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第3章ー3

 ソ連極東領がそのような状況に陥っているために、自然と日本本土へのソ連空軍による戦略爆撃は終息することになった。

 このために日本のある戦闘機開発がとばっちりを受けた。


 14試重戦闘機、後の二式戦闘爆撃機「雷電」である。

 ソ連空軍による日本本土空襲の脅威がほぼ絶えた中では、第二次世界大戦遂行には対爆撃機迎撃を主任務とする重戦闘機開発よりも他の機種を開発した方が予算上効率的である、という声が日本空軍内で高まったために増加試作段階に入り出した段階にも関わらず、開発中止寸前という事態が引き起こされた。

 だが、ソ連本土への本格的な侵攻に際して、地上支援任務を積極的に行うことが可能な戦闘機が必要という声が日本空軍内に生じたことから、14試重戦闘機はそれ用に転用されることになり、第二次世界大戦時における最良の戦闘爆撃機の一つとされる二式戦闘爆撃機「雷電」の母体になったのである。


 さて、当時、日米の戦略爆撃はソ連極東領のみに向かっている訳ではなかった。

 共産中国が抑えている領域にも日米による戦略爆撃は加えられた。

 勿論、当時の日米の重爆撃機の航続距離の問題から、中国の完全な奥地である四川省等には戦略爆撃が加えられることは無かったが、陝西省、湖北省、湖南省等に対しては徹底的な爆撃が加えられた。

 言うまでもなく共産中国政府の無条件降伏を促すためである。

 だが。


「我々は不当な侵略には断固として屈しない。我々が勝利を収めるその日まで、断固として戦い抜く。漢奸の蒋介石が率いる偽の中国国民党によって樹立された日米の傀儡政権が正統な中国政府だとは、中華民族は生きている限りは誰一人として認めないだろう」

 共産中国政府はそのような主張、宣伝を繰り返すばかりで、日米両国による蒋介石率いる中国(満州国)政府への投降、合流を断固として拒否していた。


(もっとも、共産中国政府にしても降伏できない事情があった。

 蒋介石は、1927年の南京事件の後にかつての中国国民党右派に対して、中国共産党が加えた粛清行為(家族まで含めた拷問後の虐殺行為等)を断じて許すつもりが無かった。

 そして、蒋介石を支持する面々からなる中国(満州国)政府にも同様な考えを持つ者が揃っていた。


 そのために北京や南京等が、中国内戦勃発後に日本軍等によって制圧された後は、内戦勃発前に北京や南京等を治めていた共産党幹部は家族も含めて片端から報復として、蒋介石率いる中国(満州国)政府によって国家反逆罪等を理由にして形ばかりの刑事裁判の後で死刑等に処せられていたのである。

 日米両国政府は、そのようなことは戦争を泥沼化させるものであるとして止めるように勧告はしたが、蒋介石らは日米両国政府の勧告は内政干渉であると主張して突っぱねた。

 実際、蒋介石の主張の方が筋が通っているので(一応、刑事裁判も行われてはいる)、日米両国政府としても勧告以上のことはできなかった。


 そして、このことを知っている共産中国政府を構成している中国共産党員にしてみれば、日米両国が主張している蒋介石率いる中国(満州国)政府への投降、合流は自分達の死刑執行書に進んで署名をするようなもので、断じて受け入れられない講和条件だった。


 かと言って、共産中国が主張する講和条件は、最低でも蒋介石政権を日米両国が否認して、中国全土を共産中国領として認め、中国国内の日米の利権を無償でこちらに渡せ、というものであり、日米両国政府がとても呑める講和条件ではなかったのである)


 このために共産中国が統治している土地は荒廃していく一方だったが、日米両国政府等には中国領内での戦争の終わりはとても見通せない状況に陥っていたのである。

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