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6 復讐に燃える乙女

ニヤリといかにも悪役そうな笑みを浮かべるアーレスの登場に、困惑しつつある。


「アーレス……!」


すると、アーレスに続いて純白な神官服を着こなしている、ミレスティーヌが現れる。


「役立たずの癖に生意気ですね」

「悪かったわね」


そのセリフを何度聞いた事かと、呆れながら答えた。

ミレスティーヌは私に、わざとらしく豊満な胸を見せ付けるように押し寄せる。


「うぐぐっ」


これは彼女なりのひやかしだろう。

本来なら喜んでじっくりと眺めていたい所だが、場合が違う。

とても屈辱的な気分だ、極めて許せない。

その乳、揉みちぎってやろうかと、込み上げてくる怒りを抑える。


そうこうしていると、ティナが耳元で囁くように訪ねてくる。


「……っあ、あの、この人達はお知り合いですか?」

「うん。……一応、そういう事になると思う」


そう余裕の表情をしているミレスティーヌに、敵視を向けながら答えた。

アーレスは手を腰に当てて、偉そうに言ってくる。


「その様子だとうまくいってないようだな。所詮はお絵描きしかろくに出来ない、役立たずだからな」

「決めつけないで。デタラメな事言わないでよ」

「そう向きになるなって、図星なんだろ? ……ミレスティーヌ、換金してこい」


そうアーレスはさりげなく、ミレスティーヌをパシりにする。


すると、ミレスティーヌは去り際にこちらを見て微笑んでから、受付へ向かう。

腐ってもミレスティーヌは美女、それだけは紛れもない事実。

敵とはいえ、そんな彼女に微笑まれては、悔しいが可愛いと思ってしまう。

俗にいう、あざとかわいいというヤツだろうか。


そんな事を考えていると、アーレスがティナに目を付ける。


「ところで、そこの女。なかなか良い顔してんじゃねぇか」

「やめて、ティナに手は出さないで」

「ほう、ティナと言うのか、気に入った。こんな役立たずと一緒だと苦労するだろ? 俺のパーティに入れ」


唐突なアーレスの無茶振りに、ティナは困った顔をして、助けを求めるようにこちらを見る。


「……い、イリシャさん……!」

「大丈夫、私が付いてるから。……アーレス、これ以上しつこくするなら衛兵を呼ぶわよ!」


私の言葉に、アーレスはバツが悪そうな顔をする。

その時、タイミングを見計らったかのようにターニャが間に入る。


「ハイハイ、揉め事はやめるニャ~!」


用事を終えてミレスティーヌが戻ってくると、逃げるようにアーレスは背を向ける。


「まぁ、いい今日はこのくらいにしておいてやる」

「では、また」


ミレスティーヌは振り向き際に、ニコニコしながら手を振る。

厄介者の二人が、冒険者ギルドから出た後、思っていた事を大声でぶちまける。


「もう来んな!」


続いてターニャが、ため息混じりに呟く。


「とんだ災難ニャ」


アーレス達への怒りと悔しさに、力強く握っている手が震える。

それらの感情は、やがて何とかしてアイツらを見返してやりたい、という気持ちに変わる。

そう、今の私は復讐に燃える乙女なのだ!


みかねたティナが、心配そうに声をかける。


「あ、あの……イリシャさん?」


もう我慢ならずに、私は吹っ切れる。


「もう頭にきた! 絶対に見返してやるんだから!」


冒険者ギルドに私の怒声が響き渡ると、シンと静まりかえる。

ティナは突然の怒声に、ビクッと驚いた。

ターニャは尻尾をクネクネさせ、ワクワクしている。


「それは良いとして、どうやって見返すつもりニャ?」

「ドラゴンを倒す! そんで、アイツらをぎゃふんと言わせてやるんだから!」


私の心は復讐の気持ちで燃え上がっており、とどまることを知らない。

てっきり「無理ニャ」っと、否定されると思っていたが、ターニャはノリノリのようだ。


「よく言ったニャ! そうとなれば、ターニャも手伝うニャ!」

「ありがとう、ターニャ。……今に見てなさいよ、いつか絶対に……!」


そう熱く燃え上がる二人の乙女を前に、ティナは終始、付いていけないようで「……は、はぁ」と声を漏らす。

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