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第4章ー4

「最高司令官ですか」

 太田少将は、そう言いながら想いを巡らせた。

 自分の把握している限りだが、欧州戦線においては、英仏米日がまず主要国と言ったところだが、波白蘭諾に加えて伊が最近になって加わった。

 これだけの国々の軍隊の最高司令官は、どの国の出身者が妥当だろうか。


「英仏はお互いに自国の将軍を推しあっている。というか、相手の国になるのはお断りと言った感じだな」

「それはまた」

 太田少将は、先の第一次世界大戦時も欧州に赴いた身である。

 英仏の長年にわたる対立の根深さを自分自身も良く知っているので、石原中将の言葉には、さもありなんと肯かざるを得なかった。


「米国は一歩引いている。実際問題として、米国から出すのならアイゼンハワー将軍が妥当なのだが、アイゼンハワー将軍は先の世界大戦で実戦経験がないから、先の世界大戦で実戦経験のない将軍を最高司令官にという話を米国はしにくい」

「確かにそうですな」

 この石原中将の言葉にも、太田少将は肯かざるを得なかった。


「かと言って、我が国は6個師団しか欧州に派兵していないし。ポーランド軍のレヴィンスキー将軍は、元独軍という傷があるからな。それに祖国の国土は占領されているという問題が加わる。新参の伊軍の将軍が最高司令官等、先の世界大戦やエチオピア戦争から言って、真っ平ごめんというのが各国の本音だ。しかし、それ以外の小国の将軍では、最高司令官としての重みが欠けるからな」

 石原中将の愚痴は止まらないが、現実を踏まえているだけにどうしようもない、というのが太田少将の頭の中にも染み渡ってくる。

「厄介ですな」

 太田少将もそう言うしかなく、結局、石原中将の愚痴の聞き役を果たした後に、太田少将は遣欧総軍司令部を退散するしかなかった。


 一方、愚痴るだけでは済まないのが、ブリュッセルに集っている面々である。

「少しでも早く中欧に侵攻したいのに、こんなことで時間を取られたくないのに」

 土方歳一大佐は、そうぼやきながら、各国の軍幹部の面々に接触して、誰を最高司令官にするのが一番無難なのか、感触を探っていた。

 その内に土方大佐には落としどころが見えてきた気がした。


「米国のアイゼンハワー将軍をやはり最高司令官にしましょう」

 土方大佐は、そう北白川宮成久王大将を口説いた。

「理由は」

「米国を抜けさせないため、というのはどうでしょうか」

 敢えて土方大佐は、そう言って心持ち声を潜めながら、自分の考えを説明した。


 英仏はお互いに相手の将軍を最高司令官にするのは、断固拒絶という態度を崩しそうにない。

 勿論、連合国軍の最高司令官問題を完全に先送りして、連合国軍が中欧へ侵攻するという選択がない訳ではないが、それは単なる問題の先送りに過ぎないし、最高司令官を決めようという機運が高まった時に一気に最高司令官を決めた方がいいだろう。


 そして、徐々に戦況が泥沼化している現在、米国の国民の一部には厭戦感情が出ているという話がある。

 その声がさらに広まり、米国が単独講和に奔らないとは言えない。

 だから、米国の将軍を最高司令官にすることで、米国が単独講和しづらい環境を作るのだ。

 それに米国から最高司令官を出せば、米国は最高司令官という立場上、積極的に物資等の援助を中小国や占領地に対して行ってくれるようになるのではないか。

 日本がそう陰から言い出して中小国を巻き込めば、英仏も同意するしかないだろうし、米国も最高司令官を受けざるを得ないだろう。


 土方大佐の考えを聞いた北白川宮大将は唸らざるを得なかった。

 確かに妙案だ。

「よし、その線で日本は動こう」

 北白川宮大将はそう決断し、日本軍の司令部の面々は各国の軍幹部の説得に取り掛かった。

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