5 依頼達成と報酬!
冒険者ギルドの隣にある、解体場にティナと一緒に足を運ぶ。
中は厨房のような感じで、エプロンを纏った五人が、大きな包丁で魔物を解体している。
ここにはゴブリンの耳を確認してもらうためにやって来た。
丁度、目の前で魔物の解体を終えた、髭の濃いおじさんに声をかける。
「こんにちは~。魔物の確認、お願いします」
「……こ、こんにちは」
おじさんはこちらを見ると、近くのテーブルを指差す。
「はいよ、そこに置いといてくれ」
言われた通りに、テーブルの上に背負っていたバックを置く。
「……よいしょっと」
「ありがとさんよ」
おじさんは額を垂れる汗を、首に巻いているタオルで拭う。
彼はまんまるな体格であり、筋肉がムキムキなので、つい熊を連想してしまう。
そんな事を考えていると、おじさんはバックを開けて、中身の血生臭いゴブリンの耳を取り出す。
ざっとそれらを見ると、紙とペンを取り出して文字を書く。
「ゴブリンの耳が九つだな。はいよ、証明書だ」
「ありがとうございます」
そう礼を言って、おじさんから先程の紙を受け取る。
解体場から出ると、ティナが知りたそうに聞いてくる。
「あ、あの……証明書って何なんですか?」
「ちゃんと魔物を討伐しましたっていう証かな。ちなみに、薬草とかなら受付で対応できるけど、魔物の死骸は解体場じゃないと駄目なんだよ」
「そ、そうなんですか」
冒険者ギルドに戻ると、出払っているのか冒険者の数が少ない。
本来、今の時間帯はお昼過ぎのため、帰ってきた冒険者で賑わっているはずだ。
疑問に思いつつも、ふと受付にいるターニャを見る。
すると、何故かターニャはヘトヘトになっており、疲れているようだ。
いつもは元気いっぱいなのに、珍しいなと思いながら声をかける。
「ただいま」
「……た、ただいまです」
「お帰りニャ~」
ターニャは元気のない声で返事をした。
「思ったより早かったニャンね。成果はどうだったニャ?」
「はい、これ。……っあ、あとこれもお願いね」
そうターニャに証明書と、薬草を渡す。
実は、運が良い事に帰り道で薬草を見つけたのだ。
薬草は依頼を受けていなくても、買い取って貰うことができる。
だが、買い取り価格は依頼に比べると少額だ。
証明書を見ていると、ターニャの顔色が明るくなっていき、元気が戻る。
「ニャニャ、ゴブリンを九体も倒したニャンか!? 凄いニャ!」
「そうでしょ、ティナがぱぱっと倒しちゃったの!」
「……ん? イリシャは倒してニャいの?」
ターニャの問いに、自信を持って誇らしげに答える。
「ふふん、聞いて驚かないでね。何と、ゴブリンを一体倒したのよ!」
「……凄いニャ! やっと魔物を倒せたニャんね、大成長ニャ!」
ターニャは自分の事のように喜んでくれた。
今更だけど、数年間に渡って冒険者をやってきたが、今回倒したゴブリンが初めて討伐した獲物だった。
先程は、欲をかいて一匹だけかと嘆いていたが、実はとんでもない大戦果だったのだ!
調子に乗った私は、腕を組んでティナを見る。
「うんうん、これもティナのおかげよ」
「い、いえ、私は何も……!」
ティナは謙遜するが、顔は正直なようで嬉しそうだ。
ターニャはどこからともなく硬貨を取り出し、目の前のカウンターテーブルに置く。
「じゃ、これが討伐報酬ニャ。それと、こっちが薬草の報酬ニャ」
硬貨の数は銀貨二枚だった。
予想していたよりも多い金額だったため、思わず目を疑ってしまう。
「銀貨二枚……!」
「や、やりましたね……!」
「うん、これで何とか今日は野宿せずに済んだね! これも全部、ティナが一緒にいてくれたからよ、本当にありがとうね!」
高揚した喜びが押さえられず、我慢できずにティナに抱きつく。
「ちょ、ちょっと、抱き付かないでください。……ほ、他の人も居ますし、は、恥ずかしいです……!」
と言うものの、ティナは抵抗しなかった。
「目の保養になるニャ~♪」
ターニャは肘をカウンターテーブルに付き、両手に顎を乗せて、気持ち良さそうに微笑んでいる。
そんな時だった。
ある一人の最低なクソ野郎が、心地よい雰囲気をぶち壊す。
「おやおや、こんな所にいたのか。お子ちゃま」