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君は世界を救ったことがあるか?  作者: 加藤 小判
ビア島〜始まりの島〜
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《五話》チュートリアル2

「戦闘がどのようにして始まるのか。まずはそこからお話しましょう。」


彼らは客室にいた。少し大きめの机を囲み、ふかふかのソファーに座っていた。

こんな場所で戦闘の説明をするのか。イサムらの頭には疑問符が浮かんでいた。


「これは子ども達に教える内容と一緒なんですがね……『敵意』を持って相手を『攻撃』した、又は受けた時、双方は『戦闘場』に移動するんです。


それが人間であっても、亜人であっても、モンスターであってもです。」


「それは、つまり戦闘する場所は関係ない、ということですか。」

ユーリは尋ねる。なるほど、こんな場所であるのはそういうことなのか。イサムは納得する。


「そうです。今、私とあなた方が戦うとすると、この客室に限りなく近い空間に移動します。しかし、そこはこの客室ではない。


私たちは、戦闘場と区別するため、今ここにいる空間を『現実界』と呼んでいます。


……ややこしいでしょう。ひとまず、実戦と行きませんか。」

兵士は手帳を手に取り、その中から四人分の装備を取り出す。


「これをあなた方の手帳に入れてください。……ああそこじゃないです。その、違うページ……そこですそこ。その『装備』と書かれたところ……よし。オッケーです。


これで戦闘場に行けば、自動的にその装備品が身についているはずです。」

イサムたちは戸惑いながらも、兵士の指示に従う。


「それでは行きましょうか。……ハッ!」

兵士が彼らに切りかかる。その刃がイサムの体に当たる寸前、


チャラララチャラララ……

ネロ義賊団と戦った時と同じ音楽が流れる。それと同時に視界が歪み、ぐるぐると回り始める。


―――――――――――――――――――――――


「おお、似合っているじゃないですか。」

兵士が彼らに言う。イサムたちは顔を見合わせる。


「ふふっ。」

思わずユーリが吹き出す。

皆、身に付けているものが変わっている。先程、兵士が用意した装備を本当に着ているのだ。


イサムは軽く金色が混ざった軽鎧。兜は無く、武器は大きな両手剣。元いた世界では、筋肉隆々の人間がようやっと持ち上げられるような代物のはずだが、恐ろしく軽い。これも戦闘場の力なのだろう。


モリーは銀色の、ゴテゴテとした重鎧。頭から爪先まで全く隙が無く、かなり動きにくそうに思える。しかし、その姿からは予想も出来ないほど軽い。武器は持たず、代わりに自分よりも大きい盾を持っている。


ユーリは大きなとんがり帽子を被り、黒のローブが体を覆っている。右手に、先の丸まった杖を持ち、ステレオタイプな魔女といった感じだ。


アツシは袈裟を身にまとい、下駄を履いている。更に左手に数珠を持っているので、仏教徒そのものである。

しかし、彼は結構な長身であるため、和らいだ印象は無く、むしろ威圧的に見える。


「なあ。俺の装備、ちょっとおかしいだろう。」

アツシは呆れたように言う。三人は目を背け、ノーコメントを貫く。


「私は好きですけどねぇ。まあいいや。この空間について説明しましょう。


まず戦闘場の広さですが、これは場合によります。私が経験した最も大きい戦闘場は、一つの小島くらいありました。

なにしろ五百人と五百人の戦いでしたから……」


「そんなに大人数で戦うなんてことが有り得るのか。」

モリーは驚く。通常、この手のゲームでは有り得ないからだ。


「ええ勿論。アシラ大陸での戦争でしたからね……


話が逸れましたね。次に、そこにある扉です。扉を出ることによって、戦闘場から離脱することができます。しかし、稀に例外もあって、出られないこともあるんです。その条件は私には分からないのですが。


また、戦闘場から強制離脱する場合があります。どちらか一方が全員気絶する、又は……死んでしまったりすると、強制離脱です。」


「ちょっと待ってくれ。……死ぬなんてことがあるのか?」

アツシは声を詰まらせる。


「勿論ですよ。これは戦いなんですから……


しかし、余程激しい戦いでない限り、またさっき言った例外を除けば、そんな事は無いです。『魔力壁』もありますしね。」


「魔力壁?なんなのそれ。」

ユーリが尋ねる。


「皆さんの体を守る、オーラのようなものです。俗に、『HP』などと呼ばれています。これがある限り、生身にダメージは受けません。


ネロ義賊団との戦いでは、攻撃を受けなかったのですか?」


イサムは思い返す。

……その場面はあった。確かに、僕の体は銃弾を受けたはずだった。しかし、それは身体に触れることはなく、パキッという音を発して消えてしまった。


あれは、魔力壁にヒビが入った音。HPが削られた音だったのか。


「ありました。あれは、そういうことだったんですね。」


「納得して頂けましたか。とにかく、HPが残っているのなら、痛みもほとんど無いのです。


逆に言えば、HPが無くなってしまえば負けたも同然です。すぐに離脱することをお勧めします。特に、ユーリさんやアツシさんの装備では、体を守る術がありませんからね。


だからといって、イサムさんやモリーさんがHP無しで戦える訳でもありません。あくまで、その鎧は『HPを増やすためのアクセサリー』と考えて頂いた方が良いかと。」


「なるほどな。大体は理解したよ。」

モリーはうんうんと首を縦に振る。


「しかし習うより慣れろです。それでは、軽く手合わせと行きましょう。構えてください……」

兵士が彼らと距離をとる。


四人も隊列を組む。イサムとモリーが前衛、ユーリとアツシが後衛を務める。


兵士が振り向く。

「行きますよ。」



―――――――――――――――――――――――



彼は猛っていた。

しばらく戦いから離れていた身。『勇者』という、伝説の称号を持つ男との戦いに血が騒ぐ。現役の傭兵時代、『百人斬り』の異名を持っていた彼は、目の前にいる四人に対して、欲望を抑えきれなかった。


……いかん。手加減出来そうにないな。怪我をさせてしまったらすまない…


興奮で震える手で剣を握りしめた。無意識に足が彼らの方へ向かってしまう。


……ダメだダメだッ。ネロ義賊団の下っ端を倒したとて、彼らは素人。手加減だ……


彼は、我慢が出来なかった。全力で彼らに切りかかる。


刃がイサムの頭をはねる0.1秒前。彼の意識はそこで途絶えている。


「おーい兵士さん。大丈夫?」


彼は少女の声で目を覚ました。

読んで下さり、ありがとうございます!

物語はいつ進むんですかね。

これからもよろしくお願いします!

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