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第3章ー28

 こうしたことから、ソ連軍による日本軍のハバロフスク攻囲網の背後を脅かし、また、沿海州諸都市の日本軍攻囲網を緩める作戦は、徐々に破綻をきたすようになった。

 こういった遊撃戦、ゲリラ戦を成功させるのに必要な条件である住民の支持が、ソ連軍には徐々に得られなくなっていくようになったからである。

 北樺太を制圧していた部隊(後備役兵を動員し、留守第7師団を改編した第77師団を主力とする)とも協力してアムール川流域のハバロフスクから河口までを日本軍が完全制圧した1941年7月末頃が、住民の支持の多くがソ連軍から離れた転機の頃となった。


 何故にアムール川流域を日本軍が制圧したことが、住民の支持をソ連軍に失わせたかというと、このことにより日本軍はアムール川を住民への物資提供ルートとしても使用することが可能になったことが陰にある。

 アムール川は、流域の住民にとって長年にわたる生活基盤である。

 従って、多くの住民が注目している対象だった。

 そこを日本軍が使用し、大量の物資を運び、更に住民にもその一部が提供される。

 その一方で。


 遊撃戦を展開してるソ連軍は、祖国のため、民主主義のため、というお題目を唱えるだけで、住民からは食料等を徴発していき、住民が食料等を自発的に提供しなかったりしたら、非国民だ、売国奴だ、と住民を非難して更に銃口を向けて、私刑を実行するのである。

 幾ら自国の軍隊と言えども、外国の軍隊が食糧不足に喘ぐ自分達に食料等を提供してくれるのに対して、余りな態度だ、と多くの住民が憤り、ソ連軍を見限るのも半ば当然と言わざるを得なかった。


 そして、日本軍は徐々に住民の態度が、反ソ連軍、親日本軍になりつつあることが分かるにつれ、更に住民に物資を提供するようになった。

 これを知ったソ連軍は、日本軍の物資を受け取った住民は反民主主義者である等のレッテル貼りをして、物資を受け取った住民を処刑することで、住民と日本軍の分断を図ったが、このことは住民のソ連軍に対する好意をますます失わせるだけであり、住民がソ連軍の秘密拠点を日本軍に内報することが増える事態にまで至った。


 こういった流れの果てに、ハバロフスク周辺に展開して遊撃戦を行うことで、日本軍を苦しめようというソ連軍の作戦は、逆にソ連軍自身を苦しめることになり、日本軍の勝利を容易にさせることになった。

 そして、飢餓に苦しむ中でソ連軍がハバロフスクを死守するというのにも限度があった。


 1941年8月半ば、こういった状況を見据えた末に行われた日本軍のハバロフスク強襲作戦は、RPGを市街地での戦闘に積極的に投入するというソ連軍の作戦により、予想外の戦車部隊の損耗を招きはしたものの、1週間余りの戦闘でハバロフスクを日本軍が制圧するという事態を招いた。

 更に、この前後に相次いで沿海州の主要都市も日本軍によって制圧されるという事態が起きた。

 また、こういったソ連軍に不利な形勢が生じては、住民が更にソ連軍を見限るのも半ば当然だった。


 1941年8月末、小畑敏四郎大将は、沿海州一帯が日米満韓連合軍によって完全に制圧されたことを宣言し、相前後してマッカーサー将軍もアムール州一帯が日米満韓連合軍によって完全に制圧されたことを宣言した。

 ここにソ連極東領を、日米満韓連合軍によって制圧するという作戦計画は終わりを完全に迎えることになったのである。


 とは言え、日米満韓連合軍にとっては課題は山積みだった。

 ソ連極東領の住民の少なくとも2割は死亡しており、生き残っている住民も飢餓等に苦しんでいる。

 このような状況では、住民の生活維持のために多大な物資を日米満韓は提供しない訳には行かなかった。

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