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プロローグ

 僕がまだ小学生の頃、クラスで1人だけ眼鏡をかけている。ただそれだけの理由で虐められていたことがある。


 小学生っていうのは、こういうしょうもない理由で他人を攻撃したがる。

 僕だって好きで眼鏡をかけているわけじゃないのに、クラスの皆から無視されたりする。


 酷い人になると「眼鏡かけてるとか、お前は変だ!」そういう言葉を浴びせてきたりした。

 そんなことを言われ続け、小学2年生に上がる頃には僕は学校に行けなくなっていたた。


 真っ暗な部屋で1人、電気もつけずベットの上で四六時中泣いている生活を送っていた。

 そんな時、唯一味方になってくれたのは僕の父や母でも無く、幼稚園から付き合っていた2人の幼馴染だった。


 名前は清水奏多と蒼井光里。どちらも僕にとってはかけがえのない親友だった。

 一切外にも出れなくなった僕に、奏多は時々だけど話をしに来てくれるし、光里は毎日励ましに来てくれた。


「ねぇハル? 大丈夫? まだ来れそうにない?」

「多分、僕はもう学校には行けないと思う。ねぇ光里ちゃん。僕のなにがいけないの? お父さんもお母さんも学校に行けっていうばっかりで僕の気持ちなんて分かってくれないし……」

「ハルは悪くないよ? あの子達がおかしいんだもん!」


 この時の僕は、他の皆と違うところは眼鏡をかけている。ただそれだけだったのに、それだけの理由で皆から色々言われて無視もされていた。


 光里や奏多は僕と違うクラスだったから、このことを知ったのは僕が学校に通えなくなってからだった。

 気付けなかったという罪悪感もあってか、光里は毎日僕の家に来ては勉強を教えてくれたり、僕の悩みを真剣に聞いてくれた。


 幼稚園から一緒だったけれど、この時の僕は少しづつ光里に対する思いがただの幼馴染に向けるような感情ではないことに気付き始めていた。

 そんな生活が一年とちょっと続いて3年生に上がった6月。


 僕は、光里が毎日来てくれることにちょっぴり嬉しさを感じるようになっていた。

 だけど、今日は光里の様子がいつもとは違って、より一層真剣な表情をしていた。


 なんとなく嫌な予感を覚えつつ、光里が話し始めた内容で、その嫌な予感が的中してしまったことを知った。


「ねぇハル? 1回だけでも学校来てみない?」

「無理だよ。またあんなこと言われたりするのは嫌だ……」

「でも、ハルのこと無視してたりしてた子は、皆奏多と同じクラスになったからハルとは違うクラスになったよ?」

「そんなこと言われても……」


 奏多があの子達と同じクラスなんかになったら、なにか問題を起こしそうだと少しだけ不安になる。


 だけど、そんなことより今は目の前のことだ。

 たとえ違うクラスになったとしても、小学校にいれば必ずどこかでは顔を合わせないと行けない。

 その度にまた眼鏡のことを言われるなんて嫌だ。また言われると、もう二度とあそこには戻れないような気さえしてしまう。


 この時の僕は、信用できるのは幼馴染の2人だけだと完全に心を閉ざしてしまっていた。

 それは高校生になった今でも変わってはいない。

 どちらかといえば自分で考えられる力が小学生の時と比べると飛躍的に上がったから、今の方が酷いとも言える。


「悪い人なんてそんなのこっちから無視しちゃえばいいじゃん! 今年は私達同じクラスだから、辛くなったら私に言ってくれればいいし!」

「でも、僕に味方なんてしたら光里ちゃんまであの子になにかされちゃうかも知れないよ?」

「そんなことどうだっていい! 私が1番大事なのはハルだからそんなこと気にしないもん!」


 唯一信用していた幼馴染、しかも少し気になり始めていた子にそんなことを言われて泣かない人はいないだろう。

 僕はその時、情けないと思いながらも泣いてしまった。


 そして、その日から1ヶ月程が経つと少しづつではあるけれど学校に通えるようになった。

 最初の方は真っ先に教室に行くのでは無く、保健室に登校してプリントを淡々とするようなことを繰り返していた。


 そんな僕も、4年生に上がる頃には完全に教室に上がれるようにまで回復していた。

 もちろん、僕1人の力じゃなく光里や奏多の助けがあったからだ。

 今思えば、これが僕達の関係を変えた一番の原因だった。


 光里を好きだと自覚したのもこの頃だし、光里に少しでも凄いと思ってもらえるように勉強も人一倍努力した。


 中学に上がる頃には、奏多も僕と同じように眼鏡をかけて登校するようになった。

 だいぶ後になってから光里から聞いた話だけど、僕が中学でも虐められないようにする為の配慮だったらしい。


 だけどこの時の僕はそんなこと全く気付かず、似合ってない奏多の眼鏡をずっと変だと思っていた。

 光里はそんな僕達を見て微笑ましそうに笑う。そんな普通の日常が僕にとっての一番の幸せだった。

 だけど今思えば、僕が光里のことをただの幼馴染として見られなくなったあの日から、全ては始まったんだ。

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