十三(幕間)
まただ、と泉は呟いた。
あきらめ半分、呆れ半分、といった思いだった。あれから十年以上経っているのに、いまだに自分は彼らの夢を見ては打ちのめされる。いい加減にしてほしかった。
一瞬の慄きに次いで湧き上がる苛立ちは『彼ら』と『彼ら』から解放されない自分へと向けられる。
忘れた頃に不意に現れる悪夢であり、忌まわしい記憶だった。それは、泉が油断した隙を狙いすましたかのようにひょっこりと現れ、その存在をうるさく主張する。
ほらほら、どうしたの。私たちは元気にやっているよ。あんたはどうしたの? また汚いゴミ集めしているの? そうよね。あんたの家はゴミを回収して生活してるんでしょ。じゃあ協力してあげるね。私たちの廃棄物を回収させてあげる。なんで嫌そうな顔をするの。どうして逃げようとするの。ドロミズさん、遠慮しないで。さあ、どうぞ!
うるさい、と泉は叫んだ。幻聴だ。幻覚だ。わかっていても我慢がならなかった。
あいつらは生きている。社会人として活躍している者もいる。結婚した者や、穏やかな人並みの幸せを手にしている者もいる。後ろ指さされることもなく、それが当然の権利であるかのように。
十年以上も前のことなど忘れ去っているに違いない。そもそも覚えてすらいない者だっているだろう。
(何故)
でも自分は覚えている。忘れようとしても、忘れたつもりでも、こうして不意に過去の幻影に悩まされている。
(……何故)
こんなに苦しいのに。息もできなくなるくらいなのに。
(何故⁉︎)
自分は今でもずっと悩まされている。誰一人として報いを受けていない連中のせいで。
(まさか)
恐ろしい考えが浮かんだ。だが、否定することもできなかった。
(これからも、一生、このまま)
嫌だと思った。心底嫌だった。冗談ではなかった。何故自分だけがずっと辛酸を舐めなくてはならないのだ。頭を搔きむしりたくなるほどの悔しさの中で、泉は決意した。
(向き合わなければ)
いつまでも無力な『被害者』ではいられない。自分を脅かす敵には、挑まなければ。立ち向かわければ。『彼ら』を踏み越えなければ。いつまでたっても自分は自分の人生を歩めない。前に進めない。
(踏み越えなければ)
自分に言い聞かせるように、泉は何度も呟いた。




