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君は世界を救ったことがあるか?  作者: 加藤 小判
ビア島〜始まりの島〜
7/19

《三話》お城にて

彼らは城門の前に立っていた。

酒場から城まではかなりの距離があり、キャラクターを動かすのと、実際に歩いてみるのでは大きな差があった。


しかし、近くで見るとその凄さが分かる。

精巧に造られた城門。この国を象徴するだけはある荘厳さだ。

目を上の方にやると、青空を抉り取る城の全体像が見える。細部にまで手が込んでおり、繊細かつ大胆。軽く青がかかった城壁は、宝石のように美しい。


……思わずため息が出る。


「素晴らしい城だよな。俺はこの国で城が一番好きなんだ。」

店長がにこやかに話す。


彼らが我を忘れて城に見入っていると、人がやってきた。


「あんたら何をしてるんだ。おっと……それはネロ義賊団かい?まさかあんたらがやっつけてくれたのか?」

その男が尋ねる。軽鎧を身につけているのを見ると、見回りの兵士らしい。


「ああ、俺じゃないんです。こちらの四人が倒してくれたんです。」

店長が誇らしげに答える。


「ほう!ご協力感謝するよ。それじゃあこっちに来てくれるかな。」


「俺は戻るよ。まだ店仕舞いには早いんでな。あとはよろしく頼んだぞ。」

店長は早歩きに戻って行った。四人は兵士の後に続き、城の隣の詰所へ向かう。小さな建物である。




「おうダンプ。見回りの交代はまだじゃなかったか。」

詰所の中の兵士が、彼らを連れてきた兵士に話しかける。


「聞いてくれよソル。ネロ義賊団をやっつけた一般市民の方を連れてきたんだ。」


「何だって?……変な格好をしてるんだな。あぁいや。気を悪くしないでくれ。ご協力感謝するよ。しかし凄いな……。」

ソルと呼ばれた兵士は、四人に対して不信を含んだ目を向ける。


「ところでこいつらはいつまで気絶してるんだ。……おい起きろ。起きろッ!」

ダンプはペチペチと、盗賊たちの頬を叩く。


「んん……あアッ!?俺ぁ何でこんなんなってんだ!ぐ、ぐぉぉ……」

縄で縛られ、身動きが取れないようだ。モゾモゾと体を動かそうとするが、意味がない。


「お前ら酒場『英雄の邂逅(ビギニング)』を襲おうとしただろう。それで、ここの四人がお前らをとっ捕まえたってわけだ。」

ダンプが説明する。


「ったくもう。俺はこいつらを奥に連れていくよ。ソル、この人達にお礼をお願いするよ。」

彼は盗賊に暴言をぶつけながら、詰所の奥に去った。処罰やら何やらがあるのだろう。あまり気にしないでおこう、イサムはそう思った。


「さてさて。もう一度言うが、協力ありがとう。君たちも知っているように、ネロ義賊団はここいらの脅威となる集団だ。恐らく奴らは下っ端だろうが、それでも実力はある。よくやってくれた。」

ソルは事務的な笑顔を四人に向ける。目の奥が笑っていない。彼らの能力を疑っているのではなく、素性に対して不信感を抱いているようだ。


「うん……君たちは妙な――いや、ここら辺にはいない格好をしているが、他所の国の人だろう?今どきそんなのは珍しいが。」


「えっと、僕らは違う世界から来たんです。」

イサムはおずおずと答える。しかし、


「なるほど。違う世界から……なんだと!?貴様らッ、何をしに来たッッ!!」

ソルが席を勢いよく立ち、剣を構える。……間合いだ。


「貴様ら変な動きをするんじゃないぞ!私は容赦はしないッ!」


「ちょっと待ってよ!私たちが何をしたって言うの!」

ユーリが悲鳴のような声をあげる。


「黙れ!貴様らヤツの手先だろう!」


「何をやっているんだソル……おい!何をしてるんだよ!」

ダンプが騒音に耐えかね、奥の扉から現れる。


「ダンプ!こいつらサイコの手先だッ!」

サイコ、という聞き慣れない名前にイサムたちは戸惑う。


「なに!?それじゃあそいつらは異世界から来たのか……」

ダンプも腰の剣に手をやる。どうやらサイコという存在も異世界の住人らしい。


「ちょっと待ってくれよ!俺たちは……」

アツシが両手を上げて、自分の境遇を話す。それに続いて残りの三人も(せき)を切ったように口々に喋り始める。




「……つまりサイコの手先ではないと。ハッ。何とでも言えるさ。」

ソルは依然疑いの目を向ける。


「だけどソル。本当にサイコと繋がっているんなら、最初に違う世界から来た、なんて言わないんじゃないか。俺は彼らを信じても良いと思うが。」

ダンプは警戒を解いたようだ。


「そもそもサイコってのは何なんだよ。」

アツシがため息混じりに尋ねる。それには安心と苛立ちが含まれていた。


「……ソル、どうする?」


「ああ。取り敢えず王の所へ連れて行こう。俺らが説明するもんじゃないし、こいつらの疑いが晴れた訳じゃないからな。」

彼らはダンプを先頭に、ソルを一番後ろにした列で城内へ入る。

四人の緊張は、彼らが城の豪華な装飾を見ることすら妨げた。



―――――――――――――――――――――――



王の間。その扉の前に来た。


「後は頼みます。俺らは見回りに戻りますんで。」

ソルとダンプは、そこにいた兵士に事情を話す。王の間を護衛しているだけあって、この二人とはオーラというものが全く違う。


「こっちだ。」

兵士は静かに彼らを促し、扉をゆっくりと開く。ギギィ、と古くいかめしい音がし、王が彼らの前に現れる。


スタスタと四人は王の元へ歩いて行き、兵士に言われるがままに跪いた。


「面を上げてくれ……」

王が唸るように言う。イサム達はその通りにした。


その顔には真っ白な髭が蓄えられ、無数の皺の奥から異質なほどに澄んだ青の瞳が覗いている。純白の髪は長く、肩につく程なので、表情が分かりづらい。しかし、その厳格な雰囲気だけは嫌でも分からされる。


ほんの少し、沈黙が流れた。気まずい、嫌な沈黙だった。

だが、


「ほう。君たちがネロ義賊団を倒してくれたんだね。どこから来たかはおいといて、お礼を言わなくてはね。」

白と皺の仮面の下からでも分かるほど、王は顔を綻ばせた。その姿とは違い、フランクな王のようだ。


「あの、えっと、どういたしまして。」

挙動不審になりながらイサムは答える。


「ははは。面白い人たちじゃないか。サイコの手先だなんてそれこそジョークだろう。」

にこやかな目を四人に向ける。一気に緊張が解け、体の強ばりがふっと無くなった。


「それじゃあ儂に、君たちの口で、事情を話してくれないか。」


「あの、はい。僕らは、……」

先程兵士に話したのと同じ要領で説明する。


「……ふぅむ。なるほどなあ。つまり、君たちからしたらここはその、『ゲーム』の世界と言うのだな。なるほどなるほど……」

王は一人言のように呟きながら、頭の中で整理する。


「そして、何も知らずにここへ来たのか。それは困っただろうに、サイコやら何やら分からなかったはずだ。」


「もう、本当にそうなんすよ!」

モリーが安心したのか、突然大きな声で同意する。余程緊張していたのだろう。さっきまでほとんど話していなかったのに。


「ははは。それはすまなかったね……」


「あの、サイコについて説明して頂けませんか。」

アツシがおずおずと尋ねる。


「ああ、それはそうだな。説明しようじゃないか。

どこから言おうか。そう、あれは……」

お読み下さり、ありがとうございます!

ファンタジーの描写というものは難しいですね。完成された構想が無いと出来ないということを痛感しました。次からも頑張っていきます!


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