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第3章ー17

 このような状況の中で、日米満韓連合軍のソ連極東領への侵攻作戦は、1941年5月初めに発動された。

 奇襲も相まって、日本軍の中で一番に快進撃を最初に見せたのは、第五軍だった。


「日本軍にとって、湿地帯は最早、障害物とは言えないのだ」

 第五軍司令官の波田重一中将は、部下達を鼓舞するためもあって獅子吼していた。

 鈴木重工や三菱重工が開発、量産化した湿地車や湿地板敷設車が威力を発揮し、湿地帯の通過を容易にさせていた。


 勿論、実際には湿地帯が障害物になっていない訳ではなく、湿地板を幾ら敷設しようとも戦車が湿地帯を通過するのはとても無理だったし、その湿地車等をフルに活用しても第五軍全体が湿地帯を順調に通過できたとは言えず、ウスリー河の渡河の際には、別途に渡河機材が必要という感じで日本軍の進撃の障害になってはいる。


 だが、湿地車が牽引するソリにより、兵員や牽引式の野砲が湿地帯の上を進むことが出来ている。

 また、湿地板敷設車が敷設した湿地板の上を移動することでも、兵員や牽引式の野砲の移動が同様に可能になっている。

 それによって、2個師団の兵員が半ば奇襲的にソ連領になだれ込むことが可能になっていた。


 ソ連軍にしても、湿地帯を通過可能な工兵資材を日本軍が開発しているのではないか程度のことは予測していたらしいが、大量に量産されてこの戦場に投入されることまでは想定していなかった。

 その奇襲効果も相まって、開戦から3日を経ずしてイマン市を第五軍は攻囲すると共にシベリア鉄道を完全に切断することに成功したのである。


 第七軍の進撃もそれなりに順調だった。

 国境線沿いに重厚な陣地帯をソ連軍は築いていたが、開戦前から繰り返された執拗な砲爆撃により多大な損害を被るとともに、物資不足から陣地帯の補修もままならないという現実があった。

 機甲師団を先頭とする第七軍の進撃により、ボロボロになったソ連軍の防衛線は崩壊し、マンゾフカを第七軍は順調に目指すことを始めた。


 第三軍の攻撃も奇襲効果を伴うものだった。

 山岳師団を活用して通常の歩兵師団では通れないと想定する場所を通過しての奇襲攻撃に加え、第五軍と同様の秘密兵器を活用して効果を挙げていた。


「ぜい沢な話だな」

 第三軍司令官の河辺正三中将はその話を昨年末に初めて聞いた時には絶句した。

 日本陸軍の技術本部が、旧式化した八九式中戦車を改造して森林地帯通過のための伐開機と、それに随伴する伐掃機を試作して実用化していたのである。

 退蔵している旧式戦車を再度、役立てる一策として試作等が行われていた。

 とは言え、余り使い道がないことから試作で終わる筈だったのだが。


「面白そうな機械じゃないか」

 という永田鉄山参謀総長の鶴の一声で、数十両が改造されて第三軍に配備された。

 この伐開機等を駆使してソ連軍の陣地の間隙を突くことで、東寧からウスリースクを第三軍は順調に目指すことができつつあった。

 そして、現在は。

「やはり陸軍の機械化はこうではなくてはいかん」

 河辺中将は目を細めながら伐開機等の活躍を半ば夢見る有様になっていた。


 こういった日本軍の急進撃によって生じた状況の急変に、極東ソ連軍は対処しきれたとはとても言い難い有様だった。

 極東ソ連軍としては、日米満韓連合軍の反攻によってほぼかつての中ソ国境線まで昨年の秋に戦線が押し返されてしまっていたとはいえ、その線には湿地帯や山林地帯、それに河川等の進軍を阻む地形の障害に事欠かないという現実があることから、実際に日本軍の進軍が始まっても後方からの部隊移動が間に合い、進撃を容易に阻止できるという楽観論が広まっていたらしい。

 だが、実際には日本軍は急進撃を果たせたのだ。

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