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君は世界を救ったことがあるか?  作者: 加藤 小判
ビア島〜始まりの島〜
8/19

《四話》イデアとサイコ

彼らはそこで、王による説明を受けていた。


「サイコの話だね。そう、あれは40年前……正確には41年前だな。突然サイコと名乗る人物がこの世界――イデアに現れた。


そして、彼は『違う世界から来た。』と言った。だから兵士たちは君を疑ったんだ……


彼はとてつもない力の持ち主だった。武王Lv.5(レベルファイブ)、守護王Lv.5、魔術王Lv.5、回復王Lv.5……聞くだけで恐ろしいだろう?」

王は苦笑いしながら彼らに尋ねる。


「えっと、何なんですか。その何とか王っていうのは。」

ユーリが聞き返す。


「ああ、そうか。君たちは何も知らないんだったね。それでは基本的な説明からした方が良いのかな。


今言ったものは『称号』と呼ばれる、その人の能力を指すものだ。

これは『手帳』に書いてあることなんだが、君たちは手帳も持っていないのかな。」

王は服のポケットの中を探すよう促す。イサムらがガサゴソと探すと、小さな手帳を見つけることが出来た。


「うん、それだよ。ええとイサム君は……なんだって?勇者Lv.1だと?」

王は驚きの声をあげる。


「これは凄いぞ!ええと、残りの三人は、


モリー君が守護者Lv.1


ユーリ君が魔女Lv.1


アツシ君が癒術師Lv.1か!

良い称号だ。素晴らしい。君たちなら、もしかしたらサイコに勝てるかもしれないぞ!」

その言葉に四人がきょとんとした顔をする。


「あ、いや……すまない。変なことを言ってしまって。


……説明を続けよう。その『手帳』はこの世界において、最も重要なものの一つと言えるだろう。消耗品から装備品まで、様々なアイテムがその手帳の中に入れられる。


少し、やってみようか。」


王は自らの手帳を取り出し、右手に持った。そして、左手に持っている杖に向かって何やら念じると、するすると杖が手帳に吸い込まれる。


ほら、と王が手帳を見せると、そこには『王の杖』の文字だけが記載されていた。


「便利なものだろう。もう一度念じると……こんな具合に、杖が手帳から出てくる。どれだけの荷物があっても、この魔法の入れ物なら大丈夫だ。


つまり、手帳は自分の身分証明にも、荷物入れにもなる。他にも、君たちの年齢や性別、ステータス――称号とは別の、君たちの強さを表すものだ――といったものも記載してある。まあ、細かいことは後で見てみるといい。」


王が一つ、咳払いをする。


「あと、戦闘場について教えたいのだが、君たちはネロ義賊団を倒したんだ。後々、兵士に実戦形式で教えてもらった方が良いかな。」

王は護衛の兵士に目をやる。彼は軽く頭を下げ、分かりました、との意志を伝える。


「うん。これくらいで良いだろう。習うより慣れろと言うしな。


さてと、サイコの説明に戻ろうか。


彼は二つ災厄をもたらした。一つは彼自身だ。その力で暴虐の限りを尽くしているそうだ。儂らの国『イスファン』には、それほど大きな影響が来ていないが、サイコがいる『アシラ大陸』はまさに地獄絵図らしい。


もう一つは、モンスターの存在だ。これは大きく『イスファン』にも影響を与えている……」

王は苦々しげに吐き捨てた。


「モンスター?サイコと関係があるのですか。」

イサムは尋ねる。


「もちろんだ。彼が来るまでは、イデアにあの忌々しい生き物はいなかった。彼は力を使ってモンスターを生み出し、それを世界中にばらまいた。


イスファンは『ビア島』という島にあるのだが、ビアにも奴らが溢れている。それから国を守るため、城と城下町を壁で囲っているのだが、一歩『ソト』に出れば命の保証は無い。」


王がもう一つ、咳払いをする。


「これがサイコという災厄だ。」


「えっと、それだけですか。」

ユーリが少し遠慮しながら尋ねる。


「すまない。イスファンは彼の影響をあまり受けていないが為に、彼自身の情報はあまり多くないんだ。」

王は目を伏せる。


「いえ、これだけ教えて下されば十分です。ありがとうございます。」

アツシが答える。


「これからもイデアで生きていく事になるかもしれないのだろう。サイコには本当に気をつけてくれよ……」

王は彼らをねぎらう。しかし、何か言いたそうな目をしている。


ほんの少し、沈黙が流れる。互いに本音を隠しているのだ。その空気を壊したのは、彼だった。




「な、なあ王様。さっき、オレたちがサイコに勝てるかもしれないって言ったよな。」

モリーがおずおずと尋ねる。すると、王の目が輝く。


「勿論そうだとも!いや、初対面の君たちに頼むのも何だがな…

き、君たちには力がある。ここに来てすぐネロ義賊団を倒したんだ。それを見込んでだ……さ、サイコをた、倒して欲しい。」

言いづらそうに王は言葉をひねり出す。


それに応えるように、

「みんな、オレはやりたい。何も良い事なんて無かったオレが、この世界でヒーローになれるかもしれないんだ。この王様も良い人だし、世界を救ってみたい。」

モリーは熱く語る。醜いその姿から、本物の情熱を絞り出す。


「僕は、良いと思う。どうせそのつもりでヒロクエを買ったんだ。」

イサムはすぐに同意した。続いて、アツシ、ユーリも賛成する。


「おお、君たち……ありがとう、ありがとう!君たちなら出来るはずなんだ。」

王は涙を流さんばかりの喜びようだ。


「それなら、少しイスファンでゆっくりしていくと良い。後で、兵士に渡させるものがある。儂からの、心ばかりのお礼だ。」


「ありがとうございます。お言葉に甘えさせてもらいます。」

イサムは答える。


「君たちはまさに『勇者』だ。期待しているぞ。」

王は四人それぞれと握手を交わす。冷たく、ゴツゴツとした手だった。



―――――――――――――――――――――――



王の間を出た。背後から、ギギィと扉の閉まる音がする。


「さてと、何から始めようかな。」

イサムがみんなに尋ねる。返ってきたのは、うーん、という煮え切らないものだけだった。


「その前に皆様。私が戦闘についてお話しましょう。」

先程の、護衛の兵士が手帳を片手にやってきた。

読んで下さり、ありがとうございます!

説明回、ということになるのですが、如何せん難しい。


これからもよろしくお願いします!

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