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第4章ー9

「ド=ゴール将軍、日本の提案についてはどう考える」

「痛い所を衝かれましたな。確かにエルベ河を単純に渡河等する作戦では、独軍も抗戦しやすいでしょう。バルト海からの上陸作戦をちらつかせることで独軍の防衛線を広げて、連合国軍の攻勢をしやすくすべきだ、という主張は反論しにくいものです」

「更に我が国にはウィーン攻略という栄誉を与えるか」

「独の不当な圧力により併合を余儀なくされた墺を、我が仏が解放する、その証明として仏軍がウィーンへの進撃、攻略をするのを後押しすると言われたのに、ベルリン攻略にこだわっては、我が仏が連合国間の足並みを積極的に乱していると取られかねません」

「厄介だな」

 日本の遣欧総軍司令部が中央侵攻作戦に関する提案に関して動き出してから数日後に、仏陸軍の事実上の最高司令官であるジロー将軍と、ド=ゴール将軍はそんな会話を交わす羽目になっていた。


 ベルリン攻略については、米日波が主に担う。

 そして、プラハを始めとするチェコの解放については、英が主に担う。

 ウィーンを始めとする墺の解放については、仏(及び伊)が主に担う。

 まだまだ、ソ連という大国との戦争がある以上、各国は栄誉を分かち合い、共闘体制を確立すべきだ、その一案として、上記のように各国が主な地域を分割して、中欧の解放を目指すべきだ。

 日本は、そのような提案を各国にぶつけてきた。


 英仏等の幹部の軍人は唸らざるを得なかった。

 日本の主張は最もであり、更に裏の事情まで匂わせるものだったからである。

 裏の事情、それは米日の世論がそろそろこの第二次世界大戦に倦みつつあるという事情だった。


 米日は極論すれば、この世界大戦から容易に抜けることが出来る。

 米日は自国内に引きこもることで、この第二次世界大戦からなし崩しに抜けることが出来るのだ。

 米日の世論の一部からは、もう世界大戦から我が国は単独で抜けたい、いや、そうすべきである、そのような声が上がりつつあるというのが、欧州の連合諸国の政府や軍の上層部には伝わりつつある。


 だが、欧州諸国はそうこの世界大戦から抜けることはできない。

 何しろ、独ソの強大な陸軍と欧州諸国は対峙しているのだ。

 下手に米日に抜けられては、独ソの反攻により、英はともかくとして、仏白蘭等は独ソの軍事的占領下に置かれる可能性が未だに高い。

 そうしたことから考えると、米日が第二次世界大戦に関与し続けることは未だに欧州の連合諸国にとっては必要なことだった。

 そのことから考えると、米日の世論の歓心を高めることは、欧州の連合諸国政府、軍にとって何としても必要なことだと言えた。

 そして、独の首都ベルリン攻略という栄誉を米日に与えるというのは、米日の世論の歓心を高める絶好の材料といって良く、しかもそれが目の前にちらついているという状況なのだ。


「仕方がない。ウィーン攻略、墺解放という手柄も仏にはちらつかされているしな。それにワルシャワを独に占領されたという因縁もある以上、ポーランド軍がベルリン攻略の一翼を担うべきだ、と米日に言われては反論もしづらいな」

 ジロー将軍は、渋々言い出した。

「それでは、ナポレオン6世とアンリ6世を戴いて、ウィーンを我が仏陸軍は目指しますか」

「物騒極まりないことを言うな。仏第三共和政を転覆するつもりかね。第三帝政なり、王政復古なりを目指すと取られても仕方ないぞ」

「いや、お二方が共におられるので、思わずそんな気に」

 ド=ゴール将軍は、更に物騒なことを平然とジロー将軍に言った。


「勘弁してくれ。ともかく日本の提案に乗ることにする」

「そうするべきでしょうな」

 そう言ってド=ゴール将軍とジロー将軍は最終的に見解を一致させた。

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