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第3章ー14

 小畑敏四郎大将がこの会議で示した作戦の基本方針案は、活発な議論の末に基本的に会議で承認された。

 沿海州は日本軍が主力、アムール州は米軍が主力というのは、これまで日米両軍が担当していた地域からも相当であり、お互いに異論のない所だったのだった。

 そして、韓国軍にしても米海兵隊の支援が具体的に得られ、ウラジオストクという軍港都市を確保できる以上は文句をつけようがなかった。

 また、中国(満州国)軍にしても、蒋介石自らが自国軍の実情を熟知しており、ソ連極東領侵攻作戦において、自国軍が先鋒を務められないのはやむを得ないことと認識していた。


(もっとも、蒋介石はともかくとしてその周囲の一部は、この(第二次)世界大戦後にネルチンスク条約当時の国境線を中国は回復できると夢見ていたようである。

 アムール州や沿海州の大部分は、確かにネルチンスク条約に基づけば清の領土であり、そのことから考えれば本来は中国領であると主張できるからである。

 日米に血を流してもらうことで、自らの血を流さずに自国領を回復できる好機と彼らは考えていた。)


 そして、1941年5月の攻勢開始のために米国からは大量の兵員と物資が届いており、それを活用しての攻撃準備を各国は整えた。


 1941年4月末のある日。

「第五軍がイマンを目指す準備は整いました。湿地帯を抜けることは可能です」

「ソ連軍に対して奇襲効果を発揮することが出来そうだな」

「はい」

 第五軍司令官である波田重一中将は、小畑大将に報告していた。

 イマン近くのウスリー河の周囲は広大な湿地帯を形成している。

 虎頭近辺は乾いており、重車両を通すことも可能だが、それ以外は湿地帯が日本軍の進軍を阻む。

 他にも北満州や中国本土等にも湿地帯はあり、そういった土地への対処を対ソ戦を考慮せねばならなかった日本陸軍は考える必要があった。


 第二次世界大戦への緊張が高まり、中国内戦へ本格介入した1938年頃、そういった湿地帯を少しでも容易に通行できるような車両はできないか、と鈴木重工や三菱重工に陸軍が研究を下命していたところ、鈴木重工や三菱重工は、湿地車や湿地板敷設車を開発してきた。

(それ以前から豪雪の際に雪上を進むことができる車両(雪上車)を開発できないか、ということを両社共に検討しており、その研究を転用して湿地車や湿地板敷設車は開発された)

 第二次世界大戦が勃発して対ソ戦が本格化する中、鈴木重工や三菱重工は陸軍から湿地車や湿地板敷設車の量産を命ぜられ、第五軍はそれを装備して対ソ戦に挑むことになったのである。


「第七軍の準備も順調です。ハンカ湖からマンゾフカを急襲することさえ可能でしょう」

 第七軍司令官である関亀治中将が言った。

 第七軍には日本軍にとって虎の子の5個機甲師団の内2個機甲師団が預けられている。

 鼻息が荒くなるのも当然だった。


「第三軍も東寧からウスリースクを目指す準備を整えています。山岳師団である第7師団も活用して、進撃可能な路を検討しており、ソ連軍の不意を衝くことも可能と考えています」

 第三軍司令官である河辺正三中将が小畑大将に言う。


「第八軍としては、ソ連軍によるハバロフスク方面から満州方面への攻撃を警戒、防御任務については懸念することなく我が第八軍に任されたい、と申し上げます」

 第八軍司令官である喜多誠一中将も小畑大将に言った。


 小畑大将は考えを巡らせた。

 満州東部正面に集っている日本の四個軍は、完全にソ連極東領侵攻作戦発動の準備を整えている。

 後はソ連極東領侵攻作戦を発動するだけだな。

 問題は他の国の部隊だ。

 米軍はアムール州への侵攻作戦に成功するだろうか。

 韓国軍と米海兵隊は協調できるだろうか。

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