60話:兄との口論と母の引き取り
もちろん今迄も給料も払っていたし、今回の退職にあたっても退職金を払う
と言った。給料っていくらと聞くと年間120万円で景気が良ければボーナス
も出す契約になっていると言うと、この所120万円、退職金はと聞くと
360万円と言った。それを聞いて夢子は笑いながら、高校生のアルバイトで
さえ時給1000円が最低よ。つまり、8時間労働で8千円、25日で20万円
、高校生のアルバイトの半額、信じられないと言った。
退職金360万円出すよと言うと、ふざけないでよ、でも契約で、そうなってる
と言うと、そんな不平等な契約、いつ誰がしたの聞くと1960年に十津川興業と
母の契約だと言った。50年前の契約が、そのまま、50年間で物価はどれだけ
上がったと思ってるのいうと、難しいことは知らないが契約は守っていると言った。
これを聞いていた芝山伸吾が、さすが十津川興業の敏腕社長、経営者は頭が良いね
と誉めたかと思うと本当にこれで良いと思ってるのかと聞くと、わからないと言った。
でも、今迄の治療費も病院の入院費も出したと言った時、堪忍袋の緒が切れて
、馬鹿野郎、こんな、はした金なんかいらない。とっとと消え失せろと、言った。
十津川護が、あわてて、これから今後の生活費の話がと言うので、そんな、
ごうつくばりで。情けのない息子なんか期待してねーよと啖呵を切った。すると、
母の十津川麗がごめんね、芸のこと以外、何も教えてこなかった私達が悪いんだと
涙を流して謝った。それを見て夢子が何て情けないのと泣き出して、みんな出て
行ってよと病室から出るように言うと十津川興業の3人が、すごすごと出て行った。
その後、2日入院して退院となり新幹線で夢子が母の十津川麗を和光市の家に
連れ帰った。投薬された薬を飲み続けて、薬が終わると近くの内科開業医さんに
行き、入院して診断を受けた内容を夢子が説明して、同じ薬を投薬してもらった。
そして、暖かい日射しの良い日は、夢子と一緒に荒川河川敷の公園を散歩して
汗をかくようにして、徐々にメニエールのめまいが収まってきた。
病状が悪くなるときのサインとして耳鳴りが起こることがわかった。その後、
和光市に地下かくみ上げた黒湯の天然温泉が車で5分の所にあり回数券を買って
毎週2回ずつ、行くようになり、幾分顔色も良くなって、耳鳴りが少なくなって
来たようで3月を迎える頃には顔に赤味刺さすようになった。
風呂に行かない日は河川敷で一番暖かい14時前後に散歩に夢子と出かけ散歩
するのが日課となった。4月になると内科の医者が3月に耳鳴りが出ましたかと
聞かれなかったというと順調に回復していると喜んでくれた。そこで夢子が暖かい
海外の旅行は大丈夫でしょうかと聞くとめまいがなくなれば構いませんよと言い、
汗かいて体温を下げないことが一番大事なことだと説明してくれた。