3 獣耳受付嬢
大広間にまんべんなく並べられている、テーブルと椅子。
そして、朝だというのに多くの人々で賑わっている。
彼らは年齢を問わず、若い少女もいれば、歳を取った顔にシワがある老人までいる。
「ここが、冒険者ギルド……」
ティナはさりげなく私の袖を掴んでおり、キョロキョロと辺りを見渡している。
「どう、初めて来た感想は?」
「……に、賑やかですね」
「これでも少ない方かな。夜になればもっと騒がしくなるわ」
とは言ったものの、心なしか普段より人が多い気がする。
けれど、こんな日もあるんだなあっと、あまり気には留めなかった。
一時は性悪女達がいたらどうしようかと不安だったが、その必要はなさそうだ。
そう思いつつ、受付のカウンターに向かう。
すると、ギルドの制服を着こなしている、ショートヘアーの茶髪である少女が声を掛けてくる。
「おっはよニャ~、今日は何の用ニャ? ……って、隣の可愛い子は誰ニャんか!?」
猫耳をピョコピョコさせ、可愛い八重歯が性癖に突き刺さる彼女は、ターニャ。
ギルドの受付嬢で人懐っこい性格と、可愛らしい容姿のためか、冒険者からの人気が高い。
「触るニャ~!」
そうターニャは怒ったが、顔は嘘が付けないようで、笑みを堪えていた。
ターニャとの付き合いは長い、なので耳を触られると気持ち良いという事はお見通した。
「おはよう、ターニャ。この子はティナ、恥ずかしがり屋さんだけど、よろしくね」
「そ、そうニャんだ~。私はターニャ、よろしくニャ♪」
ターニャがニッコリと微笑んだ。
営業スマイルなのか、素なのかはよく分からないが、おそらく後者だろう。
ティナは慌ててペコッとお辞儀をする。
「よ、よろしく……お願いします……!」
そういえばと、ティナが冒険者登録をしていない事に気付く。
冒険者ギルドで依頼を受けるには、冒険者登録が必要不可欠なのだ。
「今日は依頼を受けに来たの。それと、ティナの冒険者登録がまだだから、お願いしていいかな?」
「もちろんニャ♪」
「じゃあ、私は依頼を見てくるね」
そう立ち去ろうとすると、ティナは慌てて声を漏らす。
「あっ、えぇ……!」
困惑してこちらを見ているティナを置いて、依頼の掲げられている掲示板へと足を運ぶ。
ティナの困っている姿は可愛かった。
……が、それと同時にいきなり置き去りにしてしまった事に少しばかり罪悪感を感じる。
そんな事を考えていると、掲示板の元へたどり着く。
掲げられている依頼の用紙を背伸びして眺めては、はぁっとため息を吐く。
「やっぱりそうだよね。まあ、分かってはいたけど」
そうゴブリン退治の依頼を手に取る。
薬草採取は人気なため残って無いだろうと思っていたが、それでも期待していたため落胆している。
ティナとターニャの元に戻るが、何やら楽しそうに話している。
「そっちは終ったの?」
「そうニャ、おかげで私はお腹いっぱいだニャ♪」
意味はよく分からないが、ターニャはやたらと上機嫌のようだ。
証拠として、彼女は自慢の尻尾を大きくゆっくりと振っている。
「そんで、何の依頼にしたニャ?」
「ゴブリン討伐よ」
「いつもは薬草採取ニャのに、珍しいニャ。……ちゃんと討伐出来そうニャんか?」
「うん。私だけならともかく、今はティナもいるからね」
そうティナに視線を向けると、待ってましたと言わんばかりに両手を胸の前に出しす。
「は、はい……! 私に任せてください」
「それじゃ、記念すべき私達の初依頼! 張り切って行こう」
「お、おぉぉぉう……!」
手を握り、勢いよく天井へ向ける。
隣ではティナも手を挙げており、それを見守るようにターニャが見ている。