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第2章ー31

 だが、このモーデル将軍が打ったとされる電文は、連合国側に立つ史家からは疑問が呈される代物である。

 まず第一に、第二次世界大戦終結から70年以上が経ち、この当時の独軍が打った電文で、連合国側が傍受して解読に成功した電文のほとんどが公開されているのに、この電文は連合国側からは未だに公開されていないままなのだ。

 そして、第二にベルリン陥落後にベルリンに遺されていた独軍の公文書は全て連合国側が差し押さえたのだが、その中にもその電文が記載された独軍の公文書は無かった。


 こういったこと等から、この電文自体がゲッペルス以下の独宣伝省が作った偽電文ではないか、という説が、連合国側に立つ史家から呈されるのである。

 だが、これに対しては次のような独側に立つ史家からの反論がある。


 まず第一に、いかに連合国側といえど全ての独軍が打った電文を傍受して解読できたわけではない、という主張である。

 第二に、ベルリンはかなり後で後述するが、文字通り連合軍と独軍によって完全な廃墟と言ってよい状態になる有様になったのであり、独軍の公文書にしても2割も連合軍は確保できなかったという現実がある。

 こうしたことから、モーデル将軍が電文を打たなかったとは言えない、と独軍側の史家はいうのだ。


 だが、この電文の効果は、結果的には独国内においては絶大なものがあった。

 特に未だに独側に確保されていた地域においては独国民の間に懸命の抗戦の想いを高めてしまった。

 そして、その国民の想いを受けた独軍の将兵達も、また。

 第二次世界大戦は凄惨の一途をたどるばかりとなるのである。


 そのようなことがあった一方で、連合軍のエルベ河以西の制圧作戦は、それなりに順調に進捗していた。

 北ドイツでは、ルール工業地帯を巡る凄惨な死闘が行われる一方で、英軍を中心とする連合軍は着実に北ドイツ平原を進軍して、3月一杯を掛けて徐々に制圧していった。

 一部の批判者からは、平押しで芸の無い戦術だと英軍の戦術は酷評されることがあるが、裏返せば詭道に頼る余りの失敗もない戦術ということもできた。


 レープ将軍率いる独北方軍集団は英軍を主力とする連合軍の攻勢に、懸命に抗戦するものの、じりじりと損耗していき、最後には破断界に達して防衛線が崩れということが繰り返されていき。

 4月半ばには、終にハンブルクが英軍の手に完全に落ち、エルベ河以西の北ドイツ平原にある独側の拠点都市は失われることになった。


 それと対照的な展開を示したのが、南ドイツの攻防戦だった。

 ド=ゴール将軍率いる仏第1機甲軍は、ブレンハイムで大勝利を収めて、3月中にはバイエルン地方一帯を制圧できると豪語したが、南方軍集団を率いるルントシュテット将軍は、グデーリアン将軍率いる第2装甲軍の増援を受け、仏軍に対して、巧みな遅滞、機動防御を展開した。


 まず、シュヴァルツヴァルト方面の仏軍の攻勢は、陣地帯を駆使した独軍により、足止めを受けた。

 そして、ある意味では仏第1機甲軍が深入りしていることに気づいた南方軍集団は、仏第1機甲軍との正面対決を避けて後方や側面に攻撃を集中した。

(もっとも、これは皮肉なことに、ブレンハイムの大敗に意気消沈したヒトラー総統が、南方軍集団が仏軍に対して正面から戦わないことに非難等を行わなかったことも一因だった。

 このためにルントシュテット将軍以下の独南方軍集団は、思う通りに軍を機動させることができ、仏軍を苦しめることに成功したのである。)


 だが、そうは言っても既に独の国力は仏に対して劣勢に陥りつつあった。

「今や相撃ちは、仏軍の大勝利なのだ」

 ド=ゴール将軍はそう喝破し、実際に4月末に南ドイツは仏軍の手に落ちた。

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