"
"そこで思いついたんですよ~ ひとりだと悩んじゃうなら~ ふたりで考えればいいんじゃないかって~ いい考えでしょう?ふふっ それで~反対の考えのふたりに分ければ~ なんかちょうどいい感じになるんじゃないかな~って"
間の抜けた喋り方で、いい加減な説明をする女神
つまりあなたは適当な方の半身ってことか?
"あ~ なんだか失礼なこと考えてません~?"
ほっぺを膨らませてこちらを見つめる女神。とても可愛い
「いや、そんなことないですよ。続けてください」
"ふ~~ん?じゃあ続けますけど~ 最初の頃はうまくいってたんですよ~ いい感じで動物も植物も進化してきましたし~"
"増え過ぎちゃった大きなトカゲちゃんのときは~ はんちゃんがトカゲを滅ぼそうって言って~ 少しまずい感じになっちゃって~ "
「はんちゃん?大きいトカゲってもしかして恐竜の話ですか?」
ダラダラと話す女神に思わず口を挟んでしまった。
はんちゃんって誰だよ
"はんちゃんは私の反対の半身だからはんちゃんです~ りゅーやんさんのいた世界の歴史とはちょっと違うんですけど~ 恐竜といえば恐竜です~"
「はー?」
やはりもう1人の半身らしい。それに歴史が違うってなんだ?説明の足りない女神だ。
"それでですね~ はんちゃんがですね~ 今度は人族を滅ぼした方がいいって言いだして~
「それはまずいですね」
"そうなんですよ~ 私はやだなぁって思ったんですけど~ はんちゃんは人族が邪魔だと思ったみたいで~ いまとてもまずい感じなんですよ~"
"それで~ りゅーやんさんが人族を救う勇者に見事選ばれました~"
女神は満面の笑みで両手を広げてこちらに向けてくる
ここが漫画の中ならパッパラーとラッパの音がして紙吹雪が舞ってそうだな
って不穏な状況の中ようやく本題が出てきたな
「え、なんで俺が」
当然の疑問である
"せっかく来てもらっても~ 転移して突然死んでしまうような世界じゃ困るじゃないですか~? なので、近い世界の人族であるりゅーやんさんにお願いすることにしたんですよ~"
ん?転移させられるのか?それよりこちらの世界の人なら誰でもいいってことなのか?まったく意味がわからない
「たしかにスタート直後に即死はイヤですね・・・ってかりゅーやんって言ってます?俺は竜矢ですけど。」
つっこみどころが多すぎる説明のせいで、逆にどうでもいいところが気になってしまった
"そうですそうです~ 人族が暮らせる世界じゃないとです~ え~~~りゅーやんさんの方がいい感じですよ~"
女神がちょっと不服そうな顔をして、大きく前のめりになる。
「あっ、じゃ、そ、それでいいです」
またも現れた双子山にドキドキして早口で返す俺。
この女神わざとか?いや、わざとでもありがとうございます
"ふふふふ ありがとうございます~ "
"それでは人族を滅ぼそうとしてる~ 魔族をなんとかしに、いってらっしゃ~い"
女神がそう言うと最初に白い部屋に飛ばされたときと同じように視界がぼんやりしてきた
え、ほとんど説明を受けないまま、異世界に飛ばそうとしてない?
「いや、説明雑過ぎか!」
俺の突然の怒鳴り声に驚いた女神は見るからに悲しそうにシュンとなる
「あ、すいません思わずツッコんでしまいました」
文句を言ったもののかわいそうなので謝っておく。でも俺は悪くなくない?
「魔族が出てくるってことはいわゆる剣と魔法のファンタジーなんですね!?」
そうしているうちに視界はさらにぼやけてくるのであわてて質問をしていく
"そのとおりです~ ふぁんたじぃですよ~ 気をつけてくださいね~"
女神は嬉しそうに飛び跳ねながら両手を振っている
「あ、俺の能力ってなn」
バインバイン揺れる双子山の光景が消えて、俺は一番重要なことを聞けないまま異世界に転移したのであった