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第4章ー13

 実際には、ベルリン攻略作戦の一環として、日米海兵隊を投入した「史上最大の上陸作戦」は、単なるペーパープランで行われる筈のない代物なのだが、土方勇中尉が頭の中で幻想してみる限りでも、夢の溢れる作戦なのは間違いなかった。

 戦艦や巡洋艦を大量に投入した艦砲射撃、米英の戦略爆撃機まで投入した絨毯爆撃が完了した後で、艦載機まで投入した大量の航空支援の下、日米海兵隊6個師団が上陸作戦を展開する。

 これだけの物量を駆使して行われる大作戦である。

 本当に夢があり過ぎると言えた。


 だが、実際には幻の作戦である。

 幾ら何でも急に1月余りの準備で6個師団を投入して、更に海空軍を協調させての大規模上陸作戦等、米国がバックについているとはいえ、連合国軍と言えど断行できる訳が無かった。

 実際に実行したら、事前の調整時間もろくにない以上、上陸部隊と海空軍の連携が上手く行かなくて失敗して当然の作戦になってしまうからだ。

 そのために実際に断行される作戦は、ある意味では平凡な作戦に表面上は見えるものになっていた。


 まず、北部では、ポーランド軍と米軍の主力をもって、独軍のエルベ河防衛線を崩壊させた後、米軍の一部と日本海兵隊、更にポーランド軍の一部をもって、ベルリンを目指すことになっていた。

 ベルリン陥落後は、オーデル河までさらに前進し、そこで一時的に戦線を構築することになっている。

 これは、ポーランド軍の将兵が、ワルシャワ攻略戦の際に独軍が行った数々の残虐行為に対する復讐心に駆られる余り、ベルリンで残虐行為に奔ることを日米やポーランド軍の上層部が懸念しているためでもあった。

 実際のベルリン攻防戦において、ポーランド軍が占める割合を低下させ、更にオーデル河までの前進を図ることで、ポーランド軍が残虐行為に奔る危険性を少しでも減らそうと、上層部は考えたのである。


 そして、中部でプラハを中心とするチェコスロヴァキア解放を目指すのが、英軍(及び蘭白軍)だった。

 第二次世界大戦直前に起こったズデーデン危機、その際にチェコスロヴァキアを英が救えなかった代わりに、今度はチェコスロヴァキア解放の為に英は尽力する。

 大義名分として、英国民やチェコスロヴァキアの国民に対してこれは大声で訴えやすいものだった。

 英陸軍上層部の大部分が、大いなる皮肉だと内心で呟きながらも、作戦を成功させようと考えた。


 南部、バイエルン地方からウィーン等の旧オーストリア解放を目指すのが、仏軍である。

 仏軍の本音を言えば、伊軍が本当に優秀ならば仏軍がこんな作戦を発動する必要は無かった。

 しかし、ケッセルリンク将軍が率いる独軍の巧みな遅滞戦闘の前に、グラツィアーニ将軍が率いる伊軍の前進は遅々として進まないという事態が生じている。

 更にバイエルン地方での抗戦に敗れた独南方軍集団の将兵の多くが、オーストリア方面に撤退しており、伊軍の進撃をより困難にするのが目に見えている。

 こういったことから考えると、仏軍がオーストリア方面に後退している独南方軍集団に対して更なる攻撃を加えて、オーストリア解放を目指さねばならないのは半ば必然であるとも言えた。


 土方中尉は想いを巡らさざるを得なかった。

 何だかんだ言いながらも、政治的及び軍事的な現実論からすれば、中欧解放作戦はある意味で収まる所に収まっているではないか。

 ベルリンには、我が日本海兵隊に加え、米軍とポーランド軍へと進撃することになる。

 連合国軍最高司令官であるアイゼンハワー将軍が米軍等を直卒して、ベルリンへと進撃して占領する。

 アイゼンハワー将軍や米軍の令名が世界に轟き、日本海兵隊もその一翼を担う。

 うん、本当に素晴らしい作戦ではないか。

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