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第3章ー29

「我々は何のためにこのような戦いをしたのだろうか」

「お互いに自らの信じるものを護るためですな」

 小畑敏四郎大将と樋口季一郎中将は、お互いに皮肉がきつすぎると思いながら、そんな会話を1941年の9月初めにかわす羽目になっていた。


 ソ連極東領(より正確に言えば、ネルチンスク条約で定められたかつての清国領)をほぼ制圧した日米満韓連合軍の将兵は、一部を除いて占領地の民生回復及び維持に奮闘する羽目になっていた。

 そんなものは放っておけ、ソ連の支配を受け入れていた住民の自己責任、自助努力に任せてしまえ、という暴論を唱える者も一部にいたが、

(誰が唱えたかは言わずもがなだろう。)


 日本政府、軍を中心とする大部分は、かつてのソ連極東領の住民の自助努力に任せていては、そこでやっとの想いで生き延びていた大量の住民を死なせるだけだ、と分かっていたので、ソ連極東領の住民に対して大量の物資提供を行っていた。


 とは言え、幾ら巨大な米国等の生産力がバックにあるとはいえ、住民への大量の物資提供はそれなりの負担を生じさせてしまう。

 また、従来のソ連の鉄道は標準軌より更に広い広軌で敷設されていた。

 幾ら自動車が大量にあるとはいえ、自動車輸送でソ連極東領の住民の民生を賄おうというのは、きつい話に他ならなかった。

 従って、ソ連の鉄道を標準軌に改軌することは必要不可欠な話で、更に。


「住民の民生のためには、アムール川の河口からハバロフスク、更にアムール川やウスリー川の水運をできる限り有効に活用せねばならないな」

 使えるものは何でも使わないと、住民の民生が大変なことになる。

 小畑大将自らまでがそう判断して、日本政府を始めとする関係各所に訴えざるを得なかった。

 そして、関係各所も懸命に動くことで、何とか冬が迫り、アムール川等のソ連極東領や満州の河川が凍結するまでに、何とか生き延びたソ連極東領の住民は、冬を生き延びて越せる目途が立ったのだ。


 その一方で、ソ連軍の抵抗は終わってはいなかった。

 アムール州や沿海州に展開していて、何とか日米満韓連合軍の攻囲網を突破等して、生き延びていたソ連極東軍の生き残りだが。

 シホテアリニ山脈や外興安嶺等に潜伏して拠点を築き、そこから日米満韓連合軍に対する遊撃戦を展開することによる懸命の抗戦を試みた。

 だが、それらは補給の欠乏と住民の非協力という現実の前に、1941年から1942年の冬をその大部分が越すことが出来ずに、凍死や餓死、又は日米満韓連合軍への投降という運命を辿ることになった。


 むしろ、ソ連軍の大攻勢が展開されたのは、既述した大興安嶺一帯に掛けてであった。

 イルクーツク、チタ方面からのソ連軍の攻勢はかなり激しいものであり、一時的とはいえ、満州里を放棄して大興安嶺の嶮を頼みとする防衛戦の選択を日米満韓連合軍に決断させる程だった。

(これは、日米満韓連合軍が、沿海州、アムール州の制圧を第一に置き、大興安嶺方面におけるソ連軍の攻勢への対処を下位においたためでもある。)


 だが、沿海州、アムール州が日米満韓連合軍に制圧された後、本格的に連合軍側の航空部隊を中心とする増援部隊が大興安嶺方面に駆けつけた。

 これを受けて、

「これまでの鬱憤を数十倍にして晴らせ」

 と怒号した(ソ連軍のチタ方面等からの攻勢に対処するために急遽編制された)日本第1機甲軍司令官の山下奉文中将の激励に応えるように、大興安嶺方面の日米満韓連合軍は大攻勢を開始する。


 幾ら個々の戦車のカタログデータでは優位にソ連軍があっても、航空優勢を失って更に量的劣勢にも陥ってはソ連軍の防御にも限界があった。

 そして、モンゴル民族主義者の蜂起まで引き起こされた。

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