36話:福島第一原発のメルトダウン
2011年3月11日の東北地方太平洋沖地震発生当時、福島第一原子力発電所
では1から3号機が運転中で、4から6号機は定期検査中だった。1から3号機の
各原子炉は地震で自動停止。地震による停電で外部電源を失ったが、非常用
ディーゼル発電機が起動した。ところが地震の約50分後、遡上高14から15m
の津波が発電所を襲い、地下に設置されていた非常用ディーゼル発電機が海水
に浸かって機能喪失。さらに電気設備、ポンプ、燃料タンク、非常用バッテリー
など多数の設備が損傷し、または流出で失ったため、全電源喪失に陥った。
このため、ポンプを稼働できなくなり原子炉内部や核燃料プールへの注水が
不可能となり核燃料の冷却ができなくなった。核燃料は運転停止後も膨大な崩壊熱
を発するため、注水し続けなければ原子炉内が空焚きとなり核燃料が自らの熱で
溶け出す。実際、1から3号機ともに核燃料収納被覆管の溶融によって核燃料
ペレットが原子炉圧力容器の底に落ちる炉心溶融・メルトダウンが起き、
溶融した燃料集合体の高熱で、圧力容器の底に穴が開いたか、または制御棒挿入部
の穴およびシールが溶解損傷して隙間ができたことで、溶融燃料の一部が圧力容器
の外側にある原子炉格納容器に漏れ出した。
また、燃料の高熱そのものや格納容器内の水蒸気や水素などによる圧力の急上昇
などが原因となり一部の原子炉では格納容器の一部が損傷に至ったとみられ、
うち1号機は圧力容器の配管部が損傷したとみられている。また、1から3号機
ともメルトダウンの影響で水素が大量発生し、原子炉建屋、タービン建屋各内部
に水素ガスが充満。1・3・4号機はガス爆発を起こして原子炉建屋、タービン建屋
および周辺施設が大破した。4号機は定期検査中だったが、3号機から給電停止と
共に開放状態であった、非常用ガス処理系配管を通じて充満した可能性が高い。
格納容器内の圧力を下げるために行われた排気操作・ベントや、水素爆発、
格納容器の破損、配管の繋ぎ目からの蒸気漏れ、冷却水漏れなどにより、大気中
・土壌・海洋・地下水へ、大量の放射性物質が放出された。複数の原子炉・1から
3号機が連鎖的に炉心溶融、複数の原子炉建屋・1、3、4号機のオペレーション
フロアで水素爆発が発生し、大量に放射性物質を放出するという、史上例を
見ない大規模な原発事故となった。
日本国政府は、福島第一原発から半径 20km圏内を警戒区域、20km以遠
の放射線量の高い地域を「計画的避難区域」として避難対象地域に指定し、
10万人以上の住民が避難した。2012年4月以降、放射線量に応じて避難指示
解除準備区域・居住制限区域・帰還困難区域に再編され、帰還困難区域では立ち入り
が原則禁止されている。2014年4月以降、一部地域で徐々に避難指示が解除
されているが、帰還困難区域での解除は、事故発生から10年後の2021年以降
となる見通しである。