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第3章ー22

 5月半ば、第5軍はイマンを、第7軍はマンゾフカを、第3軍はウスリースクを攻囲しつつあった。

「日本軍の進撃はここまでは順調だな」

 小畑敏四郎大将は、樋口季一郎中将と語り合っていた。

「沿海州方面のソ連軍は食糧を始めとする様々な物資不足に喘いでいたようです。それもあってハンカ(興凱)湖南における戦車戦以外に大規模な戦闘を、ソ連軍は積極的に挑んでいません」

 樋口中将は、そのように戦況を分析して見せた。


「ウラジオストク方面はどうなっている」

 小畑大将の問いかけに、樋口中将は心持ち渋い口調で答えた。

「事前に分かっていたことですが、韓国軍と米海兵隊の協調が上手くいっていませんね」

「やはりそうか」

 小畑大将も分かっていたこととはいえ、(内心では)肩を落とさざるを得なかった。


 韓国軍の火力不足は相変わらずであり、それもあって韓国軍はウラジオストクへの前進に苦労していた。

 艦砲による韓国軍の支援もかなり真面目に検討されたのだが。

(なお、ウラジオストク近辺に日本海軍の戦艦侵入を防ぐために築かれたソ連軍の海岸要塞(砲台)は、冬季に行われた執拗な爆撃におり、多くが破壊済みであると日米満韓連合軍は分析しており、実際に戦後の調査でもソ連軍の海岸要塞(砲台)は当時、ほとんど生き残っていなかったようである。)


 米海軍は米海兵隊の支援に懸命であり、(欧州支援に大半の戦力を投じているというのもあったが)日本海軍は韓国軍から頭を下げて来るならば、という態度を崩さず、韓国軍は面子の問題で自分から日本海軍に頭を下げられずという状況から、韓国軍は苦戦を強いられた。


 一方、米海兵隊の方は、というと。

 米太平洋海兵隊総司令官のスミス提督の

「さっさとウラジオストクに進撃しろ。我々も欧州に行き、日本海兵隊に優る存在だと英仏に見せるのだ」

 という督励を受けていた。

 この時にウラジオストク攻略に向かっていた第1海兵師団所属のクレメンス中尉は後に回想した際に

「スミス提督の督励は、心理的にかなりきつかった。だが、その一方で大量の支援も得られた」

 と書くほどの代物だった。


 実際、ナホトカ近郊に上陸した米海兵隊1個師団は、溢れるほどの支援を受けていた。

 空母7隻から飛び立った大量の艦載機が航空支援任務を行った。

 また、戦艦8隻を基幹とする水上艦隊が地上支援任務を行った。

 更にそれを日本の基地が後方支援した。


 小畑大将の見るところ、米海兵隊1個師団は米海軍(と日本の基地という後方から)の大量支援により、韓国軍6個師団に相当する戦力を発揮する有様だった。

 現場のソ連軍にしてみればたまらないだろう、と小畑大将は想いを巡らせた。

 表面上の戦力だけ見れば韓国軍が主力だが、実際の戦力は米海兵隊が主力である。

 現場を知らないモスクワ等からすれば、何で米海兵隊に押し込まれているのだ、米海兵隊は1個師団、一方の韓国軍は4個師団であり、幾ら何でもおかしくないか、という疑念に包まれるだろう。


 ナホトカを鎧袖一触といってよい勢いで米第1海兵師団は制圧した後、そこを物資揚陸の拠点としてウラジオストクへと進軍している。

 今のままなら、米海兵師団だけでのウラジオストク攻略をスミス提督は発動するのではないか。

 それを阻止しようと、韓ソ国境周辺で韓国軍を食い止めていたソ連軍の一部が米海兵隊に対処するために急行している。

 これによって、ようやく韓国軍はウラジオストク攻略を目指して進軍しつつある。

 しかし、これによって。


「ウラジオストク攻略後に功名争いから、米海兵隊員と韓国陸軍の兵との間で取っ組み合いの大けんかが起こりそうだな」

 樋口中将にも言えないことながら、小畑大将は内心で想いを巡らせた。

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