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第3章ー20

 そして、第二次世界大戦後(それ以前の中国内戦介入以来、少しずつ進められていたという下地があったとはいえ)、急速に日本空軍の人員拡大は図られたが、まずは(空を飛ぶ)操縦士の確保が最優先という現実があった。

 操縦士を大量に育成し、それによって(極論を言えばだが)機体より操縦士の方が多い状態にならねば、地上部隊支援のための前線航空管制部隊の編制等はできるものではなかった。


 更に言うなら、前線航空管制を行うに際しては、それなりの資材(通信機器や輸送機器)も揃えなければならないのは当然の話だった。

 日本のみでは量のみならず質の問題もあったことから全てを賄いきれず、米英の協力も仰ぐことで、ようやく1941年に入る頃に日本陸空軍は前線航空管制部隊の資材を整えることが出来たし、更にそのための人員を整えることができた。


 そして、このソ連極東領への侵攻作戦は、孜々営々と建設されてきた日本陸空軍の前線航空管制部隊による新たな地上支援の初陣といえるものでもあった。


 西住小次郎大尉の内心を忖度することなく、前線航空管制部隊の一員に転属になった黒江保彦空軍大尉は航空管制に当たっていた。

 黒江大尉の内心としては忸怩たるものが無きにしも非ずだった。

 自分の本音としては戦闘機の操縦士として、今すぐにでも操縦桿を握りたかった。

 だが、この初陣で大戦果を挙げねば、前線航空管制部隊の鼎の軽重が問われる事態なのが自分でも分かってはいた。

 だから、黒江大尉は今の任務に精励していた。


「八王子から侵入し、千葉へ抜けろ。それが今現在の現地の風向き等から考えても一番やりやすい筈だ」

「了解しました」

 黒江大尉の指示に99式襲撃機の搭乗員はすぐに従った。

 ちなみに攻撃目標が東京であるとして、今回は前線航空管制部隊の指示が行われている。

 いいのか、と黒江大尉自身も考えてしまったが、全ての搭乗員にとってすぐに分かるという点が優先されて、このような決定がなされたようだ。


 そして、対空擬装が日本軍によって看破され、自らが空襲の目標となることが分かったソ連軍戦車部隊は苦渋の決断をした。

 日本軍に急速に接近しての近接戦闘に持ち込むことで、日本軍の空襲を避けることにしたのだ。

 ソ連空軍がまだ健在だったら、ソ連空軍の支援を当てにするという事がソ連軍戦車部隊には出来たが、今の1941年5月の東部満洲から沿海州方面における空の戦況においては、そんなものはとても期待できないというのが現実だった。


 とは言え、ソ連軍戦車部隊の移動速度より、99式襲撃機の移動速度の方が遥かに速い。

 黒江大尉自身は満足できるものではとても無かったが、99式襲撃機の集団はソ連軍戦車部隊に痛撃を与えることに成功する。

 だが、それはソ連軍戦車部隊を手負いの猛獣と化させたようだった。

 能う限りの高速での日本軍への突撃を、99式襲撃機の空襲から生き延びたソ連軍戦車部隊は図った。


 西住大尉の見るところ、ソ連軍戦車部隊の2割か、3割は空襲で損害を受けたようだった。

 だが、ソ連軍戦車部隊は退くことなくさらに前進してくる。

「弾種は徹甲、主砲の威力不足は発射速度で補え、それから敵には自らの正面を向け、自らは敵の側面又は後面を狙うという基本を忘れるな」

 西住大尉は、部下にそう指示を下してソ連軍戦車部隊を迎え撃った。


 西住大尉の見る限り、ソ連軍戦車部隊に対して日本軍戦車部隊は互角以上に戦うことに成功した。

(この時には型式名は分からず、単にソ連軍新型戦車だったが)さすがにT-34戦車に、一式中戦車は苦戦を強いられてはいる。

 だが、百式重戦車の後期型なら互角以上に戦うことができ、それが一式中戦車部隊を鼓舞していた。

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