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君は世界を救ったことがあるか?  作者: 加藤 小判
ビア島〜始まりの島〜
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《十二話》魔力と魔法、そして船出

「魔王か。とんでもないことになっちまったな。」

アツシはあっけらかんと言う。


「ああ。でも、これこそ異世界転移の醍醐味だろう。やってやろうじゃないか。」

モリーが揚々と答える。素顔や体型が隠れているため、まるで好青年に見える。



城を出た。相変わらずこの城は大きい。その存在感が彼らの背中を押す。


城下町を歩く。長い道のりがより一層長く感じる。




ここでふと気づく。


「カブールはどこに行ったんだろ。魔法を教えてくれるって約束なのに。」

ユーリが皆に尋ねる。


そうだ。収納魔法とやらを教えてくれるんじゃないのか。

玉座の間を出た後、召し使いに促されるままに城を出たんだ。その時カブールはいなかった。


イサムも不思議に思う。


すると後ろから長髪の男が走ってくる。あれはカブールだ。


「ハァハァ…。…ッ全く貴族に走らせるんじゃあない。どうして先に行ってしまうんだ。」

肩で息をしながら不平を漏らす。


「魔法について君らは何も知らないんだろう。それで戦うのはあまりに無謀だ。」

彼らは頷く。剣と魔法の世界において、その半分を知らないのは危険すぎる。


「それじゃあ教えてくれるんですね!」

魔法使いのユーリは嬉々として尋ねる。


「そうだが、道の真ん中で話すのもなんだ。そこの酒場に行こう。」

まだ陽は高い。しかし、景気づけにと四人は同意する。


最初に来たのとは違う酒場だ。外からでも騒がしいのが分かる。


しかしカブールが入った途端、酒場の空気が凍る。


見回すと柄の悪い奴らばかりだ。何かやましいことでもあるのだろう。貴族である彼を見て怯えている。



まったく仕方がない。今日は厄日だ。

「おい聞け!ここは私の奢りだ!じゃんじゃん飲んでくれ!」

カブールが叫ぶ。酒飲み達はきょとんとしている。


もう一押しだな。

「店員!ビールを頼む!……よし、かんぱーい!」

ジョッキを思い切り持ち上げる。ちらほらと乾杯の声があがる。


「元気がないぞぉ!ほら、かんぱーい!!」

返事が大きくなる。彼らはツイていることに気づいたらしい。


「もういっちょぉッ!かんぱーい!!!」

かんぱーい!!!割れんばかりの返事が帰ってきた。酒飲みたちの表情は笑顔でいっぱいだ。


「ふぅ。これでいいかな。それじゃあここに座ろうか。」

思い思いに酒を飲み始めた彼らをよそに、カブールは腰を降ろす。


「どうしてこんな事をしたんですか?」

相変わらず敬語でイサムが尋ねる。


「ご機嫌取りさ。この酒場の空気を悪くしてしまったからね。あのまま違うところに行っていたら、私たちの印象が良くなくなる。」

治安維持のために彼も頑張っているようだ。


「おかげで今日は金を使いすぎた。ほんと厄日だよ。」

確かに、これだけ人数がいたら大変だろうな。

イサムは他人事のように考える。今着ている鎧は誰の金で買ったのか、忘れてしまったらしい。


「さてさて、本題に入ろうか。魔法についてだね。」

いよいよファンタジックになってきたぞ。イサムは、ついに魔法が使えるのだとワクワクしている。


「まず属性について。属性は五つある。いや、厳密には六つか。


火、水、雷、光、闇。これが五属性と呼ばれるものだ。この五つはそれぞれ相性があるんだ。


火は雷に強く、雷は水に強く、水は火に強い。光と闇はこの三つにはあまり関係せず、お互いに対して強いんだ。


でもそんなに気にしなくていいよ。強すぎる火は水に勝っちゃうし、弱すぎる雷は水に強いか弱いか以前の問題だ。結局は好みの問題さ。」


カブールは微笑みながら話す。

火と水と雷。でも純水は電気を通さないって聞いたことがあるけど。

イサムはふと疑問に思う。


「王から聞いたんだけど、君らの世界にも火や水はあるんだろう?」

彼は尋ねる。


「あるけれど、どうしてそんなこと王様が知っているの?」

ユーリは聞き返す。言われてみればおかしな話だ。彼ら以外にとって、もとの世界は完全な異世界のはずだ。


「ええと…君たちの世界のことは文献に載っているんだ。おとぎ話のようなものだけどね。王はこの手の類いが好きなんだ。


それでだ。君たちの世界の『それ』と、こちらの世界のとは性質が違うみたいなんだ。だから、慣れていって欲しい。」

カブールは答える。


「私たちの世界は、全てが魔力で出来ている。火とか水っていうのは、その魔力の種類のことなんだ。君たちの世界には魔法が無いんだろう?」

魔力。それがこの世界の単位である。


「少し話がそれてしまったね。五属性については理解してもらえたかな?


属性の最後の一つは、無属性。君たちの身体にある魔力を、そのまま利用するものだ。


これは魔法の中で最も基本的な属性魔法になる。日常生活から、攻撃魔法、回復魔法、補助魔法にも使える。


ユーリくんが私を真似てやった魔法があるだろう。あれも無属性だ。いきなり出来るとは、見事だったよ。」

カブールはユーリを見て笑う。彼女は嬉しそうだ。


「『魔力』は誰にでも、何にでも備わっている。その量はそれぞれによって違うけどね。それを利用するのが『魔法』って訳だ。


さてと、さっき言った収納魔法について教えよう。これも無属性魔法だよ。


例えばモリーくんの盾。それだけ大きいと背中に担ぐのも大変だろう。身体より大きいからな。


ちょっと手帳を出してくれ。」

そう言ってモリーに両手を差し出す。彼は素直に手帳と盾を渡す。


「…よしっ。よくこんなのを担いでたな。邪魔だったろうに。」

ぶつぶつと文句を言う。


「それじゃあやるよ。 《収納(トランスレイト)》!」

盾が光り、するすると小さくなって…消えた。


「うおっ!どこに行ったんだ!?」

モリーが戸惑う。


「ここさ。君の手帳の中だよ。」

カブールはページをめくり、指差す。


そこには、『正義の盾〜UMIQRO(ウミキュロ)モデル〜』と書いてあった。


「こんな風に、大体のものなら手帳の中に入れられるよ。そして、一度入れてしまったものは、もう他の人の手帳には入れられない。所有を放棄するか、使わずに時間が経つと解除されるけどね。


そして、取り出すときにはこう唱えるんだ。

《具現化(インバディ)》!」

手帳から光が漏れだし、みるみる内に盾を作り出した。


「こんな感じだな。慣れてきたら詠唱無しで大丈夫だけど、最初はちゃんと唱えた方が良い。


何にしろ、魔法はイメージが大事だ。確かに知識も大事だけど、とにかくイメージだ。


例えば空気砲(エアショット)なら、手の先から魔力を絞り出すように、強く、強くイメージするんだ。自分から出る魔力で敵がフッ飛ぶのを想像するんだ。


回復魔法も一緒だよ。味方が癒され、回復していく様子を思い浮かべるんだ。とにかく想像、イメージだ。詠唱はそのための補助に過ぎない。」


アツシとユーリは聞き込んでいる。魔法は二人の生命線になる。


「イサムくんとモリーくんも、ちゃんと聞きなよ。君たちも魔法は使わなくちゃならないんだ。


職業と属性について話そうか。


魔法使いは六属性すべて使えなくちゃならない。攻撃魔法のスペシャリストになる必要がある。


僧侶は光属性、無属性の二つが主だ。基本は補助や回復に徹するけれど、魔法使いの手助けも出来ればするといい。


騎士は無属性。とにかく自分を強化し、絶対に味方に攻撃を通しちゃいけない。


勇者は…よく分からないが、戦士と同じでいいかな。

そうすると、君も無属性が主だ。このパーティで、強力な物理攻撃が出来るのは君だけなんだ。周りを気にする必要はないが、少ないチャンスを必ずものにしなければならない。そのためにも、上手く魔法を使って相手を叩け。」


カブールは真面目な顔で説明する。命に関わる戦闘の話だ。全員の気が引き締まる。


「最後に、一人ずつ手帳を貸してもらっていいかな。」

素直に渡していく。


スッ、スッと何か本のようなものを手帳に入れていく。ついでにユーリの紙袋も入れていく。ようやく両手が空いてユーリはほっとする。


「さて、お返しするよ。……よし。

その中に入れたのは、職業毎の戦い方が書かれたもの、いわば教科書だ。


一番大事なのは実戦で経験を積むことだが、座学だって重要さ。

寝る前にでも読んでくれ。」

彼らはありがたく受けとる。




「よし!これで私からは以上だ。私はここの代金を払わなくちゃいけないから、もう少しここにいるけど、君たちはもう行くんだろう?」

カブールは尋ねる。


「はい。本当にお世話になりました。」

イサムは心からそう言う。彼には感謝しなければならない。


五人が立ち上がる。船出の時だ。


「それじゃあ、頑張って。」

カブールは一人一人と握手をガッチリと交わす。彼の手は冷たく、力強いものだった。


四人が酒場を出る。後ろ目にカブールが金を払っているのが見えた。



―――――――――――――――――――――――



国境に来た。兵士が多いのが、この先は危険だということを証明している。


「イサムさんたちだね。話はさっき聞いた。…この世界を頼んだぜ。」

門番の兵士が言う。背筋が伸びる。


ギィと門が開いた。一面草原が広がっている。ここからはモンスターがいるのだ。


一歩、踏み出す。一気に空気が変わる。

もう一度ギィと音がする。門が閉まったようだ。


「覚悟を決めるぞ。」

ボソリと呟く。




さあ。世界を救ってやろうじゃないか。

読んで頂きありがとうございます!

これにて第一章は終わりです。少し長くなってしまいすみません。

第二章より、更にファンタジックになります!是非次もよろしくお願いします!

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