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第3章ー24

 一方、ウラジオストクでは韓国軍と米海兵隊が攻囲したために状況が違っていた。


「降伏勧告は拒絶すると正式にウラジオストク防衛軍司令官から回答がありました」

「やむを得ないな。ウラジオストク市街に対して爆撃と艦砲射撃を繰り返せ。併せてウラジオストク防衛軍司令官に投降勧告を繰り返すように」

「分かりました」

 ウラジオストクに対する攻囲作戦が始まる直前、米太平洋艦隊司令官であるキンメル提督は指揮下にある部隊に対してそのように命じていた。


 日本軍ならウラジオストクを攻囲するだけに止めて、兵糧攻めにするのだろうが、時間が惜しい。

 それにウラジオストク市民が死傷することについては、我々の行う投降勧告に応じて降伏しないソ連軍側に全面的に責めがある。

 そうキンメル提督は、ウラジオストク市民に対する無差別攻撃を正当化する論理を内心で唱えた。


 米海軍の空母部隊はウラジオストク市街に対する空襲を繰り返し、戦艦や巡洋艦は艦砲射撃を浴びせた。

 この動きにはすぐに韓国軍も加わり、無差別砲爆撃を市街地に浴びせた。

 1月もしない内にウラジオストクは更地と言っても過言ではない有様になった。


 この時、ウラジオストクに立てこもっていたソ連軍は、名目上は撤退してきた部隊を併せ、更に独立部隊を含めて6個師団近くに達していたが、従前からの補給不足や韓国軍や米海兵隊との戦闘の損耗により実質的な戦力は3個師団余りに低下していたため、とても米海兵隊と韓国軍の攻囲網を破ること等はできるものではなかった。

 それに仮にソ連軍の攻勢が成功して、米海兵隊と韓国軍の攻囲網が破れたとしても、ハバロフスクやイルクーツク方面の友軍と連携できるかというと絶望的な戦況に陥っていた。


 また、(シベリア出兵時に韓国軍が大規模な略奪等を行ったことから生じたという)恐怖心から韓国軍を怖れて、韓ソ国境方面から避難してきた地域の住民もウラジオストクに逃げ込んでおり、このこともウラジオストク市民の状況を悪化させることになった。

 このような状況の為に、ウラジオストクでは食糧事情に加えて極度に衛生状況が悪化した。

(本来の都市のインフラサービスを超える人口が集まり、更にそれが破壊されて行ったのだ。)


 衛生状況の悪化により、複数の疫病が発生し、ウラジオストク防衛軍の将兵や住民に襲い掛かった。

 このような状況では、普通なら主に水分を投与されて寝ていれば治る程度の伝染性胃腸炎でさえ命を奪う疫病と化してしまう。

 また、同様に少し寝ていれば治る程度の夏風邪でさえ気管支炎や肺炎まですぐに悪化する。

 何しろ衛生状況が悪化し、飢餓状態に住民があるのだ。

 住民の病気に対する抵抗力は、ほぼ無いといわれても仕方ない状況だった。


 このような状況にウラジオストクの攻囲が始まってから、2月も経たない内にウラジオストク防衛軍の将兵や住民の多くが陥ってしまったが、尚もウラジオストク防衛軍司令部は降伏を受け入れなかった。

(受け入れなかったのは、既述のように子弟が人質状態にあるためでもあった。)

 だが、このような状況に耐えかねた一部の者が、家族を犠牲にしても今の住民の命を助けるべきだ、という主張を唱えて指揮下にある部隊と共に反乱を起こし、韓国軍と米海兵隊を呼び込んだことを皮切りに、ようやくウラジオストクは7月末に陥落する。


 ウラジオストク制圧後に、大量の食糧、医療品を急いで運び込んでウラジオストクで未だに生き残っていた住民たちの救命に懸命に韓国軍と米海兵隊は当たったが、それでも。

 ウラジオストクに5月下旬に立てこもった時点で生きていたソ連軍の将兵や住民の内、過半数が餓死又は病死するという惨劇が引き起こされたのだ。

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