スイーツとオシャレ1
背の高い建物がどこまでも並んで見える街道。
視界に入るのはたくさんのお店。
そこで私は、ワクワクする衝動を解き放つように、思いっきり手を挙げる。
「……という訳で、コンビニ通りに来ったぞぉ~!」
「片っ端から美味しいスイーツ好きを食べ尽くしてやるニャ♪」
続けてターニャも、ウキウキな様子で手を挙げた。
勝手に盛り上がっている私とターニャを横に、ティナが困った顔を向けてくる。
「あ、あの……特訓するんじゃなかったんですか?」
「細かい事は気にするニャ! せっかく来たんだから楽しまなきゃ損ニャ♪」
ターニャの尻尾はゆっくりとフリフリしている。
見ての通り彼女は相当、ご機嫌のようだ。
「そっか、ティナはコンビニに来るのは初めてだったね。ここは食べ物から服まで何でも揃ってる、何でも通りって有名な所なんだよ」
軽く説明をしていたら、遠くからターニャの呼ぶ声がする。
「お~い、こっちに来るニャ~!」
声がする方を振り向くと、ターニャが手を振っている。
つい先程まで隣にいたので、いつの間にっと驚く。
後ろにはスイーツのお店があり、甘い匂いが漂っている。
ターニャがどこからともなく、紙カップに入っている雪のような丸い食べ物?を取り出す。
「はいこれ、食べてみるニャ」
それを流されるまま受け取り、ターニャの言葉に驚く。
「えっ、これ食べれるの?」
「……な、何なんですか。これ?」
ティナも戸惑っている。
このような食べ物は今まで見た事がない。
なので、食べるのに躊躇してしまう。
すると、ターニャは木製のスプーンでそれを掬い取る。
「四の五の言わないニャ。食べてみれば分かるニャんよ。それ!」
「んん!? ちょ、ちょっと、ターニャ!」
隙を付かれてターニャに、それを口の中へ入れられてしまった。
次の瞬間、口の中がひんやりと冷たくなると同時に、まろやかな甘さが広がる。
やがて、味わっている内に自然と溶けてなくなってしまう。
たった一瞬の出来事だったが、物凄い幸せを感じ、自然と顔がほころびる。
「お味の方はどうニャんか?」
「お、美味しい。こんなに美味しいの初めて食べたわ!」
そう答えると、ターニャは満足そうに笑顔を見せる。
一方、ティナもまた食べるのに躊躇をしていたが、私が食べたのを見て覚悟を決める。
それをスプーンで掬い取ると、思い切って口に運ぶ。
「冷た……! ……け、けど、甘くて美味しいです……!」
「そうニャ、とっても甘くて美味しいんだニャ!」
そうターニャは答えると、それをスプーンに乗せ、パクッと美味しそうに食べる。
また食べてみたい。
このスイーツ?は何て言うのだろう。
そう疑問に思い、ターニャに聞いてみることにした。
「これ、何ていうの?」
「アイスニャ! 最近、流行りのスイーツニャ♪」
ターニャは自慢気に答えた。
自分は流行りに詳しくないが、ターニャはそういうのには敏感だ。
そんな彼女に、ティナが不思議にそうに問い掛ける。
「こ、これ……何で出来てるんですかね」
「ターニャにもよく分からないニャ」
ターニャはあっさりと、自分も知らない事を告げた。
それって、まずくない?
少しばかり不安が頭をよぎる。
「えっ、それって大丈夫なの?」
「美味しければ問題ないニャ! じゃ、ターニャは先にあそこの服屋さんに行ってるニャ~♪」
ターニャは足早に、そそくさと立ち去って行った。
逃げたなっと、思ったがアイスが美味しかったので良しとする事にした。
落ち着く茶色い木の床に、白い壁といった内装の服屋さん。
棚やテーブルなど、至るところに様々な服が並べられている。
眺めるように服を見る。
すると、ターニャがオフショルダーという肩が露出している服を持ってくる。
「ニャニャっ、これとかイリシャに似合いそうニャ!」
「けど、これ……露出多くないかな? 見えすぎっていうか、肩とか丸出しなんだけど」
「それぐらいが丁度良いニャんよ。試しに着てみると良いニャ♪」
半場、ターニャに押されるよう形で試着室へと入る。
試着室は出入り口にカーテンがあり、前には鏡が置いてある。
カーテンを閉めると、渡されたオフショルダーを見つめる。
着替え終え、鏡で自分を見てみる。
墨のように黒いオフショルダーと、スカートを着た私。
やっぱり、恥ずかしいな。
それに、肩がスースーする。
イリシャが試着室へ入った後、ターニャはまたしても服を持ってきて、ティナに差し出す。
「そんで、ティナにはこれを着て欲しいニャ!」
「け、けど……これって」
「お願いニャ♪」
ターニャは手招きの決めポーズをしてお願いする。
相手が男性なら、間違いなくイチコロだろう。
「わ、分かりました……」
ティナはしぶしぶ隣の試着室へと、足を踏み入れる。
すれ違うようにイリシャが、カーテンを開けて試着室から出てくる。
試着室を出ると、ターニャが待ってましたと言わんばかりに、期待の眼差しを向けてくる。
「あれ、ティナは?」
「お着替えニャ。……やっぱりニャ。この時をどれ程待ちわびた事ニャんか……!」
「た、ターニャ?」
「ターニャの思ってた通り、スッゴく似合ってて可愛いニャ! そんで、ちょっぴりセクシーニャ!」
ターニャはやたらと興奮気味に、こちらをじ~っと見つめてくる。
「そ、そう? なら良いんだけど……」
恥ずかしさの余り、モジモジしながらターニャから目線を反らすように、床を見る。
さすがの私も、ここまで褒められると照れてしまう。
そうこうしていると、ティナが試着室から姿を現す。
「お、お待たせしました」
「あっ、ティナ」
そう反射的に言う。
だが、ティナの姿を見ると、何も考えられなくなる程に見惚れてしまう。
ふと、ターニャを見るが、どうやら私と同じようだ。