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第2章ー30

 2月も半ば近くになる頃には、ルール工業地帯へと英軍を主力とする連合軍は、西方から北方、更に東方からと半包囲態勢を整えつつあった。

 独軍北方軍集団に対する攻勢を行っている英軍を主力とする連合軍としては、本来からすれば東方よりも南方を包囲して、ルール工業地帯を固守しようとする独軍や国民突撃隊を、東方へと後退できるように動き、それにより損害をできる限り減らして、ルール工業地帯を確保したかったらしい。


 だが、モーデル将軍率いる第18軍によってルール工業地帯の南方での攻勢は上手く行かず、皮肉なことに南方よりも東方からルール工業地帯が攻囲される有様になりつつあった。

 こうした状況下、ルール工業地帯防衛のために積極的に国民突撃隊は最前線に投入される羽目になった。

 だが、物資が欠乏する中で国民突撃隊には軍服、制服どころか、敵味方識別のための腕章すら事欠くという現実があった。

 だが、愛国心に燃える国民突撃隊員達は腕章が無くとも、私服のままで敢然と英軍を主力とする連合軍の兵士に対し、銃弾を放ち、また、白兵戦を挑んだ。


(というのが、主に連合軍側に立つ主張である。

 これに対し、主に国民突撃隊側に立つ主張に言わせれば、ヒトラー総統命令により国民突撃隊は私服のままでも戦闘投入を余儀なくされていたのであり、連合軍側はそれに配慮すべきだったという主張になる。)


 連合軍の兵士としては、困惑しながらの戦闘をルール工業地帯において強いられる羽目になった。

 連合軍の兵士としてみれば、独軍と国民突撃隊は肩を並べて混在して、自分達の攻撃を迎え撃つのだ。

 こんな状況の中で、市民保護を考えつつ、戦闘が出来るものだろうか?


 ゲッペルス以下の独宣伝省は、ルール工業地帯における国民突撃隊の抵抗を礼賛し、連合軍の兵士の悪逆非道を攻撃する報道を、連日にわたって行った。

 嘘も百回言えば本当になるという。

 そして、実際に連合軍の従軍記者が現地に入ってみれば、独の一般市民が連合軍によって砲爆撃を受け、銃撃されるというのが日常という現実があるのだ。


 こうした状況を受けて、英仏米日等の連合国政府は、ルール工業地帯を巡る攻防戦において、独の一般市民が犠牲になっているのは、独政府が国民突撃隊に対して国際法順守をきちんとさせていないのが悪い、という宣伝、反論を行った。

 だが、この宣伝、反論は、(主に米国を中心とする)連合国の一部の国民から、不当な外国からの侵略が為された場合において、国民が自発的に武装して自国の軍隊と共に抵抗しようというのは許されないのか、という反発を招くことにもなり、第二次世界大戦後の長きにわたり、議論が引きこされることにもなった。

(21世紀になった今でもこの議論は続いている。)


 そして、ルール工業地帯は、英軍を主力とする連合軍の容赦のない攻撃に晒されることになった。

 更に第18軍だけでは連合軍の攻勢に対処しきれないと考えた独参謀本部は、ホト将軍率いる第3装甲軍をルール工業地帯防衛の任務に投入することにもなった。

 ルール工業地帯にある建物一つ一つを奪い合い、更には工場等が容赦なく破壊されて行き、本来の独軍の兵士に加えて国民突撃隊の隊員までもが戦死していくというこの戦闘は、最終的には。


「祖国ドイツを護る為に国民突撃隊隊員はよく戦いました。その一方、女性や子どもさえも容赦なく連合軍の兵士は残虐に殺しています。どうかこの真実を後世の独国民に子々孫々まで伝えて下さい」

 3月末になり、モーデル将軍がこの訣別の電文をベルリンに対して打った後で自決して、独第18軍の生き残りの将兵等が連合軍への投降を余儀なくされることによって終結することになる。

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