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第3章ー25

 アムール州方面に対する米陸軍の攻勢でも似たような状況が起きた。


「ブラゴベシチェンスクについては4個師団を投入して攻囲する。それ以外をまずは叩く」

 マッカーサー将軍はそのような基本的作戦を立てて、アムール州への米陸軍の侵攻作戦を実行した。

 アムール州にはブラゴベシチェンスク以外にも都市があるが、ブラゴベシチェンスク以外の都市は人口数万人も満たない小都市ばかりである。


 アムール州を防衛するためにソ連軍も20個師団近くを展開していたが、アムール州自体が広大であり、また、そういった事情からブラゴベシチェンスク以外の都市防衛に投入された兵力は、ブラゴベシチェンスクとシベリア鉄道をつなぐ要衝クイビシェフカ・ヴォストーチナヤ(現在のベロゴルスク)でさえ1個師団と言ったところで、予備部隊を除いても12個師団に達する米軍の攻勢の前に各個撃破されていく羽目になった。


 アムール州防衛に当たるソ連軍としては、ブラゴベシチェンスクに6個師団を集結させ、それを主力とする機動防御を基本的な作戦として立案していたらしい。

(アムール州制圧後に行われたソ連軍捕虜への聞き取り等による。)

 だが、実際には、沿海州方面よりは多少はマシだったらしいが、補給物資の欠乏がソ連軍が機動防御を実施する上では足を引っ張る羽目になった。

 

 ブラゴベシチェンスクで製造されたT-34戦車を駆使してソ連軍が機動防御を展開しようにも、そもそも燃料が欠乏していてはT-34戦車を動かすことが出来ない。

 更にそれに乗る戦車兵の訓練もままならない。

 ブラゴベシチェンスクに立てこもるソ連軍は、T-34戦車を主な頼みにして米軍の攻囲網を突破した後で、アムール州に侵攻してきた米軍を叩くという構想を実行したかったらしいが、実際には実行不可能な作戦だった。


 その一方で潤沢な物資を活かし、更に完全に自動車化されていた米軍は、アムール州を順調に制圧していくことができた。

 個々の激突時には、単純な兵力比でも3倍以上の差が基本的にあり、更に物資が欠乏しているとあっては幾らソ連軍が勇戦敢闘しようとも限度があった。


 とは言え、広大なアムール州を制圧し、個別に治安維持のための守備隊を主な小都市にはおいて、ということを行うとなると幾ら米軍と言えど、それなりに時間が掛かる。

 最終的にブラゴベシチェンスク以外のアムール州を、米軍がほぼ制圧するのには6月末まで掛かることになった。

 そして、米軍もソ連軍との戦闘により、それなりに損耗することになった。


 6月末までにブラゴベシチェンスク以外のアムール州をほぼ制圧した米軍にとって、最後の目標としたのは当然、ブラゴベシチェンスクだった。

 それまでは4個師団が看視して緩やかに包囲しているだけと表面上はいって良かったが。

 実際には、4個師団が包囲態勢に置いた時点以降は、同時期にウラジオストクが受けたのと同様の砲爆撃が、ブラゴベシチェンスクに対して浴びせられていた。


 ウラジオストクと同様と言って良い地獄絵図が生じた後、ブラゴベシチェンスクは終に米軍の約10個師団を投じた総攻撃を受け、8月初めに陥落するという事態になった。

 ここにアムール州全体は、米軍の手にほぼ落ちることになった。


 勿論、アムール州内で米軍の攻撃を免れたソ連兵を中心とするパルチザン活動が尚も続いていなかったわけではない。

 だが、主に物資の不足等もあり、更にソ連領の住民の間に広まっていた厭戦感情もあり、アムール州内でのパルチザン活動は、米軍の監視行動も相まって極めて低調なものに1941年8月以降は転落する。

 それはソ連極東領におけるソ連の支配体制の黄昏を、世界中に知らせる一端でもあった。

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